山下雅人(マサト)は、何度かあたしを指名してきた。
「大野さん、気に入られちゃったね。またあいつからご指名だよ」
柏木がニヤニヤして、あたしに告げた。
払いがいいので、柏木も「上客」と認めているらしい。

あたしは「中出し料」として五千円を内緒でもらっているが、指名料をマサトには負けてやっているのでここから三千円の指名料を柏木に渡さねばならず、差し引き二千円しかプラスアルファがなくなる。
もし、マサトが金欠で「今日はコンドームをするよ」とか「外出し」を選択すれば、まったくの三千円をあたしが吐き出さねばならない。
だから、マサトはあたしにとって「上客」ではないのだ。

いつものように、シャワーを借りて手入れをしてから、彼のベッドに向かう。
「えっちゃん、今日はいやらしいメイクだね」
「そ、そうかしら?」
リップを明るい目にし、アイラインを濃くしたからかもしれない。
あごを上げられ、あたしの唇が奪われる。
ひげの青い剃り跡が、なぜかなまめかしかった。
「握ってくれよ」
そういって熱いかたまりを握らされる。
あたしは、男性の高まったモノにくらくらとした。
商売だからって、冷めていると思われたくない。
あたしもいい気持ちになりたい。
そのためにはお客を好きにならないと、いいサービスはできないのだ。
手指を肉の棒に絡め、笑みを浮かべながら彼の目を見つめ、さらに優しくベルベットのような亀頭を撫で上げる。
「ふふふ」
「ううっ。えっちゃん…」
「マサト…」
はむ…
また、熱いキッスを交わす。
雅人の薄い唇が、あたしの積極的な舌でこじ開けられる。
その間も手の動きは休めない。
「もう、おれ入れてもいいかな」
「いいわよぉ」
そういうと、あたしはベッドに押し倒された。
今日は正常位で始まるのだろうか?
雅人はあたしの陰裂に指を這わせ、左右に肉を開き、食い入るように見つめている。
そしてぎこちないクンニが始まった。
女にはそうしなければならないとでもいうように…
あたしは別にクンニを強要はしなかったし、夫にもさせていない。
ただ、してもらえればそれなりに気持ちのいいものだ。
だから念入りにシャワーを借りてまで手入れを怠らないのである。
ちゅっ…
クリが吸われ、あたしは少しのけぞった。
それを区切りに、雅人は挿入の準備にかかった。
脚は拡げられ、狙いを定める雅人と視線が合う。
「入れるぜ」
「うん」
ぎゅる…
摩擦を感じる挿入だった。
ゆっくりと、しかし半ばは早く奥に到達して、二人は抱き合った。
「ああ」
「マサト」
胸乳は彼の胸板で押しつぶされ、熱い吐息と、コロンの香りがあたしを包む。
そうして、彼はゆっくりと腰を動かして、あたし小舟のように漕いだ。
乳が震え、腹が波打つ。
硬いマサトが抜き差しを繰り返す。
「ああ、えっちゃん、気持ちいいよ」
「マサトもじょうずよ」
つい、姉のような口を利くあたしだった。
「何度、中出ししても五千円でいいんだよな」
「え、ええまぁ」
今日は中に出してもらえるようだ。そのほうがいい。

体位は側位になり、なかなかいいところにペニスが当たってくれる。
首がねじられて、接吻を求められるので、すこしきついが。
「ああ、吸いつくようだ」
「あなたのも、すっごくいい」
この仕事をやる前は、こんなにセックスがいいものだとは思いもしなかった。
夫との淡白なセックスで満足していた。
そんな自分がなんという変わりようだろう。
妊娠の心配が少ない年齢ということもあるだろう。
お客に恵まれていることもあるかもしれない。
彼らに、いままでひどいことをされたことがないのだ。
いつも、だれでも、あたしに優しい。
かりそめにも、愛してもらえるその時間だけであたしは満足だった。

雅人の動きが早くなった。
逝きたいのかもしれない。
あたしはできるだけ協力してやった。
「ああん、いいわぁ、頑張ってマサトぉ」
「えつこっ、えっちゃん!」
「中にちょうだいっ。あなたの赤ちゃんほしい!」
そういうと、雅人はとても発奮するのだ。
ほんとうに妊娠したいわけではない。
「うがぁ」
どぴゅ…
あたしの中に熱いほとばしりを感じて、彼は崩れ落ちた。
痙攣する彼の下であたしは彼の頭を優しくなでてあげる。
「よくがんばったね。マサト」
「えっちゃん」

支払いを終えて、帰る間際に、立ったままで、スカートを履いたままのあたしと繋がろうとした。
「え?こんなところで?」
「いいだろ。少しだけ」
そういうと、尻肉が押し広げられ、下からぐっと異物が差し込まれた。
「ああっ」
部屋の壁に押し付けられて後ろから犯される快感。
疑似レイプだった。
お乳がブラウスの上からつかまれ、乱暴にピストンされる。
さっき逝ったばかりなのに、彼はすぐに昇りつめてしまった。
「あひゅう」
どくどく…
また胎内に出された。
「ごめんよ。がまんできなくって」
「時間よ。ティッシュを貸してくださらない?」
「ああ、すまない」
かがみこんで、雅人が拭いてくれた。
あたしはそそくさとショーツを上げて、スカートを整え、ブラウスの乱れも直してそこを辞した。