マルチリンガル医師のよもやま話

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低炭水化物ダイエットを始める前に

ダイエットしている女性は多いですよね。もちろん男性も。

よく「白ご飯は少なめにしてるんです」とか耳にします。いわゆる低炭水化物ダイエットです。

 実践している人もチラホラいますし、実際痩せたという人も聞きます。中には、詳しくわからずただ、ごはんだけ抜いている人もいます(笑)

今日は低炭水化物ダイエットについてお話ししたいと思います。

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低糖質ダイエットとは

有名なものは  the Atkins Diet と呼ばれるものです。米国の内科医 Robert Atkins が提案したからそのように呼ばれています。実は最近の概念ではなく、Atkinsは50年近く前の1972年に本を出版しました。 

その著書の中では炭水化物の多いものを避け、肉・魚・卵・緑黄色野菜などを食べることを推奨しました。

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the Atkins Diet

実は彼自身、診療所を開業後ブクブクと太っていき、悩んでいました。そんなとき「ほぼ肉だけのメニュー」を食べて週に1kgずつ痩せていくような食事法を目の当たりにし、それをヒントに the Atkins Diet は作られました。

彼の本が出版されて以降、肥満大国・アメリカ国内で人気を博しました。そのせいで、パスタや米などの販売量が低下したそうです。

彼が亡くなった2003年以降、このダイエット法はやや下火になっています。

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ポイント1

人間は太りやすい

現代では飽食の時代で食べ物に困りません。しかし、もともとは食べ物はいつでもあるわけではありませんでした。そのため、人間の体も飢餓に耐え得るように効率よく作られています。 

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人間は太りやすい

それは、体にエネルギーを貯めておけばよいのです。その役割を果たすのが脂肪なわけですね。食べたものを脂肪として貯めて、食べ物がなくなれば脂肪を燃やしてエネルギーにする。

 そんなヒトという生き物がここ100年くらいの短い期間で、農業や畜産などで食べ物に困らなくなりました。しかし、動物の遺伝子はそうすぐには書き換わりません。なので、現代人も当然太りやすい体質のままなのです。

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ポイント2

低炭水化物ダイエットの理論

そもそも炭水化物を取ると以下のようなことが体内で起こります。

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Atkinsはこの流れを食い止めるには炭水化物の摂取をやめればいいと考えました。

そうすることで体内では脂肪を分解してエネルギーとするため体脂肪が落ちる。

※注※ 実際は最初は筋肉から使われていく

何を抜けばいいの?

そもそも炭水化物というものは食物繊維糖質のことです。食物繊維が多く含まれるものは葉っぱ系の野菜や海藻や穀物をイメージしてください。こいつの特徴は腸管で吸収されにくく排泄され体内には残りません。また血糖値の急上昇を抑える役割もあるので食物繊維はしっかり取りましょう。葉っぱ系のサラダとか・・・

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炭水化物とは

ってなわけで、実際抜けばいいものは糖質の方です。なので低糖質ダイエットなんて風にも呼ばれますね。

糖質はその名の通り、糖なのですぐに血糖値を上げます。イモ系など「甘み」ある野菜は糖質多めと考えてください。ですので、白ご飯だけを抜くのではなく、イモ・パン・カボチャ・豆なども抜きましょう

でも甘いもの好きだから食べたい・・・

そんな時に人工甘味料をうまく使うことが薦められています。

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ポイント3

医学面での評価

ここからは医学面での評価や反応についてご紹介します。

実は低炭水化物ダイエット には批判が多いです。その理由は、炭水化物は制限するがそれ以外何をどれだけ食べてもいいという点です。高脂肪食を取り続けることで動脈硬化を進めたり、高たんぱく質により腎臓に影響が出るという指摘もあります。

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低炭水化物ダイエットへの批判

「炭水化物を制限して短期的に体重が減るのは、体内の水分が捨てられるからである」と言う指摘もあります。これは事実であり、炭水化物(つまり糖分)が入ってこなくなると、最初は筋肉から使われていきます。そうすると筋肉に多く含まれる水分も一緒に減るため一時的に体重が落ちます。

筋肉が減ると基礎代謝が落ちます。つまり、痩せにくい体になります。 これは見過ごせませんね。笑

逆に、それらの批判的意見は「低炭水化物ダイエットに関する不勉強によるもの」という低炭水化物ダイエットを推進する医師も多くいます。

副作用?として知っておくべきことがあります。炭水化物制限により筋肉が分解され、次にいよいよ脂肪が分解されるとケトン体という物質ができます。これがまたやっかいなのです。頭痛・口臭・便秘・脱力感などに悩まされるということが言われています。

これは、脂肪が確実に燃焼されている証拠ではありますが、接客業には厳しいですね。笑

さて、実際、世界各国でいろいろな研究がされていますが、研究ごとに条件が違っていたりすることが多く、一定の見解が得られないのが現実です。

 また、難しいのが、人種差です。「白人ではこのデータが得られたが東洋人では違うデータが出た」なんてこともあります。

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ポイント4

で、結局どうなの?

意見がまだまとまっていないというのが現実です。

ここで、一つ比較的新しい研究での結果をご紹介します。アメリカのスタンフォード大学が行った「DIETFITS」という研究があります。

これは糖尿病ではない、一般的な肥満成人を対象に「低脂肪食」「低炭水化物食」での1年間での減量について調べたものです。 

この研究の結論は

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DIETFITS

つまりどちらの制限でもはっきりした差はなかったということです。

これが何を意味するかというと・・・摂取カロリーをちゃんとコントロールしていればそれが低脂肪食だろうが、低炭水化物食だろうが同じように痩せるよということです。

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ポイント5

私見

私は糖尿病の専門医でもありません。あくまで一医師の独り言くらいととらえてください。

長期的に見て低炭水化物食が体重減少の上で効果が大きいということは証明されていません。さらに先ほど紹介した研究でも1年間で低脂肪食と比べて、低炭水化物食が体重減少に優れているというデータもありません。それよりはカロリーを適正に保てば食事内容に関係なく痩せていることがわかっています。

低炭水化物食でその分脂肪を大量摂取した結果、循環器系疾患が増えたとか、早死にするとかいうのは40年も50年も後にならないとわからないわけです。そんな研究まずできません。(研究費がもちません

この論争は結局のところ一定の見解にはつながらないでしょう。

また、低炭水化物食による頭痛・口臭・体臭・意欲低下などあれば、早期にやめる人もでしょうし。 

今わかっていることだけ言うと、短期間での体重が落としやすいのは事実です。ただし、それは筋肉が減って水分が落ちただけです。筋肉が減ると代謝が落ちて、いわゆる「痩せにくい体」になります。 

健康診断前や計量前に「どうしても体重を落としたい」とかそういった場合には短期的に行ってもよいのではないでしょうか。

日本糖尿病学会は2013年の段階で声明を出しており、ダイエットの基本は「運動療法」と「カロリー制限」としました。そのうえで、現時点では低糖質ダイエットなどは推奨しないと述べています。

みなさんはどうしますか?

では、また(^^♪

 

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