アジアめし、たとえばガパオライスなどの皿に よく目玉焼きが一つ載っかっている。

僕はああいう風に「たまごが上に載っかっている」という構図が、視覚的に大好きである。ややニュアンスは異なるけれど月見うどんやエッグカレーも 視覚的に好きである。見た目が 好きなのである。

白身の真ん中の黄身が僕に向けて、あなただけの特別サービスですよぉ~、と愛想をふりまいているように見える。さあど~ぞ~めしあがれ~と黄色い目ん玉が言うのである。



ふとモンスーン地域の、そうね…、たとえばベトナムとかタイとかの農村が思い浮かぶ。

集落で放し飼いにされて、トットットットットと庭先を走り回っていたニワトリが、首をかしげながらポトンっと卵を産み落とし、目のクリっとした子供がそーっとそれを拾って竹で編んだ籠に入れ、大事に大事に持ってくるのである。

家の主が言う。おおそういえば今日は珍客が来ておるな。この卵は客人のご飯に載せてさしあげるとしよう。 



そういう経緯でこの卵は僕のところへ来たのである。 その農家における「本日の卵」が僕のガパオ飯に載っかって 出てくるに至ったのである。

村では昨日も今日も明日も ニワトリがトットットットットと庭先を走り、昨日も今日も明日も 首をかしげてポトンっと卵を産むのである。昨日も今日も明日も村は平和で、昨日も今日も明日も子供たちは笑顔なのである。

だからこそ、たった一つの本日の卵が、僕一人だけのために、出してもらえちゃうのである。



…という風景や成り行きを空想しつつ、僕は冷蔵庫からパッケージにお行儀良くならぶ卵の一つを取り出して、熱いうどんの上に 割って落とす。

すると、お約束どおりオンリー・トゥ・ユー、オンリー・フォー・ユー と卵が言うのである。


写真・文: 田好享裕 (たよし ゆきひろ)

 

 

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