絵本とむかしばなし

小学校で絵本の読み聞かせや昔話のストーリーテリングをしています。楽しいお話、心温まるお話をいろいろご紹介していこうと思います。

『とらたとまるた』

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のびやかな発想と遊び

  子どもの遊びの世界をそのまんま絵本にしたような1冊です。

とらたとまるた (福音館の幼児絵本)

中古価格
¥149から
(2020/11/20 15:09時点)

読み聞かせ目安  低学年  3分

あらすじ

広っぱに丸太が1本ありました。

 

とらの子とらたがやってきて、

 

「あ、うまだ」

 

というと・・・、

 

「そりゃ、もちろん わたしは うまだ」

 

丸太は馬になって、とらたを乗せ、駆けだします。

 

しばらくいくと、川があり、丸太はカヌーに!

とらたはカヌーに乗って川下り。

 

でも・・・、カヌーは岩にぶつかってしまいます‼

すると・・・、丸太はすばやく橋になり、とらたを向こう岸に渡してくれました。

 

そこへ、とらこがやってきて、丸太は今度は汽車になり、2人を乗せて走ります。

山をまわって、トンネルくぐって。

広っぱにもどって、

 

「しゅうてん!」

「さようなら」

 

また明日、あそぼうね!

 

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読んでみて・・・

子どもの自由な発想と遊びを、そのまま絵本にしたような1冊です。

 

何の変哲もない1本の丸太でも、子どもにかかれば、たちまちいろんな物に変身!

馬、カヌー、橋、汽車・・・。

次々に姿を変え、とらたを楽しませます。

途中で遊びに加わったとらこも、何の抵抗もなく、ごくごく自然に、とらたと丸太の遊びの仲間入り!

 

自由で伸びやか、何の屈託もない、健やかな子どもの遊びの世界です。

保育者として、長年子どもに寄り添ってきた、作者の中川李枝子らしい、子ども心の捉え方が、生き生きと現れている絵本だと思います。

 

とらたが、「あ、うまだ」といえば、丸太は「そりゃ、もちろん わたしは うまだ」。「カヌーに のろう」といえば、「そりゃ、もちろん、わたしは カヌーだ」。川でぶつかりそうな岩を見て、「あ、かいぶつ。たすけて!」といえば、「わたしは、まるたの いっぽんばし!」

丸太が、即座にとらたの発想と言葉に反応し変化するさまは、子どもの自由な発想を、まったく遮らず、さらに生き生きと伸ばしてくれます。

子どものファンタジーの世界を、外側から傍観しているのではなく、いかにも寄り添い、内側から見ている感じです。

 

白い余白の多い画面は、細いけれどもスピード感のある線が、お話のまっすぐ進んでいくさまをよく表しています。

濁りのない青、黄色、赤、茶色だけのシンプルな絵も、すっきりと鮮やかで、子どもの心の濁りなさを表しているようです。

単純な絵ですが、とらたととらこの表情も豊か!

楽しい遊びに夢中になっている、子どもそのものといった感じです。

 

そして、自由な発想を繰り広げ、その場その時、それぞれの遊びを満喫したあとは、とらたもとらこも丸太も、実にあっさりあっけらかんと、

 

「さようなら」

「さようなら」

「さようなら」

 

でおしまい。

こんなところにも、子どもの屈託のなさがよく現れています。

「今を生きる」子どもそのものです。

 

子どもの日常をよく観察し、寄り添った者の、暖かな眼差しが感じられる、楽しい絵本だなと思いました。

 

短くて、あっけらかんとした絵本なので、読み聞かせのとき、じっくり読み込む絵本などの後に読むと、ちょっと気分を解放できていいかなと思います。

長い本との組み合わせに、ぴったりの1冊だなと思いました。

 

今回ご紹介した絵本は『とらたとまるた』

中川李枝子文 中川宗弥絵

1980.1.1  福音館書店  でした。

とらたとまるた

中川李枝子/中川宗弥 福音館書店 1982年09月
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