教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/20 NHK ガッテン「長寿&ガン予防で注目!腸内細菌パワー覚醒術」

腸内環境が長寿に直結する

 今回は長寿健康の秘訣が腸内細菌にあるという話。そもそもは100歳以上の比率が京都市内の2倍以上という京丹後の高齢者の調査研究データからの報告である。

 京丹後の高齢者の身体データを徹底的に調査したところ、腸内における特定の細菌(いわゆる善玉菌と呼ばれる細菌)の量がかなり多いことが判明したという。そのことから、京丹後では大腸ガンになる人が京都市街の半分以下であるという。

 これらの菌の働きだが、腸内で免疫物質が暴走して炎症を起こした際、それを鎮める物質を分泌すると言われている。炎症を抑えるので、ガンや老化などを防ぐのだという(元々炎症体質の私は長生きは無理と言うことか・・・)。

 

ヨーグルトを食べていたのに・・・

 善玉菌を増やすと言えば一般にはヨーグルトのイメージがある。番組では様々なメーカーのヨーグルトを出して来たがこれだけで数十種。一体どれを摂れば良いんだという話になるが、志の輔氏の「NHKがこれを摂りましょうと言うわけがない」というのは至極ごもっとも(笑)。それに今回の話はヨーグルトを摂っていれば良いという単純な話にはならない。

 ここで登場するのが毎日健康のためにヨーグルトを食べていたという女性。しかし彼女は2年前から腹が張るという症状に苦しめられたのだという。そしてたどり着いた腸内細菌外来で腸内のビフィズス菌が非常に少ない(通常は8%ぐらいあるものが2%程度)ということを指摘される。彼女は毎日ヨーグルトでビフィズス菌を体内に入れていたのにどうしてそんなことに?

 ここで例によっての模型を用いての説明になるが、要は腸内では常在菌がビッシリとはびこっているので、そこにヨーグルトで新たにビフィズス菌を入れても、それらが腸内で繁殖するということはないのだという。ではヨーグルトに健康効果はないのかということだが、これらの菌は腸内を通過する時に様々な物質を分泌し、これらが健康効果があるとのこと。つまりはヨーグルトは毎日食べないといけないといけないという話になる。

 

善玉菌を増やす食材

 では京丹後の人たちは毎日ヨーグルトを食べている・・・というわけではなく、彼らの食生活の中に腸内の常在菌を増やす働きをする食材があるのだという。食事調査の結果浮上したその食材は海藻。海藻に含まれる水溶性食物繊維が善玉菌の餌となるのだという。なおここでどんな食材が腸内細菌にとって有効かというのは民族による違いなどがあるらしく、日本人は9割が海藻を分解できる菌があるのに対し、欧米人は3%に過ぎないとのこと。先祖代々の食生活などが影響しているのだろう。

 なお水溶性食物繊維は、海藻以外にも芋類や豆類、キノコ類などにも含まれているので、これらはすべて腸内環境を整えるのに役に立つということである。実際に京丹後の家庭の食事を紹介しているが、確かに海藻類を含んでいるが、それより私が驚いたのは品目数の多さ。野菜を中心としたかなり品目の多い食事を摂っており、栄養バランスという観点からも優れていそうだ。

 

食物繊維の効果

 食物繊維の効果については、アメリカで驚きの実験結果も報告されている。二組のマウスの一方には食物繊維が豊富な餌を、もう一方には食物繊維を含まない餌を与えたところ、食物繊維を与えなかったマウスは10日後に全滅してしまったというのである。死んだマウスを調べたところ、飢えた腸内細菌が腸の表面を保護する粘液のムチンを食べてしまっていたというのである。その結果腸壁が保護されなくなり、感染症や大腸ガンなどまで起こすことになるのだとか。この結果がそのまま人間にも言えるかどうかは断定できないが、とにかく食物繊維というのは腸内を健康に保つには重要であるということである。番組に登場した専門家は腸内の菌を整える「育菌」というのを提唱している。周南市では市を上げて腸内細菌検診などで意識を高める取り組みを行っているとのこと。

 ここで最初に登場した毎日ヨーグルトを食べていたのに腸内環境が悪かった女性の話に戻る。彼女の腸内ががそうなった原因は、食生活の乱れで食物繊維が不足していたことにあるとのこと。彼女は腸内細菌外来の指導で食生活を変更する。ここで取った戦略は具だくさんの味噌汁で食物繊維を摂取することや、ヨーグルトに果物を合わせるといった工夫。これで食物繊維摂取量はかつての3倍になったとのこと。そして5ヶ月後の検診、彼女のビフィズス菌の量が倍増して目出度し目出度しというお話である。

 

腸内細菌のスーパーパワー

 番組最後はパプアニューギニアの話。ここの人々は芋しか食べず、タンパク質の摂取量は日本人の半分なのに筋肉隆々な体をしている。この秘密は腸内細菌にあるという。腸内細菌が芋から筋肉の原料になる物質を作り出しているのだという。最初に話が出た地域や民族によって腸内細菌が環境に適合しているという結果である。この地域の人々の芋を食べる食生活に腸内細菌が順応したのである。海藻と日本人の関係もこれに近しいものなのだろう。なおここでさりげに24日に放送されるNHKスペシャル「食の起源」の宣伝ロゴが入って、この番組を見ろと誘導している。はいはい、多分私は見ます。


 以上、腸内細菌が長寿に直結するというお話。実際に大腸は免疫などにも影響が大きいので、大腸内の環境の悪化は直ちに体全体の健康の悪化につながるというのは近年良く言われているところです。食物繊維は本来は普通の日本人の食生活を行っていたらまず不足するということなかったはずなのですが、最近は食生活の欧米化などによっておかしなことになってきていると言うことでしょう。こういう点でもやはり地場の新鮮な食材を食べるということが健康にとっては最も重要という話になりそうです。

 

忙しい方のための今回の要点

・長寿の人が多い京丹後の高齢者について徹底的に調査研究したところ、腸内の善玉菌が非常に多いことが判明した。
・ヨーグルトで体内にビフィズス菌などを取り込んでも、これらの菌は膨大な常在菌に圧迫されて腸内に定着することは出来ない。これらは腸内を通り抜ける時に分泌する物質が健康のために有効であるので、毎日摂取することが重要となる。
・京丹後の食生活を調べたところ、海藻の摂取が非常に多いことが分かった。海藻に含まれる水溶性食物繊維は善玉菌の餌となるため、腸内環境を整える効果がある。
・腸内環境を整えるには、海藻以外でも芋類、豆類、キノコ類などを摂取するのが効果的である。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・環境が人間の体内にも影響を与えてきたという話です。こういうのを見ていたら、元々日本人には肉食は向かないという話もあり得るようである。実際に日本人が欧米人のまんまの食生活をすると、確実にすぐに死んでしまいますから。彼らは彼らで自分達の食生活に合う進化をしてきたということになります。
・ただ気になったのは、海藻を分解できるのは日本人の9割と言ってましたが、と言うことは1割は分解できないということでしょうか。と言うことは、彼らはどこか先祖が違うとかそういうことがあるのだろうか。元々日本人は何種かの民族の混血らしいし。

 

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