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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

『時間稼ぎの資本主義』を読む

2020年05月30日 | 読書
 
 今日は、シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』の紹介。

 この本、実は、私はハバーマスの『デモクラシーか資本主義か』(こちら)を読んでいて、ハバーマスには珍しく? 現状認識が的確だと思って、それがシュトレークのこの著作をベースにしているからであると知って、この本を読み始めたのだった。

 なお、「ハバーマスには珍しく現状認識が的確」と言ったが、社会哲学には、必ずしも現状認識が的確であることが必須ではなく、そうでないからこそ素晴らしい研究であるものもあったりする(私個人の意見だが、ロールズの正義論はその類の研究だと思う:これについては機会があったら説明をしたいが)
 また、私も留学していたときには、ハバーマスのような主張をする人物の、ヨーロッパ社会におけるイデオローグとしての役割の重要性を痛感したりもした。

 で、シュトレークの著作の話に移るが、この著作を「ケインジアンからハイエキアンへの転換を批判的に捉えた」とか、「新自由主義批判」と捉えるのは、この議論の射程を限定することになると思う(「限定」だから誤りではないし、ある範囲での解決策を導き出したいと考えるならば「限定した読み」も意義があると思う)。

 それのみではなく、具体的データを用いつつ(ただし、その用い方には異論や反論もあるだろうし、それは本人も認めている)、その変化を描き出していること。そして、そのデータを用いていることから言えるのは、そうした変化を、なぜ我々が(というのは不正確な主語で、ここでは「ヨーロッパの民衆が」というのが正確な主語)そうした変化を容認したのか? という問いを立てられることにある。そしてその一部への回答は彼の議論から導出される。
 
 と、すこし長くなってしまったので、このつづきは次回にでも書きたいと思う。いずれにしても、読んで価値ある研究であることは間違いない。



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