平成20年12月期決算の売上、利益とも前年を大幅に上回ることが出来たこともあって、年が明けて2月末に税務申告を済ませた松島社長の気持ちは、ややもすると緩みがちになっていた。
平成21年度は昨年実績を上回る成長ができるだろうと自信満々だったのである。
その年は年初から3月までの売上は順調に推移していたこともあって、売上は15パーセント程度は増加できるという見通しのもとに、社員を増員するとともに、福岡にも拠点を開設するなど積極的な投資も行っていた。
3月に入ると松島社長は取引銀行各行に決算の報告をしに訪問し、経営内容の説明を行うと同時に今年も引き続き支援をして欲しい旨の依頼をしたのだが、各銀行の融資担当者の態度は従前とほとんど変わることはなかった。
このことから松島社長は各銀行とも引き続き積極的な姿勢で支援してくれることを疑いもしなかった。
ところが4月に入ると売上が前年の半分にも満たないほど激減し、5月以降の売上も回復の見込みが立たないという事態が判明することになってしまった。
輸出産業を主な取引先にしている会社なので輸出産業が不振になれば、その影響を受けないはずはないのですが、3月まではほとんど影響がなかっただけに、松島社長は家電メーカーをはじめ精密機械メーカーなどが世界市場でシェアを失っていることの深刻さに気付いていなかったのです。
(つづく)