こちらの記事はSizen-no-kurashi Webサイトで公開していたものになります。

 

 

 

 

 

最も身近な建築物といえば木造建築です。

 

私たちが暮らしている家も現在はS造、RC造、SRC造なども増えてきていますが、森林資源に恵まれた日本では木造住宅が主流となっています。

 

木造建築の技術を深く知るために、広島県竹原市の町並み保存地区を訪ねました。

 

 

 

 

 

 

 

経年変化を感じる出格子などの木材は、新築にはない味と温もりを持っています。

 

「新しいもの」ばかり求めてしまう日常を、ふと思い返してしまうくらい「古さ」を感じる以前に洗練された構成物として印象深く感じます。

 

 

 

 

 

 

白く美しい漆喰壁の蔵には、手入れされた庭の緑が映えます。

 

蔵に続く敷石は主屋に近い場所とは対照的に角ばった石が使われています。

 

 

 

 

 

 

うっすらと苔生す庭は何処かしっとりとした空間で和風建築らしい静けさを伝えています。

 

石で囲まれた井戸とその周りに置かれた飛び石の丸みが優しさを加えているようです。

 

 

 

 

 

 

こちらは大正時代の建築で主屋、離れ座敷、茶室、土蔵などから構成される屋敷構えです。

 

茶室は小堀遠州流の茶人により設計されたと言われています。

 

催事などにも使われた続き間の和室は現在の木造建築と比べて小さなモジュールでできているはずですが、圧巻の広さを感じます。

 

 

 

 

 

 

離れ座敷へと繋がる縁は、手前と奥とでは板の張り方が違います。

 

手前は今でいうデッキ張りのようで、奥はヘリンボーン張りのようです。

 

しかも手前の縁は奥の縁より少し高さがあるため、よく見ていただくと分かりますが、奥のヘリンボーン張りの縁は、こちらに向かって緩やかに傾斜しています。

 

 

 

 

 

 

庭を挟んだお隣の屋根の上にある小さな部屋のようなものが気になります。

 

 私の知識不足ですみません。残念ですが、こちらは不明のままです。

 

 

 

 

 

 

奥まった場所にある、こちらの庭は広さがない分、凝縮された構成になっています。

 

この庭の素材は木と石、そして苔生した土です。

 

少ない種類でも形や大きさで変化をつけることで、寂しくない空間ができる技術はシンプルですが、とてもセンスを感じます。

 

 

 

古民家を訪ねて感じたことは、手をかけることで息の長い存在であることができるということです。

 

人をもてなす文化を大切にしてきた人々の暮らしが伝わる伝統的な木造建築の技術を、これからもずっと残していける時代であって欲しいと思いました。