風俗嬢⑫ (夏樹) | 裏道のすすめ

裏道のすすめ

誰もがあたり前に通る表道
それは本当に正しい道ですか…?
真実は裏道にアリ
自由に生きるヒントがここにはある…

衝撃的な光景だった

 

客にケリを入れている夏樹の表情に

一切の迷いもなく

ただ純粋に嫉妬の怒りをぶつけていた

 

人間というものは

他人からどう見られているかを

無意識で気にする生き物だが

このレベルの風俗嬢になると

他人からの目線を超越し

素直な感情をむき出せてしまう

 

故に人気が出るワケだが

 

しかし

駆け出しの私には

あの光景は大きなショックだった

 

間に入り何とか夏樹をなだめようにも

怒り狂った女帝はそうそう治まらない

その怒りはやがて

矛先を私に向けるようになり

15分以上罵声を浴びせられ続けた

 

一通り文句を言い終えた夏樹は

その客に見向きもせず

女子待機所へと姿を消し

残された客と私は気まずいながらも

どこか同志のような一体感がうまれ

そんな空気の中

客は接客を受けずに帰っていった

 

嵐が去り

 

事務所に腰を掛け

ふぅ~っと一息ついた頃

夏樹が事務所にやってきた

 

「あとで話あるから」

 

まだ冷めやらぬ怒りは

その声色で容易に想像がついた

 

少し冷静になり

この後の事を考えたら

 

じっとりとした冷や汗が・・・

 

マズい・・・

 

非常にマズい・・・

 

高確率で夏樹は辞めると言い出すだろう

そうなれば

店の売り上げがガクンと下がる

今月だけではない

来月も再来月も

得られていたであろう利益が引き飛ぶ

 

その穴を

私が埋められるのか・・・?

 

無理だった

逆立ちしても金は出てこない

 

ではどうする

伸び盛りのネネに期待するのか?

いずれ夏樹を抜いていける存在ではあるが

 

№1の世代交代

そのタイミングは今ではない!

 

ネネにしたってワガママな娘だ

いつ何時

辞めたいと言い出すかもわからない

いや

突然消えていなくなる可能性すらある

 

状況を整理するにつれ

自分が置かれた立場に絶望する

 

社長に・・・何をされるか・・・

 

なんとしてでも

夏樹を引き止めなければ!

 

私に残された道は

どうやらそれしかなかった・・・

 

いつもなら

ゆっくりと流れる時間が

倍速で進んでいるような感覚

店の閉店時間は

あっという間に訪れた

 

騒ぎを感じていた他の嬢達は

いつもより足早に店を出ていく

姉御と慕っていたレイナさんが

ネネを連れて事務所に顔を出し

 

「ダメだったら慰めてあげるから・・・ガンバってー」

 

他人事の悪い笑みを浮かべて店を出ていった

 

今・・・この店に・・・

 

残っているのは私と夏樹だけ・・・

 

ピリピリとした時間の中

私は閉め作業をこなしながら

刑の執行を待つ身

 

そんな事務所に足音が聞こえ

女帝夏樹が姿を現した

 

「客が来たらアレだから

 カギ閉めて6番に来て」

 

覚悟の決まったような声に聞こえ

背筋がゾクッとしたのを覚えている

 

6番とはプレイルームの番号で

設計上

一番広い部屋で

真剣な話をするのにもってこいの場所

 

私は店の扉の鍵を閉め

緊張を押し殺し6番の部屋に入った

 

夏樹はベットに腰かけていて

 

「となり座って」

 

投げつけられるような言葉

ここまできたら覚悟を決めよう

 

そんな気持ちで夏樹の隣に座ると・・・

 

「さっきはゴメンね・・・」

 

なっ・・・なんだと!?

 

予想に反して

夏樹は甘い声で謝ってきたのだ

 

動揺で何を返したか

驚いている私を見つめる夏樹の瞳が

 

ウルウルと・・・

 

あれっ・・・これって・・・?

 

夏樹は私を

ベットに促すようにそっと寝転ばせ

体の上にすっと登り

上から私の瞳を見つめてくる

 

これって・・・

 

セックスの直前の光景である

男女上下が逆なだけで

明らかに夏樹の表情は悦に浸っていた

 

私の股間のところに

ちょうど夏樹の股が当たる

 

さらに女帝は

腰をゆっくりと動かし

私のアレを刺激しながら

 

「みんなしてくれたんだよ・・・」