本当に怖い肥満と5つの病気(猫編)

動物の健康は食餌(食事)と運動からと言われるように、食餌の質やバランスが崩れると、様々な病気の原因にもなります。猫の場合特に、加齢と共に現れやすいのが肥満です。肥満は呼吸器や心臓に大きな負担をかけると共に、様々な病気の要因となると言われています。

猫が肥満になると、高い所への登り降りが苦手になったり、ジャンプが低くなったりするなど、運動能力自体が低下してきます。このため体を動かす機会が減り、関節等の可動域が狭くなるため柔軟性も低下します。
運動能力、柔軟性が低下すると、動く事自体が億劫になり、さらに運動不足に拍車がかかり、さらに肥満傾向が強くなるという悪循環が待っています。人間も同じですが、運動能力が低下し、柔軟性も低下すると、若い頃に普通に出来ていたことができなくなってきます。このため、同じような事をやった場合でも、怪我をしてしまう確率があがります。

また、肥満が進むと疲れやすくなり、心臓や呼吸器にも負担がかかるだけでなく、糖尿病や肝臓の病気にもかかりやすくなります。さらに、体重増加による関節や靭帯への負担増に起因して関節炎などが生じることもあります。付け加えて、麻酔が効きにくくなるという傾向もあるそうで、手術が必要になった時などに、治療が困難になる場合もあるそうです。

肥満の主な原因は、高カロリーな食餌と運動不足、そして栄養の偏りと言われています。野生動物は本来、必要なカロリーを摂取できずに痩せることはあっても、カロリー過多により太るという事は無いはずですが、飼育環境下では給餌を自分でコントロールできない事から、肥満に陥る事も少なくありません。また、避妊や去勢手術によってホルモンのバランスが崩れた場合などにも、肥満傾向が高まる事があるようです。避妊や去勢手術を受けさせる時には、手術時の体重を記録し、その後の体重変化に気をつけるようにしましょう。

1.糖尿病

肥満を原因とした病気の代表格といえば、糖尿病です。糖尿病にかかると、様々な病気を誘発する事にもなりかねないので、特に注意が必要です。

症状
糖尿病の最も特徴的な症状は、多飲多尿です。血糖値が高くなると、その糖分を尿と一緒に排出しようとします。このため、尿の量が多くなります。これに対して、体は、尿によって排出された水分を補おうとするため、水分を多くとるようになり、多飲多尿となります。放出した水分を補おうとするための水分補給ですから、水分の補給量が足らなくなってしまうと、脱水症状に陥る危険性もあるため、注意が必要です。

糖尿病は、症状が進むと、嘔吐、下痢、黄疸などの症状の他、食欲が無くなることにより、衰弱していくという傾向があります。嘔吐や脱水症状が見られる場合は、放っておくと昏睡状態になり、命にかかわります。
肥満猫の場合、急激に食欲が低下する要因として、内臓系の病気を疑うことができます。例えば、肝臓の病気などです。また、人間と同様に、糖尿病にかかると感染症になりやすく、膀胱炎、外耳炎などを発生する場合もあります。

原因
糖尿病は、ホルモンバランスの崩れによって、血糖値の制御ができなくなる事によって発病します。具体的には、すい臓で作られるインスリン(インシュリン)というホルモンが、肥満やストレスにより減少したり、その効果が薄れたりする事により生じます。

治療
インシュリン治療:空腹時の血糖値と尿中の糖の値を測定し、糖尿病と診断された場合に行われる治療です。皮下注射によりインシュリンを投与します。
食餌療法:インシュリン治療と同時に、カロリー制御や、食後の血糖値変動を抑えるための食餌療法も行われます。なお、急激なダイエットは脂肪肝が発生させる原因にもなるので、獣医師と相談した上で、カロリーコントロールしていくようにしましょう。

人間の場合、インシュリン治療は、一生必要になる場合が多いですが、猫の場合、徐々にインシュリンの量を減らして最終的には不要になる場合もあります。

予防
糖尿病の予防で最も重要なこととは、肥満を防止することです。猫が若いうちから食餌の質と量をきちんと管理し、運動がしやすいような環境を整えましょう。また、猫がストレスを溜めないような配慮も必要です。
通常の生活を送るなかでは、猫の事を一番に考えるという生活は難しい場合も多いかと思います。しかし、飼い猫は自分で食餌を管理する事ができません。飼い主の責任として、愛猫の体調管理には気を配ってあげるようにしてください。

栄養バランスが崩れるとかかりやすいその他の病気

上では、肥満や栄養バランスの崩れによって生じる病気の代表格として、糖尿病について詳しく説明しましたが、肥満や栄養バランスの崩れによって生じやすい病気は他にもあります。以下に4つ(糖尿病と併せて5つ)ほど、代表的な病気について紹介したいと思います。

2.黄色脂肪症

不飽和脂肪酸の過剰摂取が原因。不飽和脂肪酸の過剰摂取は、青身魚の食べ過ぎにより生じる場合が多いと言われています。猫の腹部や胸部に溜まった皮下脂肪が酸化して変性し、炎症を起こします。偏食をさせず、普段からバランスのとれた食餌を与えるように心がけましょう。

3.ビタミンA欠乏症

偏食が原因。猫は体内でビタミンAを作ることができません。このため、ビタミンAは全て、食餌から摂取しなければなりません。しかしながら、偏食しがちな猫はビタミンAを摂取することが出来ない場合も多く、ビタミンAが不足しやすい傾向にあります。ビタミンAが足りなくなると、皮膚が乾燥してフケが出やすくなったり、抜け毛が増えたりするといった症状が現れます

4.ビタミンB欠乏症

栄養バランスの偏りが原因。猫はもともとビタミンB群を大量に必要としているため、栄養バランスが偏り、ビタミンB群が十分に摂取することができなくなると生じやすい病気です。初期症状は食欲不振、軽い嘔吐などですが、病気が進行すると瞳孔が開きがちになり、歩くときにフラフラする、立ちあがれなくなるといった神経症状が出てきたりします。

5.上皮小体の異常

カルシウム不足、またはリンの過剰摂取が原因。首のあたりにある上皮小体が過剰に働き、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出す病気です。骨の強度が弱まり、変形が生じたり、脆くなったりします。このため、骨が変形してしまい、歩き方がおかしくなったり、全身に痛みが生じ、動きたがらなくなったり、不機嫌になったりする傾向があります。普段からカルシウムとリンのバランスの取れた食餌を心がけましょう。