「酒は人肌の燗」
熱過ぎてもダメだし、ヌル過ぎてもダメ。
できるなら、
“36.5℃”
人の体温と同じくらいであって欲しい。
そんな吞兵衛たちの気持ちを表した言葉ですよね。
寒い夜、鍋を囲んでおちょこを片手にグイッとやる。五臓六腑、腹中酒が沁みわたれば、
“箸も話も進んでいく”
もうすぐ春、残り少ない冬のお供の「熱燗」なのですが、かつては
「生活の知恵」
だったという話があります。日本人の生活の知恵、その結晶が熱燗には込められているのです。
“生活の知恵?ホントかなぁ、ただ寒いから温かくしただけじゃないの?”
そんな風に思われるかもしれません。
そこで今回は「熱燗」に秘められたヒミツ☆を探ることで、
医者を遠ざけ、クスリを拒む。
そんな生き方のヒントについて考えてみます。
蒸したお米に麹菌を呼び込み、酵母菌の出番を待つ。
これがお米がお酒になるまでのストーリーです。
お米のデンプンを麹菌が食べることで、「甘酒」になる。麹菌がデンプンを
“糖”
に変えるのです。
変えられた糖を目がけて酵母菌が入り込み、糖を
「二酸化炭素とアルコール」
に分解する。
こうしてでき上るのが
“日本酒”
です。
芳しいお酒の味わいは菌たちの活動によって生み出されるというわけです。
菌を呼び込むための必需品となるのが
「杉樽」
そこに炊いたお米を入れて麹菌をカビづけする。
菌たちが活動することで、お酒へと醸成していくわけなのです。
■杉樽の理由は!?
なぜ杉樽なのかというと、答えは
“油脂”
杉には「フーゼル油」と呼ばれるヤニ成分があり、それには
「防腐作用」
があることから使われたというわけです。
せっかくのお酒を最高の品質で飲むための工夫が杉樽。1年にたった1回だけの仕込みを
“失敗で終わらせない!”
そんな先人たちの知恵と工夫が垣間見えるというわけです。
杉樽は品質保持の面で重用されたワケですが、そうした効用以外にも理由がある。
それは日本人はこの杉特有の香りを
「木香」
と呼んで楽しんでいたそうなのです。風流ですよね。
このブログの著者である私は日本酒をこよなく愛するわけですが、
“木香”
なんていわれるだけで、なんだか優雅な気分になってしまいます。
ちなみに杉の産地にもランクがあって、最上級は
「吉野杉」
次いで秋田杉、肥後杉がそれに次ぐものとして広く認知されていたといわれます。
この前、ある大工さんにいわれたのですが、吉野杉の特徴は、
赤みの美しさ
にあるそうです。これもまた、なんとも風情がありますよね。
■一石二鳥の措置!
そんなフーゼル油なのですが、実はこれが、
「頭痛の原因」
になってしまう。
日本酒を冷やで飲むと、
“頭が痛くなる”
そういわれる由縁です。
フーゼル油は熱によって空気に蒸発しやすい性質があるので、燗にすることで成分を飛ばしていく。
つまり頭痛対策こそが
「熱燗の起源」
というわけです。
暖もとれて、頭痛も同時に回避できる。一石二鳥、そんな知恵が熱燗には込められているのです。
“人肌の燗”にする理由は、酒の風味を失わず、同時に木香も失わない。
それと同時に体を温め、頭痛を予防する。
「明日も頑張り、晩にはまた一献」
そんな工夫になのでしょう。
もちろん今の化学操作・化学培養菌を使ったほとんどのお酒の仕込みは、
“ホーローやステンレス”
が主流なので、単に寒いから燗にしているだけなのかもしれません……。
■旬の食べものの秘密
熱燗は今が「旬」なのですが、もうひとつ旬
「真っ只中」
の食材があります。それが
“納豆”
です。
納豆菌は暑い夏を終え、秋口から徐々にエンジンを上げていき、冬本番・スキーシーズンになると、
「絶好調!」
となっていくのです。
大豆の収穫は秋なのだから、当然といえば当然なのですが、
野菜や魚に旬があるように、天然の発酵菌にも旬がある。
納豆菌は別名
“枯草菌”
といわれるように、枯れた落ち葉や収穫後の稲ワラなどを好んで住処にするのです。
ワラ納豆というように、ワラにはたくさんの枯草菌が住みつくことから、
茹でた大豆をそこに入れ、熟成させることを思いついたようなのです。
これまた素晴らしい知恵ですよね。
■改造の実態は!?
でも、納豆は今では一年中、いつでも売られるようになっています。
夏場でスーパーの棚から納豆が消えることはないのです。それはなぜかといえば、
納豆菌が
「化学操作・化学培養」
されているから。つまり夏でも大豆を発酵させ、熟成できるように菌が操作されている。
また古くて質の悪い大豆であっても発酵させられるように、菌が化学的にいじられている。
私たちの知らないところで、天然の菌たちが化学の力で、
改造されている
のです。
どのように菌を操作するのかといえば、まずは自然界から天然の納豆菌を採取してくる。
その菌たちに紫外線や放射線、ガンマ線などを浴びせかけて、
「突然変異」
を促すのです。
そして突然変異を起こした菌を、今度は
“化学調味料や肉汁、ミネラル剤やビタミン剤”
などの培養液で増殖させていく。
この工程を繰り返すことで、糸を引かない納豆を作ったり、強力糸引き、
臭わない納豆などを作ったりする。
また、イソフラボンの多いものやビタミン含有量の多いものを作ったりするわけです。
※参考:『自然食関係者が業界ぐるみでヒタ隠しにする・食の安全アノ事情を業界OBが真相暴露!』
ベジタリアンの人で納豆を食べるのなら、ほぼ得体の知れない
肉汁に浸されている
確率が高い。
自然食品店で売っているような
“無添加・無農薬大豆使用”
と書かれた納豆も発酵菌は化学培養されているケースがほとんど。
食べるなら天然菌で熟成した昔ながらの“本物の納豆”をオススメします。
「ふくふく納豆」は伝統の納豆づくりを復活させた、天然菌納豆のパイオニアなので要チェック。
値段は高いけど、容量も6~8人前と多い。タッパーに入れておけば日持ちし、
変わりゆく味の変遷を楽しむ人もいるようです。
ワラから納豆粒を引き離すのに苦戦するかもしれないけど、ぜひ一度本物の味を試してみて!
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■自然食業界キャリア15年のOBが綴る