理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

オフィス街の韋駄天 アオスジアゲハ

Mです。

前回、トンボがめっきり少なくなったと、嘆き節を記した。

東京のオフィス街ということで言えば、所々にある公園くらいでは、なかなか虫には出会えない。トンボもそうだが、チョウチョもまた滅多に出会えない。

大規模な公園だと、完全に管理された芝生だけでなくいろいろな野草も生えているところがあるから、そういうところだとウスバキトンボとシオカラトンボ程度なら出会えるし、この季節なら例外なく蝉の大合唱には出会える。

ところが、花壇に花は十分にあるし、草地にシロツメクサなどがたくさん咲いていても、チョウには滅多に出会えない。これは、チョウの場合、それぞれの種毎に幼虫時代の食草がハッキリとしているため、食草がない場所では発生していないから、仕方のないこと。

もちろん、東京であっても、郊外で野菜畑のあるところに行けば、アブラナ科の野菜を食草にするモンシロチョウやモンキチョウに出会えるし、河原を歩いていれば、土手に生えているイネ科植物を食草にするセセリチョウの仲間たちに 出会うことが出来る。ただ、チョウたちは普通あまり広い範囲を飛び回ってはいない。羽化した地域内で、好みの花を見つけて飛び回っているだけだ。だから、産卵すべき草や樹のない都心部の公園では、チョウチョの密度が非常に低くなっているのは当然なのだ。

ところが、路面付近の温度が40℃を越えているだろう東京駅周辺のオフィス街なのに、かなりの頻度で出会うチョウがいる。アオスジアゲハである。

 ↓ 吸蜜するアオスジアゲハ (Wikiさんより転載)

  f:id:otto-M:20190815231302j:plain

アゲハ、というと誰もが思い浮かべるだろう華やかな模様のキアゲハや、ちょっと地味だが渋い豪華さのナミアゲハとはだいぶ印象が違う。もちろんキアゲハたちとはちょっと離れた系統にいるのだが。

 ↓ キアゲハ (Wikiさんより転載)

  f:id:otto-M:20190815231542j:plain

アオスジアゲハは、細身の羽にブルーの太線がくっきりと映えるスポーティーな容姿。その精悍な姿は伊達じゃなく、アスリートそのものの俊敏な飛翔でクルマの流れをかわしながら飛び去っていく。以前流行った自転車メール便屋さんのように、人とクルマでごった返している繁華なオフィス街をスイスイと通り抜けていく姿は、思わず追いかけたくなる衝動を駆るのである。

他のチョウたちと違ってなぜアオスジアゲハが草木の少ないビル街にいるのかというと、彼らの食草がオフィス街にもちゃんとあるから。クスノキの仲間を食草としているからなのだ。

ちょっとした公園にもクスノキはあることが多いし、それだけでなく、街路樹としてクスノキがかなり使われているため、ビル街でもアオスジアゲハは産卵する場所に困らないのである。

 ↓ クスノキ:葉を潰すとスウッと香る (樹木図鑑 植木ペディアさんより転載)

f:id:otto-M:20190815231953j:plain

クスノキが都会で好まれているのは、樹型が良いことに加え、葉の密度が高いためしっかりとした日陰が作れるためだという。そのうえ、葉に含まれるカンフル、つまり樟脳の成分が清涼感を与えてくれることも好まれる要因だろう。
が、あの樟脳成分を含む葉を食する、というのもまた、ずいぶん物好きなヤツだと思う。蓼食う虫も好きずき、とは言うが、防虫成分を摂り込んで成長していくしたたかさはなかなかのものだ。矢のように飛んでいく成虫の俊敏さに、どこか通じているように思えて面白い。

 ↓ アオスジアゲハの5齢幼虫 (玉川学園さんHPから転載)

f:id:otto-M:20190815232340j:plain樟脳

スズメが激減して、都心部で見る鳥はカラスとハトばかりになってしまったが、アオスジアゲハはそんな空間に一服の清涼剤。

せめて、成虫の糧になる花がなくならないよう、小さくても花のある公園を確保して欲しいと思う。