教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/24 テレ東系 ガイアの夜明け「新型コロナで外食危機「美味しく長持ち」熟成が救う」

 熟成技術と缶詰技術の紹介だが、それをコロナで危機の外食産業の救済につなげようとしている。

 

熟成肉を作る魔法のシート

 最初に登場するのは熟成肉を出すレストランを経営するフードイズムの跡部美樹雄氏。跡部氏のビジネスの鍵を握るのは肉を熟成する際に被せるシート。このシートは肉を熟成させる菌を塗布してあり、通常の肉をただ吊して熟成させる方法に比べて熟成が早くなる上に、腐敗が少ないので肉を捨てる分が減る。このシートは明治大学の村上周一郎教授と共同開発したものであり、村上教授は微生物の専門家で、肉を熟成させるカビであるヘリコスチラムの培養に成功した。このカビを付着させたのが熟成肉に使うエージングシートである。

 

コロナショックによる余った食材を活用する

 そこに襲来したコロナショック。跡部氏はこのシートを廃棄に追い込まれる食材の活用に結びつけようとしていた。焼き肉屋の仕入れた肉などは売れなければ廃棄するしかない。エージングシートは鮮度維持にも使用できる。余った肉をこのシートで熟成肉に変えるのだ、そうすることによって保存期間が延びる上に美味しくなる。

 跡部氏はこのエージングシートを肉以外にも広げようとしている。挑戦したのは魚。臭みが消える上に味が良くなる。跡部氏はこのシートを鮮魚販売のニチモウフーズに持ち込んだ。実際に試食でその効果に驚いたニチモウフーズの社長の頭には次のビジネスのアイディアが浮かんでいる。跡部氏はこのシートをまずは業務用、いずれは一般家庭でも使ってもらうことを考えているという。

 

オリジナル缶詰を企画する会社

 保存食といえば缶詰。京都で缶詰を販売する会社を運営しているカンブライト社長の井上和馬氏。彼は手作りの少量生産の缶詰などを企画している。彼が手がけているのは無駄になる食材などを材料にして美味しい缶詰を製造して販売すること。

  井上氏はIT企業社員から転職して今の仕事を始めた。平日は会社の近くに借りたマンションに泊まり込み、日曜だけ家に帰る生活だという。彼の転身は缶詰で世界の飢餓対策に取り組む企業のことを知ってからだとのこと。困っている食品業者などを救いたいという思いがあると言う。

 

缶詰の技術で食材を有効活用する

 井上氏の元には全国から相談が来る。今回井上氏が向かったのは岐阜で昔ながらの製法を守る名宝ハムの工場。ここではハムに使用できない筋などの端材を今までは業者に金を渡して処分してきた。しかしこの大量に出る端材を有効活用できないかという相談である。さらにそこに猟師の元満真道氏が現れる。彼女は猟師で鹿などを狩っているが、解体処理した時に一部の部位は高級料理の食材などになるが、その他の部位の有効活用を考えて欲しいと相談してきたのである。

 井上氏はとりあえず肉のサンプルを持って帰って検討する。その結果、豚肉は昆布とオイルを加えた塩豚のオイル煮、鹿肉の方は元満氏の意見も取り入れて鹿肉のハンバーグにする。これらは井上氏の店で販売される

 そしてコロナショック。井上氏の元には売り先がなくなった大量のネギトロ用マグロの処理についての相談が来ている。

 

 どうも元々は普通に食品の保存に取り組んでいる企業について取材をしていたのが、コロナの件で業界の状況が急変したために、番組内容を無理矢理コロナに結びつけたという感が強い。全体的に番組内容のつながりが悪くて、バタバタと慌てて編集した雰囲気がプンプンと漂っている。

 まあ彼らの手法はいずれもコロナで売れ残った食材の有効活用につながるので、全くの的外れではないがやや展開に強引さが見えるせいで落ち着きも悪く、しかも後半の井上氏のエピソードに関しては「俺たちの戦いはこれからだ」状態の尻切れトンボになってしまっている。言い方は悪いが、コロナも旬のネタなので、番組作りとしてはそれに絡ませたいのは分かるが、それならコロナで苦闘している食品業界の赤裸々な状態などをもっと取材するべきだろう。それとも外出禁止令で取材制限までかかってるか?

 

忙しい方のための今回の要点

・熟成肉を手がけるフードイズムの跡部美樹雄氏。彼の武器は肉の熟成を速めるエージングシート。熟成に必要なカビをシートに塗布したものであり、熟成を早めるだけでなく鮮度を保つ効果もある。
・彼はこのシートをコロナで売れ残り肉が出た焼き肉屋などでの使用を進めている。
・さらに肉以外の魚への展開、家庭での使用なども視野に収めている。
・缶詰の企画を行っているカンブライトの井上和馬氏の元には、全国から余った食材の活用についての相談がやって来る。今回もハム製造の端材の豚肉や、鹿の肉などを使った缶詰を提案した。
・またコロナの影響で売れ残った食材の活用についての相談なども来ている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・缶詰の保存期間は劇的に長いですから(穴さえ開かなければ半永久的とも言われている)、確かに食糧問題の解決には一番向いてます。また保存に低温などがいらないので設備もいらないし。
・熟成肉って前から気にはなってるんですが、食べたことはないんですよね。そもそも最近は焼き肉屋に行きませんから。年のせいか肉類の消化が悪くなってるんで。

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