小さなおはなし

ベッドタイムストーリーになるような、小さなおはなしを考えて行こうと思っています。

みならいまじょのリラとサンタクロース

2019-12-08 08:46:57 | 小さなおはなし
あるところにまじょの森がありました。

まじょのむすめは8さいになるとみならいまじょとなり、まじょのしゅぎょうをすることになっています。

ことしの12月10日、リラというまじょのむすめが8さいのたんじょうびをむかえました。

リラのママがリラに言いました。

「今日で、8さいのおたんじょうびね。これからは、ひとりのみならいまじょとしてきびしくおしえますよ」

「ママ。8さいになるのをたのしみにしていました。これから10ねんかん、よろしくおねがいします」

「さいしょのしゅぎょうは、さくらまちにいるくるみちゃんというおんなのこのクリスマスをしあわせにすることです」

「でも、ママ、あたし、ほうきにのることしか、まほうをおぼえていないわ」

「リラ、まじょのちからはまほうだけじゃないのよ」

リラちゃんのママはほほえんでいいました。

「どういうこと?」

「じきにわかるわ。ほら、ここが、くるみちゃんのおうち。たずねてみなさい。お金は、2000円あげるから、もっていきなさい」

よく分からないまま、リラは地図をうけとり、くるみちゃんのいえへほうきにのってむかいます。

じこくは、ごご4時。もう、がっこうからかえってきているころです。

ピンポーン。チャイムをならします。

「だぁれ?」インターフォンからかわいい声がきこえます。

「くるみちゃんですか?みならいまじょのリラと申します。はじめまして」

「まじょ?まじょっているの?」

くるみちゃんは、こうふんぎみです。・・・でも。

「いるはずない。サンタクロースだってうちにはこないんだもの」

「ほんとうです。ほんものの・・・みならい、だけど、まじょです」

きぃぃ・・・。ドアが、ゆっくりと開きます。

ぼうし、ワンピース、くつ、すべてがきみどりいろの、みならいまじょ10級のせいふくを着たリラがいます。

「みならいまじょって、まっくろなふくを着ているんじゃないの?」

「あ、あたし、それ好き。『まじょのたっきゅうびん』おもしろいよね」

リラはにこやかに言います。

「みならいまじょさん、は、きみどりいろなの?」

「せいかくには、みならいまじょ10級。級によって、色がちがうの」

「ふぅん・・・で、うちに何の用?」

「あ、の~~、くるみちゃんのクリスマスをしあわせにすること、がはじめてのしごとなの」

くるみちゃんが、かなしそうに、こまったように、わらいます。

「うちには、クリスマスはこないわ。12月24日も25日も、ただのふつうの日。サンタクロースも来たことがないし、ケーキも食べないし。パパは死んじゃったし、かんごしのママは、まいとし、1ばんじゅうしごとだし」

「だったら・・・だったら、リラとくるみちゃんでことしはステキなクリスマスを作ろうよ。」

くるみちゃんをはげまそうと、リラはあかるく言います。

「とりあえず、100円ショップに行って、へやをクリスマスにするざいりょうを買おう」

「へ?100円ショップ?まほうでぱ~っと変える、とかじゃないの?」

くるみちゃんが、ちょっとがっかりしたようにいいます。

「えへへ。それができるのは、う~~ん、5級くらいのみならいまじょからかな」

てへっ。舌をだしてわらうリラ。それを見て、おおわらいするくるみ。

「あっはっは!!まじょっていったって、なんにもできないじゃん。あなた、おもしろ~い!!」

ぷんぷん。リラはおこったふりをします。

「ほうきには、のれるもん。ほら、うしろにのって」

ほうきがとびたちます。

「すご~い!!」

くるみちゃんは、空とぶほうきにおおよろこびです。

しばらくして・・・。

リラとくるみちゃんは、くるみちゃんのいえの中にいました。

100円ショップで、おりがみやセロファン、まどにくっつく「メリークリスマス」の文字、クリスマスリースなどを買ってきたのです。

「ほら、きらきら星が折れたよ。こっちは、サンタクロース」

リラが次々にクリスマスのかざりをおっていきます。

「あたしは、スノーマンをおったよ。ゆきのけっしょうもきってみたよ」

「リラちゃん、あたしね、犬がかいたい。もしねがいが叶うなら・・・」

(犬かぁ・・・。)

ふたりでしばらく楽しそうにつくっていました。でも・・・。

「こんなことしても、うちにはサンタさんは来ないよ。ママもいないクリスマスなんて」

くるみちゃんは、部屋にこもって、べっどにつっぷして泣きつづけます。

(どうしたらいいんだろう・・・どうしたら)

リラはひっしにかんがえます。

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その日の夜。リラは、パパとママと、食事をしていました。

「ママ・・・サンタクロースって、どこに住んでいるの?」

「とおい、とおい、北の国よ」

リラは心を決めたように言います。

「あたし、行ってみる。そして、なんでくるみちゃんにプレゼントをあげにこないのか、聞いてみる」

「ほんとうに、とおいんだぞ」

パパはきづかうように言います。

「だいじょうぶ。くるみちゃんのためだもん!」

「そう・・・じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。お金はいくら残っているの?」

「くるみちゃんのいえをかざるのに、990円使ったから・・・残りは1010円。大丈夫よ」

「そのおかねは、しぜんにその国のおかねにかわるから。ひつようなものは買いなさい。それから、パンとお茶をもって行きなさい」

「ありがとう、ママ」

「気を付けてね。あたたかくしていきなさい」

「はい。行って来ます」

リラは、ほうきにのって、ママにもらった地図をたよりにとびつづけました。

(これは、3~4日、かかりそうだわ。急がないと)

リラは、ひっしにとびつづけました。すると、ず~っと北の方のくもの上に、あたたかな光が見えます。

(きっと、あそこだわ)

リラは、雲めがけてとんでいきました。すると、赤い服をきた、サンタクロースたちが集まっているばしょを見つけて、声をかけました。

「サンタクロースさ~ん!!」

なんだ、なんだ?ちいさなまじょのとうじょうに、サンタクロースたちは、ビックリしています。

「日本の、とうきょうの、さくらまちの、くるみちゃんには、なんでプレゼントをくれないんですかっ?」

すごいいきおいで、リラが言います。

「まぁ、まぁ、おちついて。君たちがつくったクリスマスかざりで、ようやくくるみちゃんのママがクリスマスに気づいてくれたよ。おやすみも、取ってくれたようだ。きっとステキなクリスマスイブになるよ」

「でも、サンタさんからのプレゼントは・・・」

「それが、くるみちゃんが、ほしいものを言わないんだよ」

(犬・・・犬だわ)

「くるみちゃんは、犬が欲しいって」

サンタさんは困ったように首をふります。

「どうぶつは・・・いつも、どうぶつのぬいぐるみから、まほうでどうぶつにしているのさ。そのぬいぐるみがなけりゃ」

リラちゃんは、考えます。

「あみぐるみでも、いい?」

「もちろんさ。でも、どうするんだい?」

「下に行って、毛糸とかぎ針と目と鼻のざいりょうを買ってくる。で、おおいそぎで編むわ。それで大丈夫?」

「もちろんさ」

サンタさんはえがおで言いました。

リラは町におり、ざいりょうを用意して、おおいそぎで戻りました。

そして、おおいそぎで犬のあみぐるみを編んでいると

「リラ、いそいで。タイムリミットの20日はもうすぐだよ」

「しっぽをつけて・・・できたわ」

それは、かわいらしいミニチュアダックスフンドのあみぐるみでした。

「じゃあ、やろうかね?」

サンタクロースさんたちは、ホッホッホー、といって、いっせいにまほうをかけました。

するとどうでしょう?

あみぐるみだった、ミニチュアダックスフンドがほんものになって、ワンワン、とほえています。

「よしみんな、行こう。とうきょう担当のわしに、リラはついてきてくれ」

「わかったわ」

サンタクロースたちは、それぞれの方向に旅立って行きました。リラもサンタさんと一緒にとうきょうへ行きます。

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24日、クリスマスイブの夜です。くるみちゃんが楽しそうに、ママとテーブルを囲んでいます。おいしそうな料理に、ケーキもあります。小さいですが、ママが買ってきてくれた、クリスマスツリーも飾られています。

「くるみ、いままで、仕事ばかりでごめんね。これからは、クリスマス、一緒に過ごそうね」

「うん、うん。ママが一緒にいてくれたら、プレゼントなんて、いらない」

「くるみ・・・」

ママは、目になみだをうかべていました。

その日の夜おそく、くるみちゃんがねてしまったころ、サンタクロースとリラがくるみちゃんの部屋にやってきました。

サンタクロースがまほうで部屋のかぎをあけ、そっとミニチュアダックスフンドをベッドの下に置きました。

「メリークリスマス、くるみちゃん」

リラはちいさくささやきました。

クリスマスの朝。

「ママ~!サンタクロースが、サンタクロースが、来てくれたよ!!この子、見て!」

ミニチュアダックスフンドが、くりくりした目でみあげています。

「まぁ・・・ほんとなのね」

「あたし、この子の名前、リラにする」

「リラ?なんで?」

くるみちゃんのママは不思議そうです。

「うふふ、ひみつ!」

(リラちゃんがくれたのよね?ありがとう・・・。)

そのようすを、そとから、そっとリラは見ていました。

(しあわせ、よね?くるみちゃん)

リラは、ほうきにのって、まじょの森に帰りました。

「ただいま~。ごめんなさい、もらったお金、ほとんどつかっちゃった。のこり、15円だけ」

「いいのよ。ちゃんと、くるみちゃんのために使いましたね。見ていましたよ。よくやりました!」

リラは、えがおいっぱいになりました。

「メダルを1枚あげます。10枚たまったら、今度は9級ですよ」

「がんばりますっ」

「こっちへおいで、リラ・・・」

ママが、リラをぎゅっと抱きしめました。

「今日が、私たちのクリスマスイブよ。楽しくお祝いしましょう」

「そうだな」

パパもリラとママをぎゅっと抱きしめました。

「リラ、8さい、みならいまじょ10級、これからもがんばります!」


おしまい


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キミのためにできること

2019-10-28 08:44:22 | 小さなおはなし
むかしむかし、小さな森の中に一匹のくまがすんでいました。

くまの名前はセーラ。セーラには友達がいませんでした。「くまはこわいもの」と教えられた動物たちは、セーラに近づこうとしなかったのです。

でも、セーラは心やさしく、人一倍さびしがりやのくまでした。

ある日のこと、セーラが木の実を探していたとき、一匹の野ウサギがうずくまっているのを見つけました。どうやら、足をくじいているようです。

「ねぇ、あなた、大丈夫?」セーラはやさしく声をかけます。

「足がいたくて・・・うごけないんだ」その野ウサギは答えます。

「うちにいらっしゃい・・・てあてをしてあげる」セーラは野ウサギを抱き上げると、自分の家に連れて行きました。

ベッドにねかせて、けがをしている部分の毛をそって、湿布をはってあげます。

「ありがとう・・・ボクの名前はフィリップ。森から森を旅してるんだ。キミは?」

「セーラよ。どおりで見かけない顔だと思った。その足じゃ、当分旅はできないわね。しばらく、ここにお泊りなさい・・・わたしがこわくないなら」

「キミがこわいって?そんなわけないじゃないか」フィリップはおどろいたように言います。

「だって、わたし、くまよ。みんなこわくて近づいてこないわ。・・・そうだ、木の実のスープとパンがあるの。食べない?」

「おなかがすいてきたところだ。いただくよ」

フィリップは、食事のあいだ、いろいろな話をしました。いろいろな森で出会った友達の話、危険な目にあった話、友達とのにぎやかな夜、1人の夜に見上げた夜空のきれいだったこと・・・。

「そろそろねましょうか」セーラが言いました。

2人は1つのベッドで身をよせあうようにしてねました。セーラは小さな友達のあたたかさに、そっと涙しました。こんな日がずっと続けばいいのに。

それから毎日、セーラはフィリップのお世話を一生けん命しました。誰かのために何かをすることのよろこびをひしひしと感じているセーラなのでした。

いっぽう、フィリップは考えていました。(セーラ、キミは本当にボクによくしてくれている。キミのためにできることがボクに何かあるかな?・・・そうだ!)

ある朝、フィリップは朝早く、ベッドからするりと下りると、ドアを開けて外に出て行きました。足は、完全によくなっていました。

森のまん中の広場に集まっていた動物たち・・・野ウサギ、白ウサギ、リス、ハリネズミ、キツネ、に声をかけ、やさしいセーラのことを話しました。

「でも、しょせん、くまだろ?ボクたちを食べてしまうよ」

「そんなことない!セーラは毎日、木の実とはちみつをぬったパンを食べているのさ。ボクはずっと一緒にいたからわかる。キミたちと友達になりたがっているんだ。この足も、ていねいにてあてしてくれたし、食事をしたり、ねたりもいっしょにしてるんだよ。ホントに、ホントに、やさしいくまなんだよ」

フィリップが動物たちをせっとくしていたころ、セーラはフィリップがいなくなっているのに気づいておちこんでいました。

「きっと、けがが治って、また旅にでてしまったんだわ。でも、ひとことくらい・・・ひとことくらい・・・」

セーラは、わんわんと声を上げて泣いていました。涙がかれるほど泣いたかとおもったころ、家のとびらが開きました。

「フィリップ?」セーラがふり返ると、たくさんの、たくさんの動物たちがいました。

「セーラ・・・わたしたち、あなたのことかんちがいしていたみたい。話はフィリップから聞いたわ。いまさらなんだけど・・・わたしたちと友達になってなってくれない?」

いちばん小さな、ハリネズミのメアリが言いました。

「わたしとも」「ぼくとも」「わたしとも」ヤギに野ウサギ、ヒツジにリス、キツネに白ウサギ、おんどりにめんどりにくじゃくたちも・・・。

セーラはまた目に涙をうかべて言いました。

「もちろんよ!!わたしは、いつも、あなたたちと友達になりたいと思っていたの!!」

わ~っと、みんながセーラに抱きつきます。

「ねぇ、みんな、フィリップを知らない?」

みんなは困ったように顔を見合わせます。

「次の旅に出るって、さっき出て行ったところだよ」

セーラは、みんなを振り切ってかけだすと、丘の方に向かいました。そこにフィリップをみつけると、大声で呼びました。

「フィーリーップ!!」

フィリップが立ち止まってふり返ります。セーラは息をきらして、フィリップに追い付きました。

そして、大声で言いました。

「ばか!!ばか、ばか、ばか!!」

セーラの目はもう、涙でいっぱいです。

「セーラ・・・さよならを言うのがつらくて」

フィリップは目をそらしていいます。

「みんなが、ボクのかわりになってくれればいいな、と思って。それが、ボクのキミのためにできることかな、って」

セーラは、フィリップにやさしくキスします。

「それはちがうわ。あなたがずっと、わたしのそばにいてくれること。それがあなたがわたしのためにできることよ。誰もあなたのかわりなんてできないんだもの」

「ここでいいのかな。キミに会うためにボクは旅をしていたのかな」

「わたしは、あなたが大好きよ、フィリップ」セーラが心をこめて言います。

「ボクもキミが好きだよ、セーラ。ボクはずっとキミのそばにいる」

フィリップがセーラにあついキスで返します。

ヒュー、ヒューヒューヒュー!!

ピー、ピー、ピー、ピー!!

気がつけば、みんなが2人を取り囲んでいました。

「幸せにな」「幸せにね」

それから、2人は手をつないで、2人の家に帰り、いつものように食事をして、あったかなベッドでくっついて眠りました。


おしまい


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ありがとう

2019-10-18 16:46:38 | 大好きなあなたへ(詩)
ありがとう
あなたといると
とってもあったかな
気分になる

生意気だし
言うこと聞かないし
だけど甘えん坊で
そこが可愛かったりして

妄想大好きなママだって
言われちゃうかもしれないけど
あなたがお嫁に行く日を
想像したりするのよ?

きっとパパ、泣いちゃうかな
プライド高いパパのことだから
ママのいないところで
ひとりでね

まだまだ先のことだけど
これから少しずつ
私たちから旅立っていくのよね

一緒にする料理が好き
一緒に作るケーキやパンが好き
あなたと過ごす時間が好き
ありがとう
私といてくれてありがとう

あなたのベター・ハーフと一緒に
旅立つ日まで
あなたのこと見守らせてね

あなたを守るって決めた
あの日からずっと
あなたからいろいろなものを
もらっている気がする
ありがとう・・・
本当にありがとう

にじいろのようせいとうさみくん

2019-10-14 16:06:41 | 小さなおはなし
むかしむかし、あるところに大きな森がありました。

夏休みのある日、1人の女の子が森の中をお散歩していると、女の子のしんちょうの半分くらいの、小さな、小さな、小屋を見つけました。

「小人さんの家かしら」

女の子は思うと、ドアをノックしてみます。返事はありません。

「おじゃましまぁす」

女の子はドアを開けて、はいつくばって入りました。中の天井は女の子のしんちょうより少し高いくらいだったので、女の子はホッとしました。

中を見回すと、小さなテーブルにいす、小さなお皿やカップもあります。

ほかの部屋にいくと、小さなふかふかのベッドがみっつ、あります。

「なんだか、つかれちゃったわ」女の子はつぶやくと、ベッドをまくらにして、おひるねしてしまいました。

さてさて。しばらくして、家に住む小さなうさぎが帰って来ました。

そして、びっくり!人間の女の子がベッドでねています。

(なんてかわいい子なんだろう)

うさぎさんは思いました。

起こそうにも、うさぎさんには女の子に声をかけることができません。言葉がしゃべれないのですから。

うさぎさんが困っていると、そこににじいろの羽根をもったようせいさんがあらわれました。

ようせいさんは言います。

「あなたの、3つのねがいを叶えるためにやってきました。願いごとをいってごらんなさい」

「ぼくを人間のすがたにしてください」うさぎさんはようせいさんにたのみました。

ようせいさんがステッキをふると、たちまちうさぎさんは12さいくらいの男の子になりました。

ようせいさんにお礼を言うと、男の子になったうさぎさんは眠る女の子を抱いて、大きな木の下に連れて行きました。

「起きて!起きてくれよう!!」男の子は女の子をゆさぶります。

「う・・・う~ん。だれ?」女の子が目を覚ましました。

「えっと・・・うさみ ただしっていうんだ。君は、こんなところで何をしているの?」

「う~ん。思い出せない」

(えっと、確か、お散歩をしていて・・それから・・・?)

「とりあえず、家に帰るわ」

「送っていくよ。ここは森の中だし、迷いやすいから」うさみくんがやさしく言います。

「ありがとう。おのえちょうなんだけど」

「だったら、こっち」うさみくんは、女の子の手を自然に引いて歩きだしました。

「あのね、あたし、ひろせ うらら。小学校6年生。うさみくんは?」

「ぼくも、たぶん、同じかな」

「たぶん?」うららちゃんは、ふしぎそうに聞き返します。

「じゃなかった、同じ小学校6年生。引っ越してきたんだ」

「また、会える?」うららちゃんは、うさみくんにふしぎなみりょくを感じていました。

「あした、朝9時に、森の入り口の木の下で」うさみくんが笑顔で言います。

「うん。楽しみにしてる」

うさみくんはうららちゃんを家に送り届けると、森にもどって行きました。


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うさみくんが、自分の家に帰ると、おとうさんうさぎとおかあさんうさぎがびっくりです。

「ほんとうにおまえなのかい?」

「そうだよ。ようせいさんの力で、人間になったんだ」

「ねるばしょはどうするんだい」おかあさんうさぎがしんぱいします。

そこへ、にじいろの羽根をもったようせいがまたあらわれました。

「おのえちょうの空き地に、3人の家を建てました。ひつようなものも、すべてそろっています。これが、2つ目の願いになります。そして・・・」

ようせいさんがステッキを振ると、おとうさんうさぎとおかあさんうさぎも人間になりました。

「これが、3つ目の願いでしょう?」

うさみくんはふしぎでたまりません。

「なんで、こんなによくしてくれるんだい?」

「おぼえていないの・・・?1か月前、わたしをくもの巣からすくってくれたことを」

やっとピンと来ました。

「あのときのアゲハちょうが君だったんだね」

「あのときは本当にありがとう。わたしのできるかぎりのおんがえしをするわ」

「とおりかかったのが、ぼくだっただけで、だれだって同じことをしたと思うよ」うさみくんはあわてていいます。

「そんなことない。あなたは心のやさしい男の子よ」

うさみくんは、てれてしまって、顔がまっかっかになりました。

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次の日の9時、うららちゃんは木の下でうさみくんを待っていました。たっ、たっ、たっ、とすごいスピードでうさみくんが登場。

「びっくりした。足、はやいんだね」

「いや、待たせちゃったから、急いできたんだ。僕の家はその先だよ。遊びにこない?」

「うん、うかがうわ」

2人で手をつないで、いろんな話をして・・・もうすぐで、うさみくんの家につきそうなところで、赤いスポーツカーがうさみくんめがけてすごいスピードではしってきました。

「あぶないっ!」うららちゃんは、うさみくんをつきとばしました。

「だ~ん」という音がしたかと思うと、うららちゃんがそのスポーツカーにひかれていました。スポーツカーは、そのまま走り去りました。

「うららちゃん、うららちゃん、うららちゃん・・・」

うさみくんは、叫びます。

近くにいた人が、きゅうきゅうしゃを呼んでくれました。

うららちゃんは、病院のしゅじゅつしつにはこばれます。

(なんで、ぼくは3つのねがいを全てつかってしまったんだ。うららちゃんの命を助けたいのに・・・ぼくにできることはないのか)

「大丈夫よ」ようせいがあらわれて言いました。「うららちゃんは助かるわ」

「ようせいさん・・・どうして」

ようせいさんの羽根の色はきらめくにじいろではなく、ぎんいろでした。

「わたしのにじいろの羽根をつかって、うららちゃんを助けたの」

「そんな・・・」

「だって、うららちゃんは体をはって、わたしの大好きなうさみくんを助けてくれたんだもの・・・大丈夫、少し修行すれば、また、にじいろの羽根をもらえるわ」

うさみくんの胸がじ~んとあつくなりました。

「ごめんね・・・ぼくはうららちゃんが大切だ」

わかっているわ、というようなひょうじょうで、ぎんいろの羽根のようせいさんはすがたをけしました。

しゅじゅつしつから、でてきたうららちゃんはまだ寝ていました。

「そうだ、うららちゃんのお父さんとお母さんにれんらくしないと」

昨日、うららちゃんから教えてもらっていたでんわばんごうにでんわをかけます。

すぐに、2人がやってきました。

「すみません、ぼくのせいで」うさみくんが頭を下げます。

「いや、むてっぽうなひきにげだったっていうじゃないか。君にけががなくてよかった。うららもね、いのちにべつじょうないし、すぐに歩けるようになるって」

「本当ですか?」

うさみくんの顔がかがやきました。

「もうすぐ、うららも目を覚ますだろう。うららのそばにいてくれるか?」うららちゃんのお父さんが言いました。

「はい」と言った、うさみくんの顔は、お姫さまを守る王子さまのようでした。

しばらくして、

「う、う~ん」うららちゃんが目を覚まします。「あれ?うさみくん?あたし・・・そっか、くるまにひかれて」


「痛みはどう?」うさみくんが心配げにききます。


「痛いは痛いけど・・・ねぇ、うさみくん、笑わないでね、あたし、にじいろの羽根をしたようせいさんを見た気がするの。あれ?ホントに見たのかな」

「きっとようせいさんが君を助けてくれたんだね。」

「・・・ばかにしてる?」

「してない、してない!」あわててうさみくんは言いました。「ようせい、信じるよ」

うららちゃんは、きょとん、として、「ようせいを信じる男の子もいるのね」って言った。


(うららちゃん、いつかぼくは言うことができるだろうか。ぼくが、本当はうさぎだということを。ようせいのまほうで人間に変えられたうさぎだということを。ようせいが恋をした、うさぎだということを。)


おしまい。

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なぎさちゃん5さい、初めてのおつかい  by 弥生花音

2019-10-07 13:11:03 | 小さなおはなし
あるところに、なぎさちゃんという女の子がいました。

なぎさちゃんは5さい、幼稚園の年中さんです。

なぎさちゃんのママは、そろそろなぎさちゃんにおつかいをたのんでみようかしら、と思っていました。

というのも、なぎさちゃんの家は、商店街のなかにあり、おつかいはそんなにむずかしくなさそうだったからです。

その日、なぎさちゃんのママはロールキャベツを作ろうとおもっていました。

「なぎさ、やおやさんにいって、キャベツを買ってきてくれない?」

なぎさちゃんのママはいいました。

(キャベツ・・・うすみどりいろで、ボールみたいな形をしているやつよね)

なぎさちゃんは思いました。

「分かった、買ってくる」

なぎさちゃんは、150円と買いものバッグを持って、元気よくでかけました。

(キャベツ、キャベツ、似てるけど、レタスじゃなくて、キャベツ・・・)

心の中でなぎさちゃんはとなえながら、歩きます。

5分くらいでやおやさんにつきました。

「へい、らっしゃい!!なぎさちゃん、おつかいかな?」

やおやのお兄さんは元気に声をかけます。

「はい・・・うんと・・・なんだっけ。」

なぎさちゃんは、キャベツ、ということばをわすれしてしまったようです。

目のまえに、「レタス 135円」というねふだを見つけました。

(うすみどりいろで、ボールみたいな形をしていて・・・うん、これだわ)」

「レタス1こ、ください」

あらら・・・なぎさちゃん、似てるけど、レタスじゃなくてキャベツですよ!

「あいよ」

お兄さんは、レタスとおつりの15円をわたしてくれました。

「ママ、ただいま!レタス、買ってきたよ」

なぎさちゃんは、おつかいができたうれしさで顔を赤くして言いました。

(えっ、レタス?キャベツをたのんだのに・・・まぁ、いいわ)

なぎさちゃんのママは、すべて分かったように笑いました。

「ありがとう。これで、おいしいサラダをつくろうね。なぎさもレタスをちぎるの手伝ってね」

「うんっ」

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「ただいま~」

なぎさちゃんのパパが帰って来ました。

「おかえり~、パパ!」

なぎさちゃんとママが返事をします。

「今日は、ロールキャベツだったよなぁ」

つぶやいたパパに、ママが、しぃ~っ、のしぐさ。

「ロール・・・キャベツ?ハンバーグじゃなくて?」

なぎさちゃんが、ビックリして言いました。

「あっ、そうか・・・ママは、キャベツ、って言ったのに、なぎさがレタスを買ってきちゃったから・・・」

なぎさちゃんは泣きそうになりました。

ママが、やさしく言います。

「あのね、ママが言ったのは、たしかにキャベツだったけど、いちばん大切なのは、なぎさがお店でお買い物できたということよ」

ママがなぎさちゃんをぎゅっと抱きしめます。

「お手伝いしてくれて、ありがと、なぎさ」

「ママ、ありがと。ごめんね」

「おいしそうなハンバーグじゃないか。なぎさがまちがってくれたおかげて、こんなおいしそうなハンバーグ食べられるなんて、パパは幸せだな」

パパが言いました。

「パパ、サラダもほめてよ。なぎさがレタス、ちぎったんだよぉ」

なぎさちゃんがおちゃめに言います。

「うん、おいしそうだ。たべやすそうな大きさだな」

パパがなぎさちゃんを抱っこします。

なぎさちゃんの初めてのおつかいは、ちょっと失敗したけれど、おわりよければすべてよし。

今日の夕食のテーブルは、いつもにまして、おいしく明るく楽しいものになりました。


おしまい


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