令和二年 六月二十八日
19:03(ひときゅうまるさん)
日の入り直後に、南方より多数のモンスター襲来との一報。
同時刻。
ホテル『キャットタワー』屋上展望台より、目視にてモンスターの集団を確認。
陸路から、猫屋敷邸へ向かっている模様。
キャットタワー私設軍防衛隊旗艦『伊401』、緊急出動。
19:05(ひときゅうまるごー)
猫屋敷邸付近一帯に、緊急避難警報発令。
付近の動物、並びに住民を、ホテル地下採掘場仮設シェルターに避難誘導開始。
19:07(ひときゅうまるなな)
猫屋敷邸小麦畑に停泊中の『伊400』、戦闘態勢に移行。
19:11(ひときゅうひとひと)
モンスターの集団を、カボチャ畑近くの公道を南下中の『伊402』が殲滅。
…………
……
「最近、毎晩のようにモンスターが来るのう」
「いったい、どこからやって来るのかねえ……」
“わたし”こと猫屋敷ねこねこが、地元を離れてから2週間。
その間に何があったのか、自宅周辺はモンスター騒ぎで大変なようです
そのころ。
わたしはわたしで、別の“モンスター騒ぎ”に巻きこまれていました……
令和二年 六月二十一日
未明(みめい)
洋館の東の山岳地帯で、鬼のように強いモンスターの目撃情報が相次ぐ。
同日。
13:00(ひとさんまるまる)
政府により、現場近くの廃村に『巨大不明生物特設災害対策本部』が設置される。
同日。
15:22(ひとごーにーにー)
『有識者会議』が開かれ、周辺の地図を作ったわたしも呼ばれる。
…………
……
令和二年 六月二十五日
10:09(ひとまるまるきゅう)
自衛隊とアメリカ軍による共同作戦により、巨大不明生物の足止めに成功。
※写真は、周りに土を盛られて身動きの取れない巨大不明生物
たいまつの光で弱らせているものの、一瞬たりとも気の抜けない状況が続く。
その間も、繰り返される有識者会議。
小心者で大勢の人たちの前に立つと死んでしまうわたしは、会議中ずっと指されないように俯いて身体を小さくしていました
会議の結果。
アメリカから来た石原さとみさんによって、巨大不明生物の名称が『ガッズィーラ』に決まる
って……。
オトメさん!?
たたた、大変です! あれは、ガッズィーラじゃないです!
“サカモト家の仁王さん”こと、オトメさんです
サカモトさんが脱藩した、あの日以来の再会です。
まさか、こんな形で再会するなんて……
…………。
サカモトさんを脱藩させたこと。
後悔していたりするのかな……
…………
……
数日後。
巨大不明生物を ガッズィーラを オトメさんを、元の村へ帰す作戦がはじまりました。
土で通路をつくって村まで誘導する、むずかしい作戦
ヒトを移動させるときは、“線路をひいてトロッコで運ぶ”という方法が一般的です。
しかし。
「史上最強と名高い武道家である仁王をトロッコに乗せるのは不可能」という政府の判断で、この方法になったとのこと
武道家を高い山と深い谷に囲まれた村へ戻すというのは、簡単ではありません
民間の作業車両と職人さんたちの協力で、大規模な工事が進んでいきます
わたしも、村の前で工事を見守ります。
「オトメさ~ん、こっちですよ~」
そして。
土の通路が完成
この通路に沿って進んでいけば、そのまま村の敷地に入れます
しかし。
オトメさん、動かず
「オトメさん、わたしです。サカモトさんが脱藩する前、いっしょに村にいたねこねこです~」
「…………」
乙女さんが、こちらに向かって歩いてきました!
有識者によると、“サカモトさん”という言葉に反応したようです
だがしかし。
山の急斜面に差しかかると、足を止めてしまいました。
ぐいぐい押すと少し進むのですが、すぐにまた戻ってきてしまいます
業を煮やし「TNT爆弾を使う」という国連を、フランス政府が引き留めてくれています
時間がありません!
…………
……
「…………」
(サカモトさんのいない村に、帰りたくないのかな……)
10:29(ひとまるにーきゅう)
多数のホイールローダーを動員し、オトメさんを後ろから押す作戦が立案されました。
13:44(ひとさんよんよん)
オトメさんを無傷で村へ帰すことに成功
今回の一連の作戦による被害。
EC-225LP特別輸送ヘリコプター、1機。
10式戦車、多数。
B-2ステルス爆撃機、3機。
RQ-1プレデター、多数。
MQ-9リーパー、多数。
(オトメさんのために、わたしのできること……)
つづく