街中にいい香りが漂う季節になりました。
これはキンモクセイの香りだ!
そうか、キンモクセイが咲く季節になったか…
というわけで、今の時期でなければ堪能できない、キンモクセイの天然記念物指定木を見に行ってきました。
時期的なモノなので、東博の宝物を紹介するとしましたが、今回は先にこちらを紹介します。
キンモクセイは中国原産の常緑広葉樹で、今でも庭などに植えられているのをよく見かけますね。
おそらく、その馥郁とした香りが好まれているのでしょう。
今回訪ねたのは、いずれも群馬県南部にある天然記念物に指定された木です。
昔はキンモクセイの巨木として近隣に名を馳せた木だったようです。
まずは群馬県邑楽郡邑楽町中野の永明寺のキンモクセイを訪問しました。
永明寺境内
永明寺は曹洞宗のお寺で、邑楽町の中心に近い中野地区にあります。
集落の中心に広い境内のお寺があり、山門を入った左手に件のキンモクセイの木はありました。
境内と天然記念物のキンモクセイ(本堂から)
永明寺のキンモクセイ(本堂側から)
結構な大木だろうと想像してたのですが、ちょっと想像とは違ってました。
それもそのはず、元の木は昭和41(1966)年の台風で根元から倒れ、今の木はそのひこばえから成長したものだそうです。
北から
元の木は目通りの幹囲が3.4mあったというのですから、残念ながらそれよりは見劣りがしてしまいます。
本当に残念です。
北西から
それでも、庭木に植えられている木よりは十分大きく、遠くまで芳香を放っていました。
立派なキンモクセイです。
なんせ、香りを辿ってお寺の場所がわかったくらいですから。
永明寺のキンモクセイの花
続いては、伊勢崎市華蔵寺町にある華蔵寺のキンモクセイを訪ねました。
華蔵寺参道
伊勢崎の住民なら誰でも知っている、華蔵寺公園。
大きな遊園地がある、伊勢崎市民憩いの場です。
上の写真の左手に写っているのが、華蔵寺公園名物の大観覧車です。
華蔵寺
華蔵寺は天台宗のお寺で、遊園地の隣で喧騒をよそにひっそりと佇んでいました。
華蔵寺のキンモクセイ
本堂の傍らに植わっているキンモクセイの木が、天然記念物に指定された木です。
キンモクセイの木と天然記念物の標柱
南東から
こちらも残念ながら、想像していたほど大きな木ではありませんでした。
元の木は永明寺のキンモクセイと同じ時期に同じ台風の被害を受けて倒れました。
さらに、昭和57(1982)年にも台風被害に遭い、主幹は折れてしまいました。
そこから腐朽がすすみ、枯死寸前になったことから処置を行い、現在のものは主幹から成長したひこばえだそうです。
現在の木は永明寺のものと同様、庭木のものに比べれば十分に立派です。
ただ、元の木のサイズを知ってしまうとやはり…
華蔵寺のキンモクセイの花
そんな人間の気持ちは気にも留めず、キンモクセイの花は強い芳香を放っていました。
そう、これから元気に成長してくれればいいんだ!
元気に成長して、将来の名木となってほしいものです。
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永明寺のキンモクセイ(昭和12年6月・国指定天然記念物 群馬県邑楽郡邑楽町中野)
華蔵寺のキンモクセイ(昭和12年6月・国指定天然記念物 群馬県伊勢崎市華蔵寺町)
キンモクセイはモクセイ科モクセイ属の常緑広葉樹で、中国南部原産です。日本には自生せず、開花期には強い芳香を放つことから庭木として好まれ植えられています。雌雄異株で、日本には雄株のみ移入されています。
永明寺のキンモクセイは永明寺の開基・夢窓国師が元弘元(1331)年に植えたとの伝承があります。元の主幹は樹高約16m、目通り幹囲約3.4mあったそうですが、昭和41(1966)年の台風26号で倒れ、引き起こされましたが枯死しました。現在見られるものはひこばえが成長したもので、樹高は約7mを超え、開花期になると往時に負けず劣らず周囲に強い芳香を放っています。
華蔵寺のキンモクセイは樹齢400年、樹高約10.6m、目通り幹囲約2mの大樹でした。しかし、やはり昭和41年の台風26号で倒れ、さらに昭和57(1982)年の台風10号では幹の中ほどから折れてしまい、枯死しました。現在見られるものはやはりひこばえが成長したもので、他に群馬県林業試験場で挿し木から育成した苗が成長したものが華蔵寺公園内に2株あります。
参考文献:
『日本の天然記念物』 講談社(1995)
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