「もうひとつのラスト」  第9話 | ノベルの森/アメブロ

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第8話の結行
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「もうひとつのラスト」     第9話



ここはやっぱりメインである香瑠の答えを待つしかないのだろう。僕がそう決めたとき・・・

「もう少し、女心をわかって欲しいものね。私が今いくつなのか分かってる?あなたと同じ40歳・・・」

彼女は溢れた涙を、その長い指先で拭った。

「今よ、今見てもらわなきゃ。今なら10年間むこうにいたお陰で、30歳くらいの私を見せてあげられる・・・でも、そのうち私を見てくれるあなたの視線が醒めてゆくわ」

「そんなことない!」

ぼくは本当にそう思っている。君と君以外の女性には大きな違いがある。
君と僕だけに訪れた、13歳の時のあの心ときめく出会い!
世界は一変したんだ!ぼくは水辺の生き物たちより、ずっと素敵な女の子と恋に落ちた。

翌14歳の冬、ぼくと香瑠の甘く、せつなく、それでいて大胆なファーストキス!+α!アメリカ映画の青春+ラブコメに出てくる輝くようなあのシーン!

そして、・・そして10年前の香瑠との、『まるでセックスな交わり』正直言って、あれはぼくも辛かった。でもあの13歳からの思い出だけで、ぼくは一生幸せに生きていけたと思う・・・。

誰にも信じてもらえないだろうけれど、あの思い出は、いつだって僕が頭の中のスイッチをオンにすれば、映像となってぼくの周りをいつまでもぐるぐると回り続けるんだ。
そして反復記号のすぐ手前には、香瑠とぼくとの『まるでセックスな交わり』があった!



「本当に?」
「え?」
「あー!ひどい!!こんな大事な時に、いったい誰のことを考えてたの!?」

返事次第じゃ許さない!香瑠の細くなった目と硬く閉じられた口が、そう言ってるようだ。

「ち、違うよ!他の誰かじゃなくて、14歳の時の君のことだよ」と、僕は大急ぎでベッドの横にあるサイドテーブルの上に置いてある僕と香瑠を写したフォトスタンドを指さした。
香瑠の硬かった表情が見る間に解けていった。

「いいわ、そういう事なら許してあげる。じゃあ続けるわね、大丈夫?」
「大丈夫・・・」
「私が、『そのうち私を見てくれるあなたの視線が醒めてゆくわ』と言ったの」
「ぼくは『そんなことない!』って言ったはず」
「ええ、そう・・・だから私は『本当に?』って聞いたの、さあ答えて」

香瑠は腕を組み、やや上目遣いでぼくを見てる。

「うん、そうだよ・・・たとえ君が60になっても、ぼくはどこへ行くにも君と手を繋ぐことを忘れないし、例の『誰かさん』だって、生涯君の『お尻のナイト(騎士)』で居続けるって言ってる」
「本当なの?」

君は僕の左手と顔を交互に見ながらそう言った。嬉しそうにね。

「そう言ってた」僕がそう言うと、君はクスっと小さく笑い、
「嬉しい」と言い、こうも言った。「ありがとう」

その言葉、受け答えのパターンとしてはオーソドックスであり、正しい・・・けれど、君の瞳の奥に、必要以上の「やった感」が垣間見えた。そう感じたのは気のせいだろうか?












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