徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

大フィルの定期演奏会前に立ち寄ったロンドン・ナショナル・ギャラリー展は三密状態

国立国際美術館は大混雑だった

 今日は大阪フィルの定期演奏会に出向くことにしたのだが、そのついでに国立国際美術館に立ち寄ることにした。ここで開催されているロンドン・ナショナル・ギャラリー展を見学するため。しかし実は恥ずかしいことに私はこの展覧会のことは全く失念していた。先日、会社の後輩に「大阪で何か大きな展覧会が開催されるらしくてすごく宣伝してますが行くんですか?」と聞かれて初めて知った次第。しかもご丁寧に入場券が時間指定の前売りになっていることまで教えてくれた。そこで私は大阪フィル定期演奏会で大阪に出向くタイミングに合わせて急遽入場券の手配を行ったのだが、既に朝一番と昼時以外は完売している状況。そこで慌てて昼時のチケットを手配した。

 当日は午前中に家を出るとアキッパで手配した駐車場に車を置く。大阪では知事の無能(コロナを放り出して利権のための都構想にうつつを抜かしていた)が祟って既に感染爆発状態なので厳戒状態で臨むことにする。というわけで当然ながら車での移動私は「電車の中でのコロナ感染はない」などという政府のご都合主義の「設定」は全く信じていない。幸いにしてフェスティバルホールと国立国際美術館は同一エリアにあるので、駐車場を一箇所借りたらそれで間に合うのは助かる。

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国立国際美術館に到着したが

 

大行列に三密の館内がやや心配

 国立国際美術館に到着したのは入場時刻の15分前ぐらいだったが、この時点で屋外に長蛇の行列が出来ていた。ここで入場待ちの模様。行列のところにやって来て、会場での当日券の販売はないという話を聞いてガックリして帰る人も数人。中にはやけくそで向かいの科学博物館の方に向かった者も。

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表に回ったらこの状態だった

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向かいは科学博物館

 入場時刻の12時が来ても前から一定人数ずつ入れていくので入場までに10分ほど待たされる。そしてようやく入場できたが、館内も結構「密」な状態。果たしてこれは本当に大丈夫だろうか? 一応消毒とマスク着用義務付けとサーモグラフによる体温チェックは行っているようだが。無症状の感染者がいたら一発でクラスター発生の状況のような気がする。私は一応抗菌手袋着用で臨むことにするが、もし隣に感染者がいたら多分アウト。

 

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」国立国際美術館で1/31まで

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 ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する名画を展示。最初はイタリア・ルネサンス絵画から始まる。ティントレットの躍動感のある絵画が流石だが、個人的にはサヴォルドのマグダラのマリアのローブの妙な光沢感に目を惹かれた。

 次の中世オランダ絵画のコーナーでまず目を惹くのはレンブラント。その独特の光の表現は流石と感じさせるところ。なお同コーナーにフェルメールも一点展示されていたが、これについては私の感想としてはフェルメールとしては凡作。あまりに表現が平面的すぎて、特に手前に置いてあるチェロなどもう少しどうにかならないのかという印象である。フェルメールの作品も今まで数点見たが、青いターバンの少女とミルクさん辺りは桁違いのオーラを感じるが、それ以外の作品は結構今ひとつのものも多い。特に同時代のオランダ絵画はとんでもなくレベルが高いので、その中でひときわ輝くというほどでもない。

 イギリス肖像画、イタリア風景画を経て、次はスペイン絵画のコーナー。ここではまずゴヤの作品が目を惹くが、次に目を惹かれるのは強烈なエル・グレコの絵画である。独特の細長い人物像と強烈な赤青の色彩で描かれたキリスト像は圧倒的な存在感を放っている。遠目に見ても「エル・グレコ」と分かるオリジナリティの強さは異色である。そして表現力が傑出しているという点ではムリーリョが至高。子供の生き生きした肌の質感まで伝わってくるような圧巻の表現力には感動させられる。ムリーリョの作品はいつも目にする度に「良いものを見せてもらった」という感覚を抱くが、今回もこれだけでお腹いっぱいといったところ。

 次は風景画。イギリスで風景画と言えばターナーであるが、独特の霧のかかったかのように見える色彩の風景画が展示されている。こうして見るとボンヤリした中に光の煌めきも感じられ、ターナーの中に印象派へのつながりを見る向きもあるのも納得は行く。このコーナーではコンスタブルのミッチリと精緻に描き込んだ林の風景に圧倒された。

 最後はフランス近代絵画のコーナーだが、元々はロンドン・ナショナルギャラリーはアカデミズム系絵画が中心で近代絵画部門は弱かったそうだ。それを充実させたのはコートールドコレクションで知られるコートールドによる基金の設立や、多くのコレクターの寄贈によるという。このコーナーではドガの踊り子やモネの蓮池といった定番に加えて、ゴーガンの色彩鮮やかな絵画とルノワールのいかにもの美しい絵が展示されている。恐らく日本人としては一番馴染みやすい定番絵画とも言えるコーナーになるだろう。私もルノワールの絵画は堪能した。

 会場最後の一角がゴッホのひまわりの展示。ゴッホのひまわりは7作が製作され、6作が現存している(1作は先の戦争で焼失)。その内の3作目と4作目がゴッホがゴーガンの部屋を飾るのに選んだ作品で、ここまで製作した時点でひまわりのシーズンは終了、後の3作は先の3,4作を元に製作したものだという。SOMPO美術館が所有するひまわりが5作目に当たり、それは4作目を元にした作品。その4作目が本展展示作である。そういういきさつがあるので、パッと見ただけでSOMPO美術館所蔵品にかなり類似していることを感じる。だが色合いに若干の違いがある印象で、SOMPOのものの方が色彩が鮮やかで濃く、これに対して本作の方は色合いは薄いが光の煌めきがより強烈な印象を受けた。絵の具の凸凹までが光を反射してキラキラと輝き、背景の鮮やかな黄色がまるで金箔のように見えたのが印象的。

 

 なかなかに濃い展覧会であったことから、図録や絵はがきを購入しようかとも思ったのだが、グッズ売り場は入場に長蛇の列、さらにはそこから会計にも長蛇の列ということで、これだけで一体どんだけ待たされるやら分からない状況だったので、諦めることにした。コンサートに飢えたクラシックマニアが大挙してウィーンフィルに押しかけているのを先日目撃したが、美術展マニアの方も飢えていたのだろうかと感じるところ。日本全体がイベント欠乏症にかかっている印象だが、果たしてコロナの感染爆発の可能性が出て来た中で大丈夫だろうかということにはかなり不安がある。そもそも美術館がホール並みの換気能力を持っているとも思いにくいし。


 美術館から出てくると、会場外には次の入場の長蛇の行列が出来ていた。なお美術マニアとしては、コロナの感染爆発の危機が増してきたからこそ、規制が強化されて中止になる前の今のうちにという気も逆に働いているかも知れない。特に関西の美術ファンには兵庫県立美術館で開催された「ゴッホ展」が会期途中でコロナ騒動で打ち切られてしまって、痛恨の思いをした者も少なくないと思われる(私は昨年に東京展の方に行ったので被害は免れたが)。それが余計に駆り立てている可能性もある。

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美術館から出た時はこの状態

 

美術館のレストランで昼食を済ませる

 展覧会の見学を終えると昼食を摂っておきたい。しかしこの近所で良い店を知らないし、面倒くさいこともあって、美術館のレストランで昼食を摂ることにする。しかしなぜか館内からは直接そちらに行くことは出来ず(通路が封鎖されている)、わざわざ外から回らされることに。恐らくレストラン経由で入口でのコロナチェックを逃れて入館する不届き者を防ぐためだろう。しかしレストラン内も結構密で、本当に大丈夫かは若干の心配がある。私は「ビーフシチューのランチ(1550円)」を注文。

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サラダとスープ

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メインとライス

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デザートとコーヒー

 正直なところ期待はしていなかったので、大体想像していたレベルというところ。まあ普通にそれなりには美味しいですが、驚くものでもないしCPは良くはない。デザートは一口大のチョコレートのケーキ。これが意外に美味かった。

 昼食を終えたところで14時前だが、ホールの開演の前にもう一箇所立ち寄ることにする。