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2020年戦力分析その12 ~東京ヤクルトスワローズ~

 今日から遂にオープン戦が始まりましたね!・・・といっても今日は一試合だけですが、今年も初戦から面白い試合を期待したいです。その一方で新型コロナウイルスが日本でも猛威を奮っており、プロ野球ではジェット風船を使用した応援の禁止やサイン、握手などのファンサービスの自粛の措置を取る球団が出始めています。健康あってのプロ野球なので、選手とスタッフ、そしてファンが一丸となって手洗いなどの感染予防を徹底しなければなりませんね。もし3月以降も収まらなければ無観客試合や試合数削減を検討しなければならない事態へと発展するかもしれませんが、どうかこの心配が杞憂に終わり、3月20日のシーズン開幕を無事迎えられることを願うばかりです。今回は、戦力分析の最終回で東京ヤクルトスワローズの記事になります。どうぞご一読を。

 

1. 2019年シーズンの総括

 昨年の東京ヤクルトスワローズは、借金23、5位と9ゲーム差の最下位に終わるという悔しいシーズンでした。やはり5月中旬からの16連敗が痛かったですね。二桁借金を抱えた状態から挽回する空気を作るのはそう簡単ではありません。では、今季へ向けた具体的な反省点を振り返っていきましょう。

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 昨年悪かったのは、なんと言ってもセ・リーグの中で唯一チーム防御率が4点台だった投手陣でしょう。しかも5位のDeNAのチーム防御率を0.85も上回るダントツの悪さで、本拠地の狭さを言い訳にできないくらい酷かったことが分かります。16連敗中も失点6以上の敗戦が10試合を数えており、明確に投壊が連敗を止めきれなかった主要因となっています。深刻なのは、防御率が4点台どころか5点台を上回ってしまった先発陣でしょうか。ここまで崩壊してしまった理由を端的に説明するのは簡単ではないですが、2014年以降の6年間で日本人投手の規定投球回が小川投手と石川投手しかおらず、世代交代に完全に失敗してしまっていることが一因と言えそうです。本当に目ぼしい投手が育っていないのならスカウティングから見直さなければいけませんし、ここが底では無いような気さえします。成績を見ても小川投手と石川投手以外で及第点と言えるのは、強いて言えば62.1イニングを投げて防御率3.90だった山田大樹投手のみという異常な状態です。小川投手ももう若くはありませんし、新しい風を吹かせるために若い活力のある投手の台頭が欠かせません。

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 他球団との相性を見ても、全球団に負け越し、先発防御率、救援防御率も4点台超えがズラリと並んでおり、厳しい結果になりました。いくら打線の爆発力があるとは言っても、毎試合5失点以上してしまうようでは勝ちようがありませんよね。今季へ向けた課題はたくさんあるのですが、まずは余計な失点を防ぐためにも阪神に次ぐ97失策を犯した守備から引き締めていくことが重要になるでしょう。野手が投手の味方をしてくれればリズムも作りやすくなると思いますし、メンタル的にも良いはずです。一つ一つのアウトを大切にして、先発陣ができるだけ長い回を投げられるようにもり立てる守備を見たいですね。対戦打者としてはどのチームにも高打率を許した天敵となる打者が居るのですが、特に対戦打率.392、11本塁打とシーズン40本塁打をアシストしてしまった巨人の坂本選手は今年も要注意です。本拠地が狭い神宮球場であることは確かに投手陣にとっては苦しいところですが、今季はセ・リーグの並み居る大打者を相手に意地を見せてほしいですね。

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 次に野手陣は、チーム得点数が首位巨人に迫る656得点、本塁打数もリーグ2位の167本塁打と近年になく打ちまくりました。やはり大きかったのは本塁打を量産し、打点を稼ぎまくってくれた村上選手の躍進でしょう。日本人選手でクリーンナップを担える長距離砲が出てきてくれたことは山田選手にとっても大きいでしょうし、歳は離れていますがYM砲としてアベック弾を量産するような関係になってほしいですね。一方で、前年度レギュラーだった西浦選手が怪我で長期離脱したため、近年固定できていなかったサードに加えショートにも穴ができてしまったのは懸念事項です。ショート、サードだけで40失策以上をしてしまっていますし、今季はこのポジションに入る選手の守備力向上が上位浮上へ向けた第一関門となりそうです。

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 得点貢献のグラフ(灰色の棒)を見ると、打撃成績の良さに比べると得点貢献がプラスの打者のプラスの幅が大きくないことが分かります。これは投手の失点を考えると得点貢献が十分ではない打者が多いことを示しており、投手指標の悪さを痛感させるデータになっています。坂口選手が故障離脱し、一番打者が固定できなかったことも得点貢献が伸びなかった要因なので、今年は一番打者として適格な選手に出てきてほしいですね。スタメンの選手がベテラン頼りになってきていることも不安要素ではあるので、それがフレッシュな選手であればあるほどチームに活気が出てきます。

 

2. 2019-2020シーズンの選手の動き・新戦力分析

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 昨オフ最大のニュースはやはり、2011年から9年間ヤクルトの主砲として活躍してきたバレンティン選手のソフトバンクへの移籍でしょう。在籍最終年に村上選手が出てきたのがせめてもの救いですが、毎年30本塁打以上が計算できる攻撃の要であったバレンティン選手が居ないことは相当な痛手のはずです。ヤクルト在籍晩年は守備態度の悪さを指摘されることが多かったものの、それ以上にこれまで当たり前にランナーを還してくれていたバレンティン選手の有り難みを感じるシーズンになりそうです。

 新外国人野手としては2015年に遊撃手としてア・リーグゴールドグラブ賞を受賞した守備の名手・アルシデス・エスコバー選手を獲得しています。下記成績のように、メジャーで30盗塁できた足や堅実な守備は魅力的ですが、二桁本塁打や長打率.400超えの経験が無いため長打力・決定力というのはあまり期待できないかもしれません。それでもショートが守れる守備の良い内野手は補強ポイントに合致しますし、9年連続でメジャーで規定打席に到達した頑丈さも持ち合わせていますから、NPBの投手にうまくアジャストしてほしいですね。

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 投手陣では昨年成績が悪化した先発のブキャナン投手と中継ぎのハフ投手が退団しています。これを受けて新外国人投手としては双方とも先発としての起用が予想されるガブリエル・イノーア投手とマット・クック投手を獲得しています。どちらも奪三振率は高い方ではなく、打たせて取るピッチングスタイルなのでエスコバー選手も加わる内野陣が支えてあげてほしいですね。スアレス投手とともに誰を一軍に上げるか困るくらいの激しい外国人枠争いに期待したいです。

 他の移籍選手としては楽天を構想外になっていた嶋捕手を獲得したほか、ソフトバンクの育成選手だった長谷川宙輝投手を支配下選手として獲得しています。ソフトバンク産のヤクルトの投手は活躍するイメージがあるので、一軍への切符を掴んでほしいですね。

 そしてドラフトでは注目の高校生右腕・奥川恭伸投手を3球団競合の末獲得しています。夏の甲子園準優勝投手であることなど田中将大投手と境遇が重なる部分もあるので、新世代のプロ野球の主役になれるような活躍に期待です。

 

3. 2020年の戦力分析・オーダー予想

 最後に、今シーズンの投手陣と野手陣の予想メンバーを見ていきましょう。

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 問題の先発陣では、まず小川投手に成績を残してもらわなければ困ります。昨年は最多敗戦に最多被本塁打、最多失点と"逆三冠"を達成してしまいましたし、今年はエースとしての自覚を持って2015年以来の二桁勝利をノルマにして頑張ってほしいですね。40歳となった石川投手もまだ衰えてもらうわけにはいきません。規定投球回は無理でも100イニング程度は高津監督も計算していると思うので、悲願の200勝へ向けて今年も勝利を積み重ねてほしいです。昨年防御率とWHIPがかなり悪かった高梨投手や高橋奎二投手もローテ投手として計算されているので、無駄な四球を減らして、できるだけ長い回を投げられるようになってほしいですね。あとはイノーア投手、クック投手、スアレス投手の活躍が大事になってきます。この三人のうち一人でも良いので先発として規定投球回を計算できるなら、順位も上がってくるのではないでしょうか。個人的にはコンディション不良で昨年後半戦の登板が無かった原樹理投手が調子を上げてくれれば助かると思うのですが、まずはリハビリを頑張って今季中にチームの力になれるようにしてほしいですね。

 救援陣は昨年合計494登板と順位の割に投げさせすぎてしまった疲労の程度がまず心配です。高津新監督は救援投手出身の大御所ですし投手の体調管理について詳しいと思うので、負担を分散させる投手運用にも期待したいです。抑え投手は昨年終盤はマクガフ投手でしたが、もともとそのポジションだった石山投手が収まるのが良いでしょうか。梅野投手とともに勝利の方程式が組めるようになれば、Aクラスも夢ではないはずです。ベテランの近藤投手や五十嵐投手が未だに最前線で頑張ってくれているのは頼もしいですが、いつ衰えが来てもおかしくないので、20代の若手投手陣の奮起に期待したいですね。

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 野手陣の予想オーダーは例によって3通り考えてあります。パターンAは2018年の打線をもとに、昨年は怪我で一軍に居なかった坂口選手を一番・ファーストとして起用するオーダーです。村上選手は下半身のコンディション不良のため春季キャンプでは二軍生活となっているので心配ですが、守備は村上選手にサード、エスコバー選手にショートを任せるようなオーダーになっています。村上選手は今年も失策を多くしてしまうでしょうが、三遊間を組むエスコバー選手を手本に上達して名三塁手への道を歩んでほしいですね。

 次にパターンBは、守備の負担も考慮して昨年終盤と同じように村上選手をファーストで起用するオーダーです。この場合は経験のある坂口選手が外れてしまいますが、いつまでもベテランに頼ってばかりではチームの未来が危ういので廣岡選手や太田選手などサードを守る選手の攻守両面の成長を期待したいです。

 そしてパターンCは昨年の打撃面の課題だった一番打者にチーム最高打者の山田哲人選手を置くオーダーです。優勝した2015年や2018年など、山田選手の得点が多い時にチームが強い傾向があるので、山田選手を一番に置けるようなチーム状態の良さを持続させてほしいですね。

 どのオーダーでもベテランの青木選手と雄平選手を重要な打順に抜擢していますが、ここ二年好調とはいえ年齢的なものもあり衰えが心配です。特に青木選手はセンターをメインで守るという年齢ではないですし、青木選手をサポートするだけでなく、スタメンから追い出してしまうような成績を残す若手外野手の台頭にも期待したいです。その選手たちにヤクルトの未来がかかっているので、頑張ってほしいですね。

 

4. 終わりに

 以上、今季の東京ヤクルトスワローズの戦力分析でした。今年から高津監督が就任し、心機一転イチから出直しというシーズンになります。バレンティン選手が抜けてしまい攻撃力低下が懸念されますが、それでもヤクルト打線の爆発力は侮れないものがあると思いますし、今の実力の拮抗しているセ・リーグでは何が起こってもおかしくありません。ヤクルトの今後のために、そして先日亡くなった野村克也氏のためにも一番良い結果を目指して頑張ってほしいですね。

 これで、12球団の戦力分析が完了しました(セ・リーグ過去分は下記記事を参照)。正確な分析ができているかは分かりませんが、これらの記事を読んで自分の贔屓でない他球団の選手についても興味を持ってくれたら嬉しいです。私自身としてもあまり良く知らかなった球団の現状を知ることが出来て楽しかったです。今年も色んな選手が活躍する良いシーズンになると良いですね!

 次回からの内容は決めていませんし更新がいつになるかも分かりませんが、また面白いデータを思いついたらまとめていきたいと思います。今年も健康には気をつけて、プロ野球観戦を楽しみましょう。

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5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

プロ野球 - スポーツナビ

データで楽しむプロ野球

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis