書名「太神楽 寄席とともに歩む日本芸能の原点」
著者 鏡味仙三郎 出版社 原書房 出版年 2020
この本の意図は太神楽をたくさんの人に親しんでもらうおうというところにあるのだろう。とても楽しく読めた。子供の頃友だち(のちに相方になる)と一緒に太神楽の家元小仙のもとで学んだことから、この道に入った著者の太神楽をやって良かったという思いと、この伝統芸能を将来に伝えていきたいという思いが込められた一冊で、さわやかな読後感をもつことができた。幼なじみで親友だった相方と一緒に舞台に立つようになるまで、その相方のあまりにも早い死でひとりになったあと、弟子たちと社中をつくりいまの地位を築くまでの一代記を淡々と回想する。著者はほとんどを寄席で演じているというが、その寄席芸である太神楽の芸のひとつひとつを解説してくれているのも、多くの人たちに馴染んでもらいという思いからなのだろう。こうした解説を読んでいるうちに、ロシアに渡り、天才的ジャグラーラステリに影響を与え、ロシアアヴァンギルド演劇にも出演していたタカシマのやっていた技はどんなものだったのだろうという思いに駆られた。この本の中で一番難しいのは一つ毬と書いてあったが、タカシマが残した毬とバチを著者に実際に見てもらったらいろいろなことがわかるのではないかという気にもなってきた。そういった面でもとても勉強になった。一度どこかでお目にかかりお話を聞きたいな・・・