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2019.10.24
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カテゴリ:二次小説
「ねえ・・・」の引き出しには、きっと入りきれないほど大量のナノサイズのラブレターが詰め込まれていて、引き出す度にまるで羽毛のように飛び出してきて、ぼくの敏感な部分を刺激する。
第7話 より
​​~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~​

「もうひとつのラスト」 第8話


「浩史はダイエットでもしてたの?10年前より少し引き締まった感じ」

この辺が、と言って彼女はベッドに手をつき膝を立てて、ぼくの上をそのままの姿勢で這ってゆく・・足の方へ。僕は、わけもなく(本当は大ありだった)慌てて言った。

​​「あ、あの実はさあ・・・君が通っていた、例のフィットネスクラブがあっただろ?あそこに、僕も行ってるんだ。ほら、若い女の子がいると、老け込まないって言うし」​

「ほほ~ッ」と彼女が言った。「成果があったって言いたいわけ?」そう言いなが僕の脇腹をつねった。
痛い!と言うはずなのに、香瑠の目が細くなったので「痛い」は飲み込んだ。

「大丈夫、私が帰って来たから。ほら、私といると退屈することなんて無いでしょ?だから老け込む心配なんしなくていいの」

そう言いながら香瑠は、僕の上を這い上がってきた。そしてぼくの唇にキスをした。
​​僕らがそろそろ我慢できなくなってきた時、お湯が溜まったことを知らせる野暮なブザーの音が聞こえてきた。​​

「はいはい、分かりましたよ!」と僕はベッドから下りてバスルームへ向かう。背中で香瑠が「フフッ」と笑い、「後でね」と追いかけて来た言葉で僕は元気を取り戻す・・・彼女の言葉には、やはりナノサイズのラブレターが仕込まれている。


バスルームでは、終始香瑠がリードした。

「浩史が先に脱ぐのよ、言ったでしょ、あなたの足の間に私が入るんだから」
「え!本気だったの!?」
「もう、・・ほら、目を閉じていてあげるから」
「あ、うん、分かった」

人生で、これほど早くトランクスを脱いだことはなかった。
香瑠の言う通り、これからの僕の人生に「退屈」の二文字は無縁となる。そう思った。

「ま、まだだよ!」と言いながら、ぼくはバスタブのふちを跨いだ。

確かに目は閉じてくれているが、香瑠は両手を腰の両端に当てたまま、顔を左右に振っている。(呆れた)と言っているようだ。


ザブッと音を立ててお湯の中に身体を入れた。
​​見上げると、香瑠はすでに目を開けていて、いつの間にかコットンシャツも脱いでいて、髪を後ろで束ねているところだった。(あとはブラとショーツだけ!)​​​​


「好きだな、それ」
「どっちのこと?」と彼女は、ブラとショーツを交互に指差しながら言った。
「ブーッ!」
「何それ?」
「僕が好きだと言ったのは、ポニーテールのことだよ」
​「そうなの・・・」​

一瞬の沈黙のあと、彼女は背中に手を回しブラを外しにかかって・・・ぼくは視線を外す・・・だが、それが良くなかった?​

「私はもう若くはないわ、それは分かってる・・・」

​​予想外なセリフ、おまけに香瑠の声は明らかに湿り気を帯びていた。ぼくは何も言えないでいる。何か一つヒントでも無ければ、頭の中の検索ボタンをクリックする事さえ出来やしない!​

「だけど、私はこんなに勇気を出して、あなたに全部見てもらおうと頑張っているのに!恥ずかしいのよホントは!でも、あなたは今、目をそむけた・・・やっぱり見た目も二十歳そこそこじゃないとダメなの?」

途中から香瑠は俯いてしまったが、『ダメなの?』のところで顔を上げた。今度こそ本当に驚いた!
香瑠の目から涙が、上質のケント紙のように艶やかなその頬に流れ伝わり落ちていく。

僕はいよいよ訳が分からなくなって、検索の項目に「香瑠、泣いてる、ブラ、若くない、」とにかく思いつく言葉を入力して、頭の中の検索ボタンをクリックした。

​​​​しかし、「見つかりませんでした」と表示されるだけ!​










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最終更新日  2019.10.24 18:03:52
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