前回。
メリーゴーランドの新設工事をきっちり期間内に終わらせた、派遣アルバイトの“わたし”こと猫屋敷ねこねこと“旅の商人”こと大阪商人さん。
最近は。
銀座で警官ごっこ♪
テーマパーク跡地のとなりの村で、夜勤アルバイトの日々です
夜間の、ビル警備とかビル清掃とか。
毎晩。
絶頂に達して居るだけ♪
案山子天使が働いてるピザ屋さん(ピンク色のお店)をながめては、ため息する日々なのです
気分は、椎名林檎さんが歌う『丸の内サディスティック』の主人公
そんなある日。
「お~い。猫屋敷さ~ん」
ん? わたしがアルバイトしてる派遣会社のマネージャー、安田顕さんです
「急な話でわるいけど、明日からピザ店の勤務に入れないかなあ?」
「は、はいっ! よろこんで!」
ピザ屋さんと聞いて、迷わず即答しました。
これは。
心配してもらうためにひとりで洋館攻略に行ったわたしを無視して、ず~っとピザ屋さんで仕事していた案山子天使とよりを戻すチャンスです!
※ねこねこは、第七十九話で案山子天使が洋館攻略のサポートに来てくれた事を知りません。
…………
……
翌朝。
いよいよ、案山子天使と3ヶ月ぶりのご対面です!
緊張して震える手で、ピザ屋さんのドアをそ~っと開けます
「わたしより仕事を優先したこと、もう怒ってないから……」
って。
「案山子天使ちがうんか~い」
「案山子天使さんは、オーナーとイタリア出張へ行かれました」
「それで、安田顕さんに代わりの人を派遣してもらったのです」
ガーン……
最悪です……
案山子天使といっしょに働けると思ったから、お時給のいい夜勤を捨ててこっちに来たのに……。
ちなみに、彼らは『蒸気機関搭載木製店員ロボ(750cc)』だそうです。
接客から調理まで何でもこなす木製の店員ロボットで、リース料金は月額19万円とのこと
午後。
人見知りで、軽い対人恐怖症のわたしは……。
早々に接客業務から外されてしまい、外壁にイタリア国旗を描く作業にまわされました
マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ♪
ラッカーの匂いで、ラリっちゃって大変です
四苦八苦しながらも。
終電で帰るってば、池袋♪
終電までに終わらせることができました
…………
……
じつは。
現在の派遣先であるピザ屋さんがオープンしたのと同時期に、わたしもクレープ屋さんをオープンさせています
※クレープ以外に、おなじ鉄板で調理したお好み焼きや焼き餃子も売っております。
ただ。
19万も持って居ない、御茶の水♪
19万も払えないので、店員は木製ロボじゃなくて人間です。
それも。
村の人に、農業のかたわらボランティアで働いてもらってるという有り様
報酬は入社後、並行線で♪
報酬はゼロなので、あまり仕事を押しつけるわけにもいかず……。
「うちのお店にも、店員ロボほしいなあ……」
「まいど、おおきに」
「あらら? 大阪商人さんも、帰るとこですか」
彼は板金工場に派遣されてて、アイアンゴーレムの傷とかへこみの修理をしています
「店員ロボやったら、うちの工場裏に何機か捨てられとるで」
「それって、もう動かないんですか?」
「古なったから捨てられただけで、致命的な故障はないんちゃうかな」
「廃棄するんだったら、ほしいです!」
…………
……
というわけで。
わたしのクレープ屋さんにも、『蒸気機関搭載木製店員ロボ(50cc)』が導入されました
捨てられていたロボットなので、オイル漏れがひどいですが……
それでも。
お店には、活気が出てきました
みんな、働き者の良いロボです
初夏の青い空。
換気扇から立ちのぼるクレープの焼ける甘い匂い
そこに。
マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ♪
お好み焼きの青のりの匂い……、焼き餃子のニンニクの匂い……、さらにオイルの匂いまで混ざっちゃって大変さ~♪
おしまい