医学ランキング
鈴村7-1

鈴村水鳥さん(写真右)と藤本蓮風さん(同左)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。小児科医の鈴村水鳥さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談の7回目です。小児科でも鍼灸の力を証明する例が示されてきましたが、さまざまな「関門」もあるようです。もちろん東洋・西洋どちらの医学が優れているというわけではありませんが、両方がうまく利用されるのは患者にとって悪いことではないのは確実のようです。では何が「関門」になっているのでしょうか…。前回に続いて今回も「産経関西」編集担当が僭越ながら質問をしたり意見を述べさせていただいたりしています。(「産経関西」編集担当)

鈴村7-2
鈴村7-3
鈴村7-4

 蓮風 鍼灸を含めて東洋医学が認められてきたら、ケースによって、どんな医療や措置が適切なのかその仕分ける案内人がいりますよね? この患者さんには西洋医学よりも東洋医学の方が良いとか、いや、やっぱり西洋医学の方が良いんじゃないかという、そういうコンサルタントみたいな人がおってくれるとありがたいですね。
   

 編集担当 ただ、どうもそのように“仕分け”ができる総合医のような存在について医師会は歓迎していないようです。現在の教育システムの中で専門医として育成された町の開業医さんがそうなってくるとちょっと困るのかもしれません…。「国民皆保険」の是非の問題にもつながってきますが、現実として海外の医療の現状と日本の現状が解離してきているな、という印象はあります。

 蓮風 そうですね。この間もドイツから来た人おったけど、向こうは鍼灸がかなり普及してるみたいですね。

 編集担当 やっぱり、欧米っていうのは医療は高コストのインフラなので、みんなで効率的に分けていかなくちゃいけないっていう考えがあるみたいですね。だから、薬も高いので日本ほど投与されないそうです。

 鈴村 (日本は薬の投与が)多いですね。

 編集担当 安いからっていうのもあるし、患者さんも薬を欲しがるんでしょうね。

 蓮風 鍼灸・湯液(漢方薬)を含めて学んでるドクターの中から水先案内人みたいな方が出てこられると嬉しいですね。そういえば最近、医事評論家みたいな方をあまり見ませんな。

 編集担当 そうですね。

 蓮風 昔は医事評論家いうたら、かなり社会で評価されたけど、そういう医事評論家がしっかりした勉強をして、患者さんに対する適切な助言を与えるっちゅうのは、いいことやと思いますね。

 編集担当 そういうこと仰ってる人はいるんでしょうけど、投薬にしても法的に問題がなければ抑制しにくい実情があるので、「患者のため」と言われればメディアにとっても指摘に至るハードルは高い気はします。薬を供給する側と、投与される側が持っている情報量が非対称ですし、健康や治療のためと言われて効果を示されると、軽々に反論もしにくいですね。ただ薬が過剰なのは間違いないと思います。

 蓮風 ああ、なるほどね。
鈴村7-5

 編集担当 蓮風先生に教えていただきたいんですけれども、子供さんを診る場合っていうのは、子供用の診察っていうのがあるのか、それとも大人と子供っていうのは明確に境があるもんじゃないから、単なる身体の個性として子供に接するんですか?
  

 蓮風 私はね、子供を診る場合、特に5歳以下の子供を診る場合は、子供以上に母親を診てます。幼児以下の場合、ものすごい母親の影響を受けますね。だから母親の嗜好品から考え方から全部うつってますわ。だから子供はもちろん治さないかんけど、お母さん治したほうが早い場合がたくさんあります。

 編集担当 この話の中でお父さんの存在があんまり出てきませんけども、お母さんを治すためにお父さんの協力っていうのもやっぱり必要になってくるわけですよね。

 蓮風 どこまで人間理解するかという非常に大きな問題に関わってきますね。当然、母親と子供は大きなつながりを持ってるけれど、父親との関係もあるし、父親との関係は社会とのつながりによって……。会社の中でいじめられたお父さんはいじけてくるに決まってる。それを家に持って帰ったら、必ず影響するに決まってる。それは本当にねぇ、どこまで理解するかっちゅうのは、なかなか難しいことあるけども、できるだけその子供を巡っての人々のつながりとか相当意識はしますね。

 編集担当 その話の流れの中で、少子化で一人のお母さんが育てる子供の数が減って、子供との関係が密になってきてますし、社会の状況も昔に比べたらかなり、変化してます。鈴村先生が教えを受けたドクター、教授なんかが経験した子供と、現在の子供ってやっぱり違ってきていて、先生も実際に現場で子供を診て「ちょっとこれは教科書にはないな」っていうことも増えてきてるような気もするんです。家族関係も含めて。やっぱりそういうようなことって実際にありますか?

鈴村7-6

子供たちが鈴村さんに贈った手紙や手作り人形

 鈴村 色々なことが子供に影響していると思います。医療を行う地域によっても変わってくると思います。たとえば、田舎と都会ではやはり特徴も少しずつ異なると思います。私が勤めてきた病院は都心にある病院で、働きながら子育てをされてるお母さまが多い、核家族が多いという点も特徴だと思います。その生活背景が子供に大きく関わります。

 病気については、少し前に書かれてる教科書と最新の教科書では少しずつ病気の捉え方や治療法も異なりますし、最近は新しい病気の概念がどんどん出てきています。そういうのも時代の流れというか、昔はこんな病気なかった、と言ったら変な話ですけど、発症する人が少なかったんじゃないかと思いますが、種類の異なる病気も増加しているのではないでしょうか。

 だから蓮風先生が50年も臨床をされていて、多分いらっしゃっている患者さんのタイプとか質とか病気の種類っていうのは異なってきていると思うのですが、それを、どう時代を捉えて、常に新しい治療を模索されているかということを勉強したいと思います。<続く>