ここは、洋館の南の森にある『洋館南駅』の駅職員室です……。表向きは。
だがしかし。
その実態は、洋館攻略のための武器庫
何を隠そう。
『洋館南駅』の駅ビルが、丸ごと“洋館攻略の最前線基地”になっているのです
ちなみに。
武器庫には、遠くから攻撃してくる魔法使いと戦うための矢が備蓄されています。
倒したガイコツが落とす矢をこつこつ集め、その数は270本を超えました。
ただ。
これだけの矢があっても、はたして洋館に住む魔法使いに対抗できるかどうか……
…………。
……。
霧が煙るある日の午後。
クレープ屋さんのメニューから焼き餃子をはずすかどうかで、頭を悩ませていたわたしは……。
憂鬱な気分のまま、駅ビルこと『洋館監視施設』の2F会議室で案山子天使と情報交換のための定例ミーティングを行っていました
そのミーティングの中で「武器庫にある矢だけでは不安なんだよね~」と伝えたところ、彼が“伝説の矢師”について話してくれたのです。
…………。
案山子天使の話では……
矢師は、弓やボウガンで撃つ“矢”を作る職人だそうです。
その矢師の中でも“伝説の矢師”は、おそろしい早さで次々に矢を作り出せるそうで……
もしも仲間になってもらえたら「矢の残り数なんか気にしないで弓やボウガンを撃ちまくれるようになる」と、暗殺者コミュニティでは伝説になっているとのこと
…………。
どうして案山子天使が暗殺者コミュニティの中の話を知っているのか、気になりますが……
考えてる時間はありません!
いざ、伝説の矢師の元へ
…………
……
伝説の矢師が住んでいる村はココ。
通称、『2ばんめに見つけた村』です。
「嫌だなあ……。帰りたいなあ……」
ものごころが付く前からの人見知りなので、知らない人と会うのは“知らない言語で話す外国人と会う”のと同じくらいの苦行です。
…………。
が。
てっきりコワモテのガンコ職人だと思っていた伝説の矢師は、とっても気さくで優しい女の人でした!
「ボウガンの矢をたくさん? いいよ~。出来上がったら、ねこねこちゃんの宿泊先に電話するね~」
あっさり商談成立です!
この感じだと、日程さえ合えば洋館攻略の仲間にも加わってくれそうです
…………
……
この時の猫屋敷ねこねこはまだ、あんな事件が起こるなどとは予想もしていなかったのである。
数日後。
支払い方法の打ち合わせをするために“伝説の矢師”と会うことになっていたわたしが、彼女の工房に向かっていた時だった。
なんだか村が騒がしい。
住人たちが、神妙な面持ちで何かしら話し合っている。
「やあやあ、どうかされましたか?」
「おやおや、猫屋敷さん。実は……」
なんと。
伝説の矢師が……
「はてさて、これは困ったものだ」
矢の納品が遅れるのは仕方がないとして……。
あんなに元気であった“伝説の矢師”に、いったい何が起こったのであろうか?
村人の話では……
昨夜、村の住人が皆で公民館を建設していた時のこと。
とつぜん彼女のHPがみるみる減っていき、そのまま倒れてしまったそうだ。
「ま~るで、魔法でもかけられよったかと思うただて~」
「ほほう。魔法ですか」
「そうだっちゃ~。魔法らろも~」
「魔法を使った殺人未遂事件……。実に面白い」
…………。
……。
何を隠そう。
実はわたし。子供の頃は謎解き本や推理マンガが好きで、よく家にこもって読みふけっていたのです
家族でクイズ番組を観てても、正解を当てるのはわたしが多いめです
「 ド田舎の刑事は騙せても、日の当たらない団地で育った都会っ子探偵の目はごまかせないんだからね」
きっと、この中に犯人はいます!
皆さんも、犯人とその犯行動機を推理してみてください!
…………
……
というわけで。
解決編、はじまりはじまり~
わたしは元女子高校生探偵、猫屋敷ねこねこ!
地元の病院に行って処方された薬を飲んだわたしは、気が付くと風邪が治っていた。
そして名前を江戸川コネコンと変え、事件の真相を追うことになったのだ。
ここが、事件の起きた『建設中の公民館』です……
ちなみに。
PS4のカスタマーセンターとの攻防を描いた番外編に出てきた建物です。
「ド田舎の村……、公民館……、伝説の矢師……、村の住人……」
わたしの頭の中で、ばらばらになっているカードが秩序正しく並べ直されていきます。
たったひとつの真実を追って。
…………
……
ピコ~ン
謎はすべて解けました。
やはりこれは……、魔法に見せかけた“トリック”です!
わたしの推理だと……、犯人の犯行動機はおそらくお金です。
被害者は、伝説になるほどの矢師。相当な稼ぎがあったはずです
外傷がないことから、犯人は被害者に毒きのこを食べさせたと考えられます
ド田舎の村の住人なら、かんたんに毒きのこ……
「お~い。この二人組が、犯人らて~」
ん? はんにん?
「二人組の魔法使いが、魔法さ使って矢師を襲撃したんらて~」
…………。
「わっはっは。犯行動機は“世界征服”だ」
「この世界はわれわれのものだ」
…………
正義執行。
…………
……
こうして。
二人組の魔法使いは、村の駐在所に連行されていったのであった
「また今回も推理は外れましたね」
「その声は……、案山子天使!?」
「もう二度と“推理が得意”などと言わない方がいい」
「エ、エンダーマン!!」
「いいですか? 大切なのは矢の数ではなく、矢を命中させる腕です……」
(あ~あ。またエンダーマンの長話が始まったよ)
「洋館の魔法使いは、もっともっと手強いですよ……」
(よし。今のうちに後ろから剣で倒して、エンダーパールをげっとしよう)
ザザザザザッ
エンダーマンは、にげだした!
「こら~! 待て~!」
「ブ~ス、ブ~ス!」
…………
……
次回、名探偵コネコン『水平線上の失踪者』!
真実はいつもひとつ!