なぜ、介護施設のサービスが低下したのか?

 サービスを向上させるポイント

以前なら、介護支援は行政による「措置」というものでした。

措置は、語彙だけで言えば処置とも言い換えられますが、行政による社会的な行為と言った方が適切かもしれません。

ポイントは、民間による市場や資本主義の原理原則に従っていなかったということ。

国や各都道府県の地方自治体が、予算を取り、政策として押し進める「行政行為」だったという点でしょう。

行政行為なので、原価や利益という発想よりも、社会的に必要か否かという観点から「介護支援」の内容が決まります。

一方で、介護保険制度が誕生した背景の一つに、増加する高齢者福祉の予算が増え続けることで、行政主体の「措置」を続けることが難しくなったとも言われます。

つまり、行政であれば、必要だと考えられる支援が、予算枠の範囲でできてしまいます。

場合によっては市場規模よりも大きな予算を確保できることもあるし、逆に民間では叶わないような支援制度になることもあり得ます。

ただ、現実的には、多くの行政機関に繋がる施設では、かなり余裕が見込まれる予算が確保されていて、民間では少し考えられないほど、ゆったりとした職場環境が敷かれています。

それはつまり、働く介護士の方が、利用する高齢者よりも優遇されるという話にもなり、施設を利用する高齢者には、介護保険制度後では考えられないほど、条件的に厳しい面もあったでしょう。

しかし、いずれにしても「介護保険制度」が誕生し、介護施設はケアプランに基づきサービスを提供するようになりました。

利用者自身のニーズをもとに、求められサービスを提供することが「当然」になったのです。

選ばれる施設になること

行政により管理された施設ではなくなり、また近隣にも同じようなサービスを目的とした施設が軒並み建てられたことで、介護施設も競争原理に巻き込まれました。

100円の利用料にしては、サービスがいい。

200円の利用料にしては、もう一歩のサービスだ。

単純にサービスの質を問うだけでなく、利用料の面でも競争が行われます。

一方で、高いサービスを打ち出せない施設は、収益としても低迷し、低賃金でも働いてくれる介護士くらいしか雇うことができません。

当然、集まる介護士の量や質に、限界があるのは競争原理の結果でしょう。

昨今の動向

こみちの勤務する施設でも、数ヶ月に多くの介護士や看護師が離職しました。

その理由や目的をこみちは知りません。

偶然に重なっただけとも言えますが、近隣にできた新規の施設に移ったのかもしれません。

仮に月収としては変わらなくても、働きやすさや将来性という面で支持されれば、人は集まります。

一方で、支持されない施設は、介護士の人数が減少し、個々の仕事量は増加して、仕事そのものはより業務的でハードになります。

もう少し言えば、利用者と接する時間は減り、タイムスケジュールに沿った事務作業が増え始めたら、危険な兆候でしょう。

実際、別の部署に所属する利用者の数が減少していて、空き部屋が目立ちます。

また、直接的に関わっていないので印象でしかありませんが、スタッフの人数も少なくなったように思えます。

施設として提供可能なサービスに限界が来ると、価格面で強気にはなれません。

リーズナブルさを全面に打ち出せば、巡り巡って介護士の賃金が頭打ちになり、モチベーションも減ってしまいます。

久しぶり3ヶ月くらい前に入職したスタッフと一緒に働きましたが、未だにトイレ誘導もできず、雑務も積極的に率先しない姿を見て、その個人ではなく、施設として厳しい状況なのだと思いました。

コロナ禍という意味では、働き口があるのはありがたいことですが、介護士としてのスキルや目標達成するという観点では、そろそろ限界に来ているという印象です。