鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ピストン堀口物語」1~3

ピストン堀口物語 1

ピストン堀口物語 1

ピストン堀口物語 2

ピストン堀口物語 2

ピストン堀口物語 3

ピストン堀口物語 3

梶原一騎、最初で最後の作品」と銘打たれている。

梶原一騎は(自伝的作品である「男の星座」を信用すれば)格闘技ものの雑文屋から始まった文筆業は少しずつ認められて「鉄腕リキヤ」や「スポーツマン一刀斎」の絵物語の原作を手掛けるなどに到ったが、その後低迷し、バーの経営等をしたもののうまくいかず、自分には文筆しかないと改めて決意、再起第一作が東京中日に連載された「ピストン堀口血戦譜」(1959年)であった。その後引き続き東京中日に連載された「力道山物語」が講談社少年マガジン編集部から注目され……というわけで、「最初」の意味はこういうこと。

またこの作品は梶原一騎の最晩年の1986年に影丸譲也よって劇画家され、中日スポーツに連載された。だから「最後」。一般に最後の作品は「男の星座」だと言われるが、本作も同時期に連載が始まっており、最晩年の作品であることは間違いない。

ピストン堀口にはあまり興味はないが、そんなわけで一度は読んでみたいと前々から思っており、全三巻と比較的短いこともあって、一気買いをしてみた。

本作は、梶原一騎がどの程度関わったのか謎である。というのは、作品を見る限り、彼自身が過去の文章作品をもとに漫画原作としてリライトし、毎回漫画家に原稿を渡していたとはとても思えないからだ。漫画家が文章作品を元に自分で漫画化したか、編集者あたりが一枚噛んでいるのかはわからないが、梶原一騎は関わっていないのではないか。

連載が始まった時は、梶原は健康を取り戻し仕事を再開していたので、関わっていないのも変ではあるが、何しろストーリーをただ絵で追っているだけで、細かい描写もないし、盛り上がりもない。これでは感動しようがない。もし梶原が関わっていたとしたら、彼の才能はもはや枯渇したと判断せざるを得ないが、同時期の「男の星座」の充実ぶりを考えるとそれも不自然である。

真相は謎だが、事実はひとつ、この作品は面白くない!


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(2020/3/30 記)