日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

世界イタリア料理週間:トークイベント「食とアイデンティティ」でカルミネ・アバーテ氏の朗読を聞きました(2020.11.17)@イタリア文化会館

2020年11月18日 | イタリアの本・絵本・雑誌
世界イタリア料理週間:トークイベント「食とアイデンティティ」でカルミネ・アバーテの朗読を聞きました(2020.11.17)@イタリア文化会館

カルミネ・アバーテ氏の日本語翻訳版5冊めとなる「海と山のオムレツ(La frittata mare e monti)」の出版記念を兼ねて開かれたこの「食とアイデンティティ」トークイベントは イタリア文化会館のエキシビションホールで行われ zoomでの同時配信(ハイブリッド開催)されました
館長はじめ錚々たるメンバーがすぐそばにいらして緊張しました

アバーテ氏の自伝的短編集 il banchetto di nozze e altri sapori (Mondadori, 2016) が この10月に新潮クレストブックスより『海と山のオムレツ』(関口英子訳、新潮社)として刊行されたことを記念し 著者のカルミネ・アバーテ氏が 中国人作家で日本語で作品を発表されている楊逸さんと「食とアイデンティティ」をテーマに対談しました 司会は翻訳を担当された翻訳家の関口英子氏でした 

アルバレシュ語は話者が8万人しかいない少数言語だそうです アルバニア系イタリア人のアバーテ氏は この少数言語アルバレシュ語の話されるアルバレシュ民族集団(etnia arbëreshë )のひとつであるカラブリア州クロトーネ県の小村カルフィッツィ(Carfizzi )で育ち 小学校でイタリア語を学び 長じてハンブルクでイタリア語教師そして作家となり 今は故郷カラブリアとドイツのちょうど真ん中に位置するトレンティーノで暮らしています

3年前にアバーテ氏が来日された時のイベントで この「海と山のオムレツ」を朗読されたことがきっかけで翻訳本の出版が決まり それがこの度ようやく出版されました 

作家の楊逸氏より この本の読みどころの紹介がなされ この本のイタリア語版を購読レッスンで読み 日本語版もイベント前に買って読んでおいたのでよくわかりました まさに自伝的短編集で読むごとに作家の人生が紡がれてゆきます

続きアバーテ氏により スクリーンを通して 「クリスマスの十三品のご馳走(Le tredici buone cose del Natale)」を朗読していただきました クリスマスの料理がたくさん出てくるこの小品もイタリア語で読んでおけばよかったな!!

引き続き司会の関口先生からの質疑応答です クリスマスの料理は13品と決まっているのですが 何皿も多めに作っていたそうで 大切なのは「一緒に食べる」こと 喜び(contentezza)の味を分かち合うことなのですね

そして「ゆっくり食べること(mangiare con lentezza)」が大切なのですね...  作品の中にも 出稼ぎ先のハンブルクから戻ってきたパパは 家族との食卓の時間をできるだけ引き延ばそうとしていた という記述がありました 子供たちも いつも一緒に過ごせないパパと少しでも一緒にいたくて...

また 婚礼の宴(il banchetto di nozze)にも書かれていますが 子どもたちを決して宴の席から外さず 共に祝うのですね 
家族とともに婚礼の宴で聞いた物語を子供心に忘れずに 長じて作家となっていったのですね 

この本からは 食事の音や香りも立ち上ってくるような気がしますが 食事は人生の一部であり 作家はその人生を語るのが使命であり なので本の中での食物の役割は重要なのですね 

様々な土地で生きてきた移民作家でもあるアバーテ氏の「足し算の生」 特にあげられる絶品料理は 「polenta con guia」 辛いひき肉の詰め物とポレンタの料理で 北と南の味の融合 そして中国出身の楊逸氏は 「絶品料理は 次に食べる一品」と語ってくださいました

次は言葉についてです 表現する時の母語の役割とは? については 母語であるアルバレシュ語は 「lingua del cuole(心の言葉)」であり 第2言語であるイタリア語は パンを得るための言葉で それぞれはぶつからずにハーモニーを奏でているとのこと

物語の前に言葉があり アルバレシュ語で夢を見てもすぐにイタリア語に訳すのですが 母語で書かないために距離が生まれ さらには今住んでいるトレンティーノ方言も含めて 足し算で書いてゆけるとのこと

対して楊逸氏は 母語(中国語)はアイデンティティであり心地よいが 自分をとじこめてしまう また文化の違いもあり 例えば中国では「鍋を売ってでも子供を大学に行かせる」といいますが 日本では「着物を売ってでも」となるのですね 言葉ごとに一つの文化 一つの世界と出会ってゆくのですね

また もし北イタリアやドイツで生まれていたのであれば 自分は作家にはなっていなかっただろうし なっていたとしても違う作家になっていただろうとの言葉に 「その土地が物語を書かせている」との言葉の重みを再確認できました


会場からの質問では 3年前にアバーテ氏の本にサインをしていただいたという女性が その後一念発起してイタリア語を学ばれ しかもアバーテ氏の故郷であるカルフィッツィ村を訪れたとのこと
会場からは驚きと感動の拍手が... 作家ご本人は感無量といった面持ちで.. 部数や賞よりもそのような読者との出会いが何より嬉しいと 丁寧に質問に答えてくださいました

私も若い頃同じようなことをしてベルリンに行きましたので よくわかります(80年代でしたので聖地巡礼のはしりでした) その作家は色々なインタビューで こんなファンがいるんだよ...と語ってくださっていたことをあとになって知りました 

小さな会場だったからか アットホームな雰囲気で イタリア文化会館のすばらしさを身近に感じられて オンラインでは直接会えない語学仲間とも会えて 行ってよかったです💛

イベントは こちら

素晴らしいイベントを開催してくださいましたイタリア文化会館様に心よりお礼申し上げます 初めてオンラインですがカルミネ・アバーテ氏に会うことができ 感無量です


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