理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

朝食バイキングと紙ヒコーキ

薬剤師Y子です。

ある土曜日の朝のこと。

夫Mと私は、コロナ禍による中止を経て再開した某ファミレスの朝食バイキングをゆっくり楽しみつつ、前日までの疲れを癒やしていました。

 

店内には私たちの他に5組ぐらいしか客がおらず「私は快適だけど経営的には困るだろうな」と感じていました。

 

私が食事をしている席からは、すでに食事を終えた1組の親子の姿が見え隠れしていました。小学生と思われる子供が3人と、その母親。全員よく似た顔立ちで、センスの良い服を着ています。

そのファミレスには「塗り絵サービス」があり、出入口に近い、その親子の席に隣接する台の上に、塗り絵の用紙と色鉛筆のようなものが置かれています。

 

私は最初、3人の子供たちが塗り絵用の紙を何枚か折り紙のように使って出来あがった数個の「作品」を台の上に並べ、母親も店員さん達もそれを容認している、という微笑ましい光景を自分が見ているのだと勝手に錯覚していました。多分、そう思いたかったのです。

 

時間無制限のバイキングなので、私は途中でマスクと手袋を着用し、席を立って食べ物や飲み物を取りに行きました。ずっと気になっていた子供たちの「作品」をよく見たくて、さりげなく親子の席に近づいた時、私は自分の思い込みに気づき、さっさと自分の席に戻りました。その頃から子供たちの動きは少しずつ大きくなっていました。

 

席に戻って食事を再開した私には、先ほどまでとは異なり「事実」が見えていました。

店員さんの一人が、親子の席を監視できる位置で困惑の表情を浮かべながら、ずっと同じ作業をしています。

子供たちは塗り絵用の紙をどんどん使って紙ヒコーキを量産し、最初は自分たちの席の上だけで、その後は大胆になって通路側にも、ヒコーキを飛ばしています。

母親は子供たちが遊ぶのをチラチラ見ながら、一言も喋らずにスマホを操作しています。

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子供たちは「周囲の大人が怒り出さないギリギリの線」の位置を知っているようで、誰かが席の近くを通るときは、あまり動きません。そして大声を出すこともなく、まあまあ静かに遊んでいます。

問題は塗り絵用の紙を大量に目的外使用し、たまに通路に向かって紙ヒコーキを飛ばすこと。それを母親も店員さんも黙認していること。私を含む他の客たちが気づいてしまっていること。試作機の数も飛行範囲も少しずつ、でも確実に増していること等です。

 

やがて監視役の若い女性店員さんが奥に引っ込むと、代わりに人生の大先輩である調理担当の女性店員さんが大股で奥から出てきて、まだ使われていない、このままでは全て子供たちの紙ヒコーキになってしまうかも知れない塗り絵の用紙を全部、静かに持ち去りました。

 

結末が気になっていた私は「先輩、さすが!」と立ち上がって拍手したい気分でしたが、何も見ていなかったような顔で食後の飲み物を口に運んでいました。

 

その後、「この辺が潮時だな」と感じたのか、元々それぐらいの時刻までと決めていたのか、母親が子供たちに何かを小声で告げ、トイレに立ちました。子供たちの目の前には既に完成している紙ヒコーキが沢山あるので、それらを何度か飛ばし、母親が戻ってきてから3人で集めてゴミ箱に捨て、大きな明るい声で口々に「ごちそうさまでした!」と言って、店の外に出て行きました。

 

監視役だった店員さんが消毒液を片手に、親子が去った後のテーブルに来て、念入りに拭いていました。

全国の、いえ、世界中の色々な場所で、同じようなことが起こっているのだろうな、と私は思いました。

 

あの親子、コロナ禍がなかったら、本物の飛行機に乗って帰省していたのかも知れない。

あるいは父親が飛行機に乗って単身赴任先から帰ってくる予定だったのかも知れない。

休日の朝たまたま見た光景から、私の想像は今も勝手に膨らんでいます。