利用者の行動にすべてのヒントがある!?

「介護」は相手に寄り添う(合わせる)こと!?


介護に関する研修を受けた人なら、「寄り添い」という言葉が何度も出てくることを覚えているでしょう。

また、介護の仕事に興味を感じながら、まだ研修を受けていない人も「寄り添い」という言葉に注目しましょう。

そもそも介護における「寄り添い」とは、利用者の視線に立つことを指しています。

別の記事でも紹介していますが、介護をより理解するにはいくつもの視点に立てることが欠かせません。

その1つが利用者の目線というわけです。

しかしながら、介護士として働く人の中にも、利用者の目線に立てない人がいます。

例えば、「10時にトイレに行っています。だから、まだ行かなくても大丈夫ですよ!」という介護士は、利用者に寄り添えているでしょうか?

こみちとしては、少し疑問を感じる言葉です。

なぜなら、「トイレに行きたい」という行動を起こした利用者には、「自主性」や「生活歴」、「身体的な感覚」など、さまざま芽生えが感じられるからです。

もっと具体的に言えば、仮にトイレに行って用を足せなかったとしても、自身の意思で行動した事実は残ります。

さらに、出ないケースよりも、我慢していたケースの方が断然多いのも現実です。

「普通、一回トイレに行ったら、数時間はトイレに行かない」と考える人は、自身の目線で物事を判断しています。

年齢的な変化や季節による影響など、個々によって同じとは限らない状況を、「自身の経験」だけで決めているのです。

同様のケースで、利用者がテーブルとイスの感覚を広めに取りたがることがあります。

介護士目線で言えば、広くすることで飲食時の食べこぼしが起きやすいと考えます。

そこで、「もっと狭めないとこぼすでしょう!」と言ってしまうとどうなるでしょう。

もちろん、「そうだね」と素直に従ってくれることもあります。それは、利用者が介護士の視点に立って判断してくれたからです。

「いやだ! 前に行きたくない!」と手で突っ張り抵抗する利用者を見て、さらに語気を強める介護士もいるでしょう。

しかし、広めにしたい本当の理由は何でしょうか?

それを考えることが「寄り添い」であり、利用者の立場になることです。

こみちなら、こんな風に考えます。

狭いか広いかを決めるのは利用者自身で、介護士が勝手に決めるべきものではないのです。

「じゃあ、こぼしたらどうするんだ!」という介護士がいるでしょう。

こみちは何度か失敗すれば良いと思います。

こぼしてしまうことで、利用者自身が選んだ選択がうまくいかなかったと分かればいいのです。

もちろん、翌日には記憶が曖昧になる人もいるでしょう。

そんな人には、一旦利用者の希望を聞き入れ、しばらくしてから「もう少し前に行きましょう!」と促してみましょう。

「どうして?」と聞かれれば、「食べにくいと思うよ」と説明します。

意外と「そうなの?」という感じで利用者は従ってくれます。

車イスに乗っていた利用者がモゾモゾと立ち上がりそうになる時

「座ってください!」そう言って利用者の両肩を押さえつけてはいけません。

自立がまったくできない場合には、それに応じたサポートが必要ですが、ある程度立位できるなら、「どうしたの?」という声かけをしても遅くありません。

しっかりと理由を説明できる利用者なら話は早いですが、多くの場合は何かモゾモゾとしています。

こみちが思うのは、オムツやリハパンを汚してしまったケースです。

利用者自身も下着の中が気持ち悪いので、何となく気になります。

しかし、自分では何をどうすればいいのか分からないので、その場に立ち上がってしまうのです。

「トイレに行ってみる!?」

お尻の辺りから臭いを確認して、利用者に問いかけます。

明確な返事をしなくても、トイレに向かうと素直に従ってくれます。

つまり、落ち着きがないのではなく、何かのアクシデントが起こったから、利用者は立ち上がったのです。

この「原因」を見つけることが、「寄り添い」とも言えるでしょう。

介護士は、多くの時間を利用者と過ごします。医療処置を行う看護士では、ここまで時間を掛けられません。

言いかえれば、介護の仕事は、利用者の寄り添いや観察、信頼関係を築くことが求められるのです。

だからこそ介護の研修には、「寄り添い」という言葉が何度も出てきます。それだけに、寄り添いというと「特別なこと」と勘違いしやすいのもよくある話です。

目線の高さを合わせるという表現を使うことがありますが、単純に「高さ」が「寄り添い」と関係してのではありません。

見上げて話すよりも、少し目線を落として話した方が落ち着きます。

だからこそ、利用者が話しやすい場所に介護士が来るのです。

ただそれだけのことを、難しく説明する必要はありません。

我々介護士は、利用者のことを知りたいわけです。だからこそ、利用者の言動が分かりやすい工夫をしましょう。

介護士が自分目線で接してしまうと、利用者の気持ちは分からず、強い拒絶反応だけが返ってきます。

それでも、「あの利用者は言うことを聞かない!」と言っている介護士はいます。

とても残念なことですが、それでは「介護」の意味もよく分かっていないのでしょう。