M君の散々な人生 それでも彼は淡々と生きる | 黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

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世間からかなりずれている管理人、黄昏黒猫堂こと黒猫が自作人形やイラストを発表しつつ、ニート、ひきこもりなど生きずらさを考える。(画像一覧で作品を見ていただけるとうれしいです。)

 昨日も書いたように、息子が不登校を抜け出したのはM君のおかげだ。でも、その後のM君の人生は散々なものだった。高校に入学してほどなく、原因不明の脳出血で倒れた。幸い、後遺症も残らず病気は治った。それなのに追い打ちをかけるように気胸になった。肺の一部が潰れる呼吸器疾患だ。重度ではなく、命の危険はないものの、無理のきかない体になった。それで高校は中退した。体の変調は心も犯し、鬱状態と広場恐怖が彼を苦しめる。彼はすぐ近くに住んでいたので、休日はうちにやってきた。誰よりも苦しいはずなのに、それまでどおり彼は仲間の中心にいた。

みんなが進学や就職をしていくなか、彼は学校へ通うことも、働くこともできずにいた。それでも相変わらず彼はみんなの輪の中心にいた。彼はいつもみんなの悩み事を淡々と聞いていた。本当はかれが一番苦しいはずなのに、彼は淡々と日々を過ごした。その後ひとりはブラック企業に潰されて、対人恐怖で働けなくなった。もうひとりはパワハラでうつ病になって働けなくなった。ふたりとも高卒で就職して、人生の出鼻をくじかれた。息子は自分の生き方の方向性に悩んでいた。みんなは休日に以前と同じように息子の部屋に集まった。

M君はひたすらみんなの話を聞いた。本当は彼が一番未来から遠いのに、まるで傾聴ボランティアのようにみんなの話に耳を傾けていた。時間はかかったけれど、心を病んだふたりはアルバイトをできるようにまでなった。息子は精神保健福祉士になることを決め、会社を辞めて、今は福祉作業所のアルバイトスタッフをしながら通信制大学で学んでいる。

M君の先の見通しは、今のところまったくない。ただ、息子と一緒にひきこもり支援のボランティアはしている。彼は人の話をひたすら聞く。誰よりも鋭い知性を持っているが、けっして持論を振りかざさない。「M君はこれからどうするんだろう。」と息子に聞くと、「さあ、わからない。ただ、あいつはあいつだ。」と言う。つまらないことを聞いてしまったと思った。いつだってM君を必要とする人はいるのだ。そしてM君は今を淡々と生きている。今は、それでいいじゃないか。

これで息子の不登校の話は終わりにしますが、若者の生きづらさについては、これからも書いていこうと思います。娘のひきこもりのこともありますし。

 

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