病気

子どもの斜視の原因や検査・治療について解説します【斜位との違いは?治るの?手術が必要?発達障害との関連は?】

斜視の原因や検査・治療について解説します

健診でよく聴かれる斜視について今回は解説していきたいと思います。

斜位との違い、斜視は治るのか、手術が必要?発達障害との関連などの疑問についても回答していきます。

斜視とは

通常視線は両眼とも同じ方向に向かっています。

斜位とは普段は両眼とも位置は正常ですが、片眼ずつ調べると視線がずれている状態のことをいい、軽度の斜位は多くの人に見られます。

斜視とは眼の位置が正常でない状態のことで、右と左眼の視線が違う場所に向かっている状態、つまり眼位の異常に起因する両眼視の異常が加わったものです。

なぜ斜視が問題なのか

視覚は、光覚、色覚、形態覚、動態覚、立体覚の5つの感覚から構成されています。

このうちの立体覚は立体視とも呼ばれ、生物が進化の過程において視覚器を左右に2つ獲得し、立体視できる個体の方が、生存に有利であったため受け継がれてきたと考えられています。

両眼視機能は、両眼で同時に見る同時視と左右の像を一致させる融象、さらにその上位の立体視により成立しますが、これら3つをWorthの三要素と呼びます。

この両眼視機能は生後3~4カ月から発達が始まり、2歳には成人レベルの80%、5歳で発達が完了す る感覚です。

このように視機能が急激に発達する乳幼児期に斜視があると両眼視機能の発達を阻害し両眼視機能不全を引き起こしてしまいます。

斜視の分類について

眼の位置のずれによる分類では、主に内斜視、外斜視、上下斜視などがあります。

内斜視  
日本弱視斜視学会HPより https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus5

・乳児内斜視:斜視角が大きく斜視弱視を伴いやすいです。生後6カ月以内に起こる斜視で、ある程度斜視角が測定できる早めの時期に手術を行います。 

・調節性内斜視:遠視が原因で起こる内斜視で眼鏡装用により改善します。

外斜視  
日本弱視斜視学会HPより https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus5

生後早期の外斜視は頻度が低いですが症例によっては頭蓋内疾患などの除外が必要となります。

この場合は乳児内斜視と同様に早期の手術を行います。

頻度が高い外斜視に間欠性外斜視がありますが、これは正位の時と外斜視の時がある斜視で、近見眼位は正位でも遠見眼位や疲労時に外斜視になる場合が多いです。

両眼視機能が正常範囲の場合は小学校入学前後に手術を受けます。

 上下斜視
日本弱視斜視学会HPより https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus5

正面視において上下に偏位がある斜視で比較的頻度は低いとされています。

横を見たときに眼が上方に偏位する下斜筋過動症や、斜頸を認め患側に頭を傾けると上下偏位が増す上斜筋麻痺がこの範躊に入る場合があります。

斜視の治療は

斜視の治療は種類や年齢によって異なりますが治療目標は大きく3段階に分かれます。

1)両眼の視力を揃える

斜視があると偏位しやすい方の眼が視力発達不全(弱視)になりやすいので、視力発達に左右差ができないよう、各眼30分/1日で交代遮閉(交代アイパッチ)を行います。

すでに視力の左右差を認める場合は、健眼遮閉による治療から始めます。

正常範囲を超え、視力発達を阻害するような遠視や近視や乱視があれば、眼鏡で屈折矯正を行います。

2)眼位を矯正する

遠視が原因の調節性内斜視は、遠視矯正の眼鏡で眼位を矯正可能です。

しかし眼鏡による眼位矯正を試みてもなお、斜視が改善しない場合などは手術が考慮されます

手術適応、術式、施行時期は斜視の種類によって異なります。

3)両眼視機能の経過観察を行う

上述の治療の後に感受性期内に両眼視機能の獲得を目的とした経過観察を行います。

この経過観察中に成長に伴う屈折や視機能の変化が生じた場合はそれに応じた治療を適宜行っていきます。

偽斜視とは

偽斜視とは眼球偏位がないのに見かけ上、斜視のように見える状態をいいます。

乳幼児期に頻度が高いものに偽内斜視があり、偽内斜視は内眼角贅皮(上まぶた目頭を覆う部分の皮膚)により、あたかも眼が内斜視のように見えるもので、眼の間の鼻をつまむことで斜視でないことがわかります。

この場合は斜視ではないので治療の必要はありません。

ですが、これも実際には判断が難しいので医療者に相談しましょう。

発達障害との関連について

軽度の発達障害のある子どもでは視知覚の遅れを伴うものが多いとされています。

具体的な例でいうと、黒板の文字を写す時の視線移動と焦点合わせ、球技のときに人やボールを追視する、文章を読むときの正確で滑らかな視線移動が苦手という事と関連が深いと考えられます。

原因が眼疾患によるものか発達の遅れによるものか鑑別は難しいですが、視知覚の発達を妨げる要因を排除し、その力を伸ばすために眼疾患の有無を確認し、異常が認められれば適切な治療を行った上で訓練をすることが望まれます。

まとめ

このように斜視の種類によって眼鏡の装着や手術など治療法に違いがあります。

基本的には治療をすれば治りますが、視機能に影響する関係から早い段階での治療が必要となることがあるので、斜視を疑ったら眼科や小児科に相談しましょう。

参考文献
  • 藤巻拓郎: 小児科臨床, Vol71, 2215-2217, 2018
  • 日本弱視斜視学会ホームページ https://www.jasa-web.jp/
  • 清水みはる:軽度発達障害児における眼疾患の検討より.日本視能訓練士協会誌.第35巻 (2006)
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病気や育児に役立つ情報を紹介する小児科医です