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原田マハさん『風神雷神』を読んだ感想!美術がつなぐ歴史アート小説

原田マハさんの『風神雷神』を読みました。

原田マハさんの本は大好きで何冊も読んでいますが、上下巻に分かれた小説は初めてではないでしょうか?
すごいボリューム、と思いながら読みはじめましたが、すぐに話の面白さにのめり込みました。

風神雷神の絵が好きで、作者の俵屋宗達には興味を持っていた私。
小説を読みながら、フィクションなのに、歴史の一部をかいま見ているような感じがしました。

こんな人にオススメ
  • 琳派に興味がある人
  • 歴史が好きな人
  • 美術が好きな人

原田マハさんの歴史アート小説『風神雷神』の内容と、読んだ感想を紹介します。
少々ネタバレもあるので、気になる方は飛ばしてください。 

原田マハ『風神雷神』の内容

原田マハさん『風神雷神』を読んだ感想

2019年11月 PHP研究所 発行

美術(アート)という名のタイムカプセルがいま、開かれるーー。
戦国日本とルネサンス・イタリア 海を超え、時代を超えて紡がれる奇跡の物語。

原田マハさんは、伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなった方です。
美術作品を題材としたアート小説を、多く出版されています。

私もたくさん読んできたので、原田マハさんの小説を題材別に紹介してみました。
≫原田マハの小説に出てくる【画家や美術作品】好きな絵画の本を読んでみる?

『風神雷神』は歴史アート小説

主人公は、京都国立博物館研究員の望月彩。
彩の前に、マカオ博物館の学芸員であるレイモンド・ウォンと名乗る男が現れます。

彩は、彼に導かれてマカオを訪れることになります。
そこで目にしたものは、「風神雷神」が描かれた西洋絵画、天正遣欧使節団の一員・原マルティノの署名が残る古文書。

そして、その中に書かれた四文字が「俵…屋…宗…達」だったのです。

話は、原マルティノの語りに変わります。

俵屋宗達の登場から、織田信長への謁見に狩野永徳との出会い、宣教師ヴァリニャーノとの旅路を描いています。

天才少年絵師・俵屋宗達が、イタリア・ルネサンスを体験する!?アートに満ちた壮大な冒険物語です。

天正遺欧使節と俵屋宗達

まず出てくるのが、天正遺欧少年使節てんしょうけんおうしょうねんしせつ)

天正遺欧少年使節とは582年(天正10年)九州のキリシタン大名、大友宗麟、大村純忠、有馬晴信の名代として、ローマへ派遣された4名の少年を中心とした使節団

4人の少年とは

  • 伊東マンショ
  • 千々石ミゲル
  • 中裏ジュリアン
  • 原マルティ

発案者はイエズス会員アレッサンドロ・ヴァリニャーノ。 

そこに、登場するのが、俵屋宗達。
本のタイトルでも、風神雷神図の屏風画の作者です。

俵屋宗達は、江戸時代初期の画家ですが、生年不詳、没年は1640年頃と言われていて謎だらけなんですね。

他にも、織田信長、狩野永徳など、実在した人物が多く登場します。

カラヴァッジョと俵屋宗達

後半に出てくるのが、バロック期のイタリア人画家のミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ

カラバッジョは1571~1610年の人物で、俵屋宗達と同じ時代を生きたことは明らかだそうです。
また、カラバッジョがミラノで修行をしていた時期に、天正遺欧使節が渡航していた歴史的事実もあるとのこと。

歴史上の実在した人物たちがかかわり合い、アートを通して、深い絆をつなぐ物語になっています。

原田マハ『風神雷神』を読んだ感想

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上の写真の風神雷神図屏風のミニ屏風は、過去に琳派展で購入したものです。

先にも伝えましたが、俵屋宗達のことはほとんどわかっていなくて、それは本のプロローグ部分でも伝えられています。

『風神雷神』では、少年時代の俵屋宗達が、原マルティノたちと一緒に行動している姿がイキイキと描かれています。

織田信長と謁見し、狩野永徳のもとで洛中洛外図屏風を制作する手伝いをすることになります。

フィクションですが、本当にこの本の中の出来事が起こっていたら・・・と楽しみながら読むことができました。

ずっと昔の歴史を想像し、少年たちと一緒にイタリアに旅をして、素晴らしい名画に出会う体験をしているかのように感じることができる小説でした

歴史小説の面白さは、歴史上、周知されていることを踏まえて、解明されていないことを小説家がドラマチックに物語ること。ただ正確に描くことではなく、あらゆる逸脱や矛盾を乗り越えて、高揚感を味わえるのが小説の醍醐味でもあります。もう500年近くも前のことだし、誰にも本当のことはわからないぶん、私の想像の翼を思いっきり羽ばたかせて好きなように書いています。
引用:原田マハ ウェブサイトより

原田マハさんは若桑みどりさんの本クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国を参考にされた部分もあるようです。

私は、『クアトロ・ラガッツィ』を途中まで読んだことがありますが、難しくて最後まで読むことができませんでした。

琳派に興味がある人にオススメ

風神雷神図屏風は、京都の建仁寺と京都国立博物館の琳派展で見たことがあります。

この本『風神雷神』の中にちょっと出てくる、養源院の唐獅子図杉戸絵も、見たことがあります。

私はなぜだか俵屋宗達の絵がとても好きです。

小説では「洛中洛外図屏風」も、制作から完成までを描かれています。

これから洛中洛外図屏風を見る機会があれば、また想像をふくらませながらじっくり見れると思うと、楽しみです。

琳派とは江戸時代に現れた装飾的な作風を特色とする俵屋宗達、尾形光琳・乾山、酒井抱一といった芸術家の一群をゆるやかにつなぐ言葉

琳派に興味がある方、歴史が好きな方、美術や芸術が好きな方にも楽しめる小説です。

原田マハさんのインタビューページでは、本書『風神雷神』 ができるまでの経緯や思いが紹介されています。
とても興味深い内容なので、読むとより『風神雷神』の世界を楽しめますよ。

最新刊『風神雷神』インタビュー vol.1 | 原田マハ公式ウェブサイト

最後に

原田マハさんの小説は、好きで今までにも読んできています。
最新刊『風神雷神』は、テーマを知ったときから読みたくて仕方なくて、購入しました。

ページをめくるたびに、天正使節団の少年たちや宗達たち、歴史上の人物たちの姿が目の前に浮かんでくるようでした。 

登場人物たち、とくに素直な心の少年たちの、真摯に芸術に向かう姿、ひたむきに祈る姿が印象的です。

そして、やっぱり美術って素晴らしいと思う、国境を超えた絆の話でもあります。

マハさんの望み通り、
アートを観て人生を豊かにしていく、
それが実現できる『風神雷神』

歴史や世界を旅することができる、オススメの本です。