小さきものたちの大きな恵み 自然を忘れた僕たち | 黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

世間からかなりずれている管理人、黄昏黒猫堂こと黒猫が自作人形やイラストを発表しつつ、ニート、ひきこもりなど生きずらさを考える。(画像一覧で作品を見ていただけるとうれしいです。)

 科学文明が高度に発達した現代でも、僕たちの生活を根底から支えるのは、やはり農耕だ農業なくして食べ物はなく、僕らは1日だって生きていけない。その農業の根幹を支えているのは、目には見えない小さきものたちだ。農業者は畑地や水田に堆肥をすきこむ。化学肥料が主力となっても、そればかり使うと、土がダメになる。さて、土にすきこまれた堆肥はどうなっていくのだろう。僕らがふだん忘れている小さきものたちが人知れず、黙々と働いている。僕らはそれを見ることはけっしてないのだけれど。

 堆肥は土の中の細菌や真菌(カビ)によって腐敗(分解)されていく。アンモニアが発生する。たくさんのものができるのだが、アンモニアに注目してみよう。アンモニアは土の毛管水の中に溶け込む。それを亜硝酸菌という化学合成細菌が亜硝酸イオンに変え、その亜硝酸を、硝酸菌という別の化学合成細菌が硝酸に変え、硝酸イオンの形で作物は窒素というタンパク質の重要成分を根から吸収する。硫安のようなアンモニア肥料を与えるのは堆肥の腐敗の過程を手っ取り早く省略するためだ。アンモニア肥料をまいた時でも、亜硝酸菌と硝酸菌はアンモニアから硝酸を作り出し、それを作物の根が吸収する。そしてこれは森林の土でも草原の土でも起きていることだ。

 動物が死に、枯れ葉が舞い落ち、それが細菌やカビの働きで腐り、亜硝酸菌や硝酸菌が硝酸を作って、木の根や草の根に届ける。植物は硝酸イオンの形でないと窒素分を体に取り込むことができない。作物だけでなく、地上のあらゆる植物を生かし、その植物が生きる土を作っているのは、土を手にとっても見ることのできない細菌や真菌(カビ)たちだ。土の匂いを嗅ぐと、わずかだが、かすかに硝酸の匂いがするような気がする。手に取った土の中には天文学的数字の小さきもの(細菌、真菌)がいて、僕らの目を癒す緑の世界を作り上げている。そして日々の糧を届けてくれる。大学の実験植物園で、それら小さきものたちを愛おしくさえ思ったものだ(その頃、科学で食っていこうとは思っていなかったのだが)。

 今、僕らは次第に、いや、急激に自然から離れようとしているようにしか見えない。農業も、いつか効率化を最大限に求めた結果、コンクリートのビルと化した水耕作物工場になるのかもしれない。でも僕らが自然を忘れれば忘れるほど、自然は僕らを破壊者として決然と排除してくるのかもしれない。いつか地球から「お前たちは、もう消えろ。」と言われてしまうかもしれない。そんなことを思う。

 

ブログランキングに参加しています。クリックしていただけると励みになります。


人形・ぬいぐるみランキング にほんブログ村 ハンドメイドブログ 布人形へ
にほんブログ村