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ウサギの疝痛

2019年10月02日 | 馬の医療や管理について

 ウサギの病気は、その大半が生殖器系(ただしメスのみ)と消化器系疾患。最近はウサギも長生きするようになりまして、ガンや老衰になるウサギも出てくるようになっちゃいましたけども。で、消化器系疾患はほぼ2種類。

1)歯の疾患。伸びすぎや、不正咬合・歯牙膿瘍等。:歯は消化器の一種です。

2)麻痺性腸閉塞(便秘という症状になります)

 ウサギの麻痺性腸閉塞の症状は、本当に急性で、さっきまで普通にしていたのに、いきなり食べなくなる、なんか元気がなくなる、便が出なくなる、とこんな感じ。まあ、馬と似ていますね。で、つい様子を見てしまうと、翌朝死んでました、ということになる。

 この腸閉塞症状は、当院では割と季節性があって、春秋に多い。最近は減少傾向にあるが、昔は本当に多発して、往生しました。

 さて、この原因は何なのか?ウサギについては、朝見たら死んでた、というのが現在も普通にあるので、「寂しいと死ぬ」なんていう変な説がまかり通ったりしている。残念だが、ウサギは頭が悪くてですね、「寂しい」なんて高級な感情を持つこと自体あり得ないんですよね。別にちゃんと理由がある。で、これは、基本人間がこしらえてしまったものだ。原因は大きく分けて2つ。

1)食餌:かつて、ウサギはその辺の残飯や野菜くずを与えられていた。で、しょっちゅう下痢して死んでいた。草食獣の下痢は我々の下痢とは違って、腸内細菌叢のかく乱によるものだから、死に直結しかねないくらい危険な疾患であることを理解するべき。で、犬にはドッグフード・猫にはキャットフード・ウサギにはラビットフード、となってきたんだけども、そのラビットフードが腸閉塞の大きな原因になってしまったのだ。

2)毛:草食獣のウサギは、野生の状態では常に皆さんの食糧として狙われてますからピリピリと緊張に溢れた生活をしてます。ところが、家で飼われてると、その緊張がない退屈やることない毛づくろい、というパターンにはまるウサギが非常に多い。で、ウサギはそもそも毛皮の元として家畜化されたという由来もあって、毛が細い・長い・もつれやすい、これを毛づくろいの時にどんどん飲み込んでしまう。ウサギは嘔吐ができないから、飲み込んだ毛は糞便で出すしかないのだけれど、ここにラビットフードが絡まりついて、胃の中で毛玉をつくってしまう。胃が自分の毛でパンパンになるウサギもいる。こうなると、手術して取り出すしかないのだが、その手術で死んじまうウサギも多い。痛いくらいなら死ぬ、というわけで、苦慮させられます。

 この「胃内毛球症」は、エキゾチック専門誌で特集されるくらい多発する重要疾患である。毛玉症というと、すぐ猫となりますが、嘔吐ができる猫ではまず、こんな病気は起きない。そうでなくても、毛のせいで胃潰瘍や胃炎が普通に起こる。その結果、胃が痛い腹が痛い腸管の蠕動がストップ便秘、という流れ。春秋にこの病気が多発するのは、要するに毛の生え代わりのシーズンで、毛がどんどん胃にたまりやすい時期になるから。

 ラビットフードが毛玉を大きくしてしまう理由は、そもそもラビットフードをフードの形にまとめるために使われる「のり」の役割をする物質(グルテン等々・または炭水化物)が胃の中で毛に絡みつくからだ、とわれています。だから、現在推奨されているラビットフードは、ノングレイン系になっているわけ。それも、ほんの少量でたくさんでしょ、というのが最近は主流の見解です。ペットウサギは短期間で体を大きくして毛をよくして肉やら毛皮やらに変身させる家畜ってわけじゃないので、家畜ウサギを念頭に置いてつくられたラビットフードは、そもそも適合しないんですね。

 で、今は、ウサギにラビットフードなんかほとんどやらなくていい、牧草だけ与えてください、というのがウサギを診療している先生の意見です。大体盲腸でなんでもつくれるんだから、栄養バランスなんか別に考える必要なし、消化器を甘やかすな!!という結論なんですね。牧草のみ与えていると、毛が牧草と一緒に腸に押し流される傾向が高くなる、そのせいか、最近はこの疾患は減ってきた。歯もしっかり使うから、歯牙疾患も減少するようになる。牧草は食べるのに時間がかかるから、退屈病も若干なくなるわけで。草食獣にとって、「退屈」というのは、困った事態なんですよね。

 あと、それと別にウサギに起こる便秘や下痢の原因として、いわゆる「ウサギのおやつ」が挙げられる。ドライフルーツだの、クッキーだのといった糖質や炭水化物が盲腸をダメにしちゃうんですね。発酵腐敗モードにチェンジしちゃって、敗血症、となりかねない。特にメスウサギは、そういう「美味しい餌」に慣れてしまうと、普通の牧草を食わずにハンストを起こしたり、もらえないとストレスで毛引き症(自分の体毛を引っこ抜く一種の精神疾患)を起こしたりするから面倒なのだ。だから、最初からそんなもんやりなさんな、甘やかしちゃいけません、と口を酸っぱくして言うんですが・・・・・。可愛いからどうこう、というのは、こういう点でもダメなんですよね。

 馬についてはどうか。皆さん、甘やかしてませんか?



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1 コメント

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Unknown (miyata)
2019-10-02 23:16:37
我が家の満12歳のウサギは、8歳くらいまでの間に2回ほどうっ滞になり、病院で内臓の動きを活発にする皮下注射を打ってもらい助かりました。
確かに若いころは、毛量が多くグルーミングを頻繁にしていましたので、それが原因だったのですね。
馬を飼い始めた頃、やはり近所で馬を飼っている人から「疝痛」になったら大変だから、いざというときのために注射くらいできないといけない、ルーサンは少しだけ食べさせるなどとアドバイスされたことがあります。
そういうものなのかと予防注射に来てくれた獣医さんにお願いし、さすがに注射は無理なので、バナミンペーストを半ダース購入しました。
その獣医さんもペットとしてポニー2頭を飼っているかたですが、「バナミンは使ったことないし、そうそう疝痛にならない」とおっしゃっていました。
実際に疝痛で苦しんでいる馬を見たことがなく、知識不足が怖さを助長しているのだと思います。
本当のことを知れば、「疝痛」恐怖症がきえるかも。
次回に期待しています。

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