映画レビュー/概要

381本目 007は二度死ぬ/You Only Live Twice
1967年
監督:ルイス・ギルバート
主演:ショーン・コネリー
評価:★★★

あらすじ
米ソ間が一触即発状態となった。
イギリス諜報機関、MI6はジェームズ・ボンドを日本に派遣されることに。
ボンドは敵を欺くために、マシンガンで撃たれて死んだふりをした。

その後、秘密裏に日本へと向かったボンドは、東京に潜む悪の組織と戦うことになる。
だがその裏には、スペクターの存在があった……。


目次
・ついに、007日本へ
・そういう場所ちゃうで
・折角の悪役なのに



ついに、007日本へ

色んな国へと旅立っては悪の組織と戦ってきたジェームズ・ボンド。
諜報機関という枠組みからはとっくに外れているような気がしないでもないその活躍ぶりですけど、今回は若干旅行を楽しんでいるのでは?と感じてしまう側面も大いにあり。

シリーズ中でも屈指の色物感なんですけど、それを引き立たせているのはやっぱり日本の描写ですよね。日本人だから尚更感じてしまうだけかもしれないですけど。

個人的に嬉しいのは、若林映子が登場していること。
彼女は、東宝怪獣映画で欠かせない存在だったと言っても過言ではない女優さんです。
世界的に有名な映画に堂々たる登場ということで、日本人としては嬉しい限り。

そんなことを尻目に、ひっそりと登場し始めるスペクター。
いろんな意味で異色すぎる007、皆さんにはハマりますかね?

そういう場所ちゃうで

そもそもの話ですけど、007シリーズはシリアスにいくべきか、それともコメディありきか?というのは色んなところで議論されたことでしょう。

実際、作風というのは時代、演者、監督によって変わっていくものですし、ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドはシリアス真っ只中。
どんなボンドが好きであろうとも、それを否定することもなく肯定もしない。それが一番戦争を起こさないために必要なことではありますが、そう言いつつ火種を投下していくのが鳴海の一人でキネマ。

どう考えてもおかしいこの日本、そして旅行に来たジェームズ・ボンドに対してツッコミを入れることもファンであるがゆえのこととご理解いただきたい。

まず、海外から見た日本というのは
『スシ、スキヤキ、ニンジャ、ゲイシャ、サムライ』
これ以上でも以下でもないのだということが証明された作品である。

・日本では温泉で水着の美女が背中を流してくれる
・日本では忍者、くノ一が暗躍している

他にも、いつものわけわからんカタコト日本語広告やらお店が並んでたり、そんな生活しねぇよっていう描写が挟まるんですけど、ここまで異世界すぎると逆に面白く思えてくるのもまた映画マジック。

だがこれは007の映画。
そんな異世界ジャパンを楽しむことを目的としてわざわざ観ているわけではない。

一周回って面白いと感じた刹那、「いやまて、これは007映画だぞ。なんでこんな神前式なんぞを見せられている…?」と怒りが湧いてくる。

その手のおかしな描写が好きな人にとってはかなりの酒の肴となるんですが、真っ当にスパイ映画を見たい人にとっては横道に逸れまくっていて困ることこの上ないでしょう。

折角の悪役なのに

どんなシリーズでも、アクション映画では悪役がつきものです。
魅力があればある程その作品の魅力は大きく膨れ上がるもんです。

007シリーズのラスボス的な存在は、悪の組織スペクター。
その頭領であるブロフェルドは、謎の存在として007を追い詰めるヤバいやつ、でしたが、いかんせんこの作品自体が別の次元に迷い込んでしまった007を観ているような感覚になるので、真面目に悪役を見りゃいいのかよくわからなくなってしまいます。

米ソを潰してしまえ!世界を征服するのはこの私である、という筋をもっと濃く深く描いてほしかったもんですが、シリアスとギャグの間をいったり来たりしていたこのシリーズが、悪役を濃く深く描くというのは大層難しいもんで……。

監督も代わる代わるだし、それを一筋に描ききるというのは無理がある話だったかもしれませんけど、ブロフェルドには昨今のサノス的な立ち位置になれる可能性があったことを考えると、めちゃめちゃ勿体なかったなぁと。




「いや、ボンドは生きている。  --ブロフェルド」

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