教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/11 テレ東系 ガイアの夜明け「父と娘のチョコレート戦記」

 お菓子の中でも人気の高いチョコレートだが、最近はカカオからチョコレートまでのすべてを手がけるビーントゥーバーの人気が高まっているという。このチョコレートに再起をかけたどん底親娘とやはりチョコレートに生き残りをかけた老舗和菓子店の親娘を紹介。

 

経営者の座を追われ、チョコレートで再起を期す親娘

 福岡県飯塚市のビーントゥーバーのチョコレート店「カカオ研究所」。小さなコンテナのこの店を経営するのは中野一家。実は彼らには壮絶な過去がある。父親の中野利美氏は福岡を中心に30店を展開する有名な菓子店さかえ屋の経営者だった。創業者の長男だった利美氏は2012年まで社長を務めていた。会社の売り上げは90億円。しかし負債40億円を抱えて債務超過に陥る。そして利美氏はメインバンクから社長を退くように求められたのだという。全株式を無償で譲渡するか会社をつぶすかと迫られた利美氏はそれを飲むしかなく、自己破産で自宅は強制競売にかけられたという。こうしてどん底にたたき落とされて失意の日々の中で利美氏が偶然出会ったがチョコレートであり、これに再起をかけることにしたのだという。

 現在の利美氏はベトナムに渡ってそこでチョコレートの工場を立ち上げている。ベトナムのカカオはまだ知名度が低いが、様々な種類が存在し、利美氏はそれに合わせた豆の発酵方法を研究して、カカオ100%のチョコレートを新商品として投入することを決めた。通常はカカオ100%にすると苦みが強すぎるのだが、そこは利美氏が開発した発酵法により日本人向けの味にすることに成功したのだという。利美氏の事業にはベトナムの農民達も期待している。

 しかしその頃福岡のカカオ研究所では娘の由香里氏が厳しい表情を浮かべていた。ベトナムでの投資などが経営を圧迫して赤字が続いているのだという。再起を期す父を支えたいと一大決心でメキシコに飛ぶ。彼女の目的はメキシコで人気のモレソースというカカオを使用したソース。これに利美氏が開発したカカオ100%のチョコレートを使用することを考えたのである。現地では鳥料理などにモレソースをかけた料理が伝統の味として広く好まれているのだという。

 

老舗和菓子店の建て直しに挑む娘

 一方、舞台代わって兵庫県たつの市。この町にある創業300年の老舗和菓子店の大三萬年堂。醤油饅頭が人気商品で、12代目店主の安原和夫氏は昔から変わらない味を守り続けていた。しかし最近は売り上げが低迷気味でジリ貧となってきていた。この状態に危機感を持ったのが娘の伶香氏。彼女はソフトバンクに入社後、4年でやめて今は東京で大三萬年堂HANAREというカフェを経営していた。彼女はたつのから送ってもらった自慢のあんこを使ったメニューで若者などに人気を博し、今では本店の5倍の売り上げとなっていた。そんな彼女はこのままでは本店が消滅してしまうという強い危機感を抱いていたのである。

 そこで彼女は本店に新しい客層を呼び込むためのメニューを考える。その結果たどりついたのが、ガトーショコラにあんこを加えた新メニュー。番組の松下奈緒氏も試食しているが美味しいとのこと。彼女はこれをたつのに持参して父に食べてもらう。複雑な表情をする和夫氏だが「これもいいんじゃないか」という結論。早速新商品として本店に置くことに。するとこれが評判上々、用意した商品がいきなり売り切れる反響には和夫氏も大いに驚きである。そして翌朝、娘の伶香氏に秘伝のあんこ作りを指導する和夫氏の姿があった。

 

勝負をかけたモレソースの反響は

 さてメキシコに渡った由香里氏だが、現地の料理研究家に協力してもらって、日本人の口に合うモレソースの開発を行う。こうして決定した味を日本に戻ってきて同じ材料を調達して再現、これをかつて取引でつきあいのあったレストランでメニューに出してもらうことにする。ランチメニューに出したところこれが大好評、手応えを感じた由香里氏はこの料理をベトナムから帰国した利美氏にも食べてもらう。感無量という表情の利美氏。

 

 どん底からの再起とジリ貧からの復活を期する親娘の話でしたが、果たしてこの後成功できるかどうかはまだ分かりません。しかしこの番組でこうして宣伝してもらったのはいくらかの助けにはなるでしょう(笑)。

 また父と娘だというのが一番のポイントでしょう。やはり今までの事業と違う新展開を図るとなると、若い女性などを客層に取り込むというのがポイントになってきて、その感性に対応できるのは娘ということになります。これが息子ならどうしても父と大同小異の感覚になってしまいがちです。

 なお彼らがこういう状況に追い込まれた要因はこの番組を見ているだけでもどことなく滲みます。大三萬年堂の安原和夫氏は、いかにも保守的な職人というイメージで、あまり新規ビジネスなどを考えて実行するタイプには見えません。だからまさに旧態依然というやり方を続けていたのでしょう。またさかえ堂を追われた中野利美氏は、ベトナムで夢を追うのは良いですがどうもコスト計算を厳密にしているように感じられません。恐らくさかえ堂を経営していた時も、損益計算などを厳密に行わずに拡大路線を突っ走るなどしたのではないかと思われます。だから売り上げが90億円もあるにも関わらず、40億円もの負債を抱え込むという羽目になったのだろうと推測します。つまりは共に経営者としては明らかな欠陥があったように感じますので、その同じ轍を踏まないことを祈るのみです。娘さんがそこのところをキチンと補えれば良いのですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・最近はカカオからチョコレートまでを手がける「ビーントゥーバー」が人気である。
・このビーントゥーバーに再起をかけたのが、さかえ堂の経営者から追われた中野一家。父親の利美氏はベトナムでカカオ100%のチョコレートを開発、娘の由香里氏がメキシコでカカオを使用したモレソースを調査し、利美氏の開発したチョコレートを使用したモレソースで勝負をかける。
・一方兵庫県たつの市の老舗和菓子店大三萬年堂では、ジリ貧になっている店を建て直すために、娘の伶香氏ががあんこを利用した新メニューを父の安原和夫氏に提案していた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・この番組って、こういう新しい試みなどをよく紹介するんですが、実はそれが必ず成功するとは限らないんです。数年後に追跡したら、かつて紹介した新しくオープンした店が閉店していたり、甚だしきはその会社がつぶれてしまっていたりなんて例も少なくありません。ビジネスとの世界は厳しいと言うことです。
・とにかく当面は「カカオ研究所」と「大三萬年堂」は「あのガイアの夜明けで紹介された」という看板を徹底的に使うでしょうが、その効果がいつまで続くかです。きっかけを作ってもらった後の持続が真の実力という奴です。

 

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