昨年12月、MC・ビートン(M.C. Beaton  本名:Marion Chesney Gibbons 19362019)が亡くなった。ジャーナリストを経験した後、80年代から90年代にロマンス小説作家として名をなし、推理小説を手掛けるようになり「ハミッシュ・マクベス・シリーズ」「アガサ・レーズン・シリーズ」でコージーミステリをリードしていた。コージーミステリのベストセラー作家として常に上位をキープしていた作家である。現在、推理小説作家としては27位、コージーミステリ作家としては1位のポジションである(ファンタスティック・フィクションのベストセラー作家リストより)。

 コージーミステリ隆盛の大功労者の一人である。  合掌

 

 1992年に始まった「アガサ・レーズンシリーズ」は昨年まで30巻刊行されており、今年31巻目”Hot to Trot”を刊行予定となっている。

 本書は24巻目で2013年発表の作品である。

 

 ロンドンで宣伝会社を創業し成功したアガサ・レーズンは会社を売却して憧れのコッツワルドでの引退生活に入ったが退屈な毎日に安住は出来ず事件捜査に乗り出す。警察を出し抜き、次々と事件を解決に導いていった。ついには鑑札を得て探偵事務所を構える事になってしまった。

 本書はアガサ・レーズンが探偵事務所を開設した後の、私立探偵アガサ・レーズンの物語である。推理小説ではあるが、アガサの男性遍歴に加え、作中登場人物の恋愛模様がふんだんにバイプロットで描かれる。ロマンス小説作家ならではの筆致である。

 探偵小説的には物足りないが、ロマンスに加え、コッツワルドの風景風俗や魔女伝説など内容はサービス満点。これぞコージーミステリ。というか、MC・ビートンはコージーミステリの形を作った一人なのであった。

 

 本シリーズは日本語版(英国の小さな村の謎シリーズ 羽田詩津子訳)が13巻目まで出ている。 年2巻程度のペースで出ているので早晩全巻揃いそうである。コージー普及の原動力となってくれれば嬉しい。

 

**特別付録  M・C・ビートンとアガサ・レーズン(英女優アシュレイ・ジェンセン)、仲間達**

本シリーズは海外ではTVドラマとして放映中。誰か、日本語版を出して欲しいものです。

 

 


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<ストーリー>

 ロンドンでPR会社を成功させたアガサ・レイズンは、会社を売却し、引退して憧れのコッツワルド、カースリーのコテッジを手に入れて移り住んだ。退屈な村の生活に耐えきれず殺人事件捜査に介入し、警察を尻目に解決していった。

 

 挙句、近くの町マーセスターに探偵事務所を開いてしまった。事務所には若く壮健な美人トニ、怠堕で密かにトニに熱を挙げているサイモンと高齢の元警官パトリック、フィルの4名の調査員と秘書のフリードマン夫人がいる。世間は不景気だった。アガサは離婚したい妻からの夫のアラ探しや行方不明になった子供、ペットの調査までなんでも手掛けていた。  

 

 細々とした仕事は所員に任せてアガサはカースリーの自宅で過ごすことが多くなった。隣のジェームズ・レイシーは旅行中でいない。著作に励んでいる彼は、目下、旅行案内を執筆している。元夫でハンサムなジェームズは時には話し相手になってくれる。行きがかり上、別れる事になったが、アガサには今でも気になる男である。

 きままなチャールズ・フレイス卿も顔を見せない。たちの悪い猫と同じで自分が退屈になった時だけ出てくる。アガサには、この男と寝た事があるなど信じられないが誰もいないよりいい。退屈だ。

 

 ピディルベリーは、観光コースからも外れ、外から移り住む者も殆どいない古い寂れた村である。メインストリートには教会と雑貨店とパブしかない。

 1年ほど前、村のコテッジに引っ越して来たグロリア・フレンチは評判が良かった。愛想がよく、教会修理の資金集め活動も率先し成功させた。だが、最近では村人たちはグロリアを避けていた。グロリアは人からモノを借りて返さない悪癖があった。

 

 ピーター宅にワインを借りに行って追い返された。雑貨屋で会ったジニーにパン粉を買って返せと迫られた。信用してくれている牧師ガイに、会いましょうと電話したら断られた。後ろで、妻クラリスが「うまく、断った?」と言っているのが聞こえた。グロリアはストレスが溜まると酒に走った。地下室に上質な果実酒を隠していた。先日、教会のフェアで即売会があり、出店した農家のアダ・ホワイトが予備で隠していたカートンを失敬していたのだ。

 

 グロリアはカートンから一本抜き取り、テーブルでグラスに注いだ。一気に飲んだ。喉が焼け、阿鼻叫喚の呻き声をあげて苦しんだ。玄関先で苦しんでいるグロリアを発見した住民が救急車を呼んだが、到着した時には絶命していた。

 

 刑事部長ウィルキスと刑事ビル・ウォンが担当した。果実酒とグラスは持ち去られていたが、検屍医は死因は毒草ルバーブによるものだと分析した。

 

 アガサがカースリーに来て初めて知り合ったのがビルで、心安い友人である。アガサ宅に寄ったビルはグロリア事件を話した。以前なら飛び出すところだが、私立探偵を商売としている今はそうもいかない。金を出してくれる依頼者がいない事を嘆いた。

 

 「アガサ・レイズン探偵事務所」にジェリー・タレントが訪ねて来た。彼はピディルベリーの教区委員会の委員長だった。グロリア事件で、小さな村で互い同士疑い合うようになった。地区の平安のため至急捜査して欲しいという依頼だった。探偵料は資産家の彼が出すと。

 

 引き受けたアガサはトニを連れてピディルベリーに行き、パブ「グリーン・マン」に宿泊した。宿には化学の教師でイケメンのブライアン・サマーが夏休み休暇で来ていた。アガサの胸は高鳴った。

 住民たちに話を聞いた。牧師ガイとその妻クラリスにも。クラリスと親しいサマンサは村のマナーハウスに住んでいるレディだった。死んだ夫は労働党の幹部で、貴族の称号を得た労働貴族だったが村人たちは唯一のレディとして遇していた。

 クラリスやサマンサなどと遊んでいるという噂があった、村はずれに住むヘンリー・ブルースを訪ねた。村人の便利屋をしている無骨な中年男でグロリアから誘われたが相手にしなかったという。農家のアダ・ホワイトは実直な夫人だった。自慢の果実酒を持たせてくれた。

 薄汚い老婆トリップは杖2本で、よろよろと歩いており、村人に本を読ませたり家事を手伝わせていた。トリップは70過ぎまでブロードウェイのレディ・クレイトンのマナーハウスでコックとして働き、レディの死後、故郷に戻って両親から引き継いだ家で暮らしていた。

 グロリアはひどく評判が悪かった。借りたものを返さないだけでなく、目に付いたものを盗み、しらばっくれていたという。

 だが、事件の捜査に役立ちそうな情報はなく、アガサはひとまず帰る事にした。村に捜査本部を設置していた警察もお手上げだった。

 

 ブラブラしている村の老人クレイグ・アプトンはアガサの車から果実酒を盗んで山に行った。密猟をしており罠を見回りながら酒が手に入れば飲んで寝ていたのだ。

 翌朝、パブの主モーゼ・グリーンが愛犬の散歩で山に行き、死んでいるクレイグを見付けた。果実酒に毒草が入っていた。

 

 狙われたのはアガサだと思われた。果実酒をくれたアダ・ホワイトが毒薬を仕込む筈はない、村人の誰かだ。アガサは怖気づいた。刑事ビルもアガサを心配し、調査中断を薦めた。

 

 チャールズが「グリーン・マン」を訪ねて来た。貴族の彼は貴族の相手が得意である。サマンサのマナーハウスを訪れた。グロリアにパールのネックレスを持ち去られたが取り返したという。

 

 ロンドンのTV局からインタビューの申し出があった。グロリアは以前ロンドンに住んでいた。番組に出演すれば、ついでにグロリアの知人調査も出来る。

 TV局に行ったアガサは、プロジューサーの手違いで前の番組の料理番組への出演も頼まれた。アガサに出来る料理は電子レンジに入れる事だけである。アガサはオムレツを頭からかぶり、その上、コンロがガス爆発までした。ハチャメチャな展開に視聴者には大好評だったがアガサはおかんむりだった。だが、TVを見ていたグロリアの知人はアガサを歓待して話してくれた。妻の目の前でも男に擦り寄る、モノを返さない。グロリアの評判は悪かったが、殺そうとまでする者は見当たらなかった。捜査の進展のなさに飽きてチャールズは帰った。

 

 村に戻ったアガサも、ひとまずカースリーに戻る事にした。車のエンジンルームにネズミの死骸が置かれていた。村人はアガサを追い返そうとしているのだとしか思えなかった。

 

 カースリーに戻ったアガサは牧師の妻ブロクスビーに会いに行った。アガサが信頼できる数少ない友人である。立場上、情報通でもある。カースリーにマリー・ゴーツーベッドという未亡人が越してきていた。アガサは、云いにくそうなブロクスビーから、ジェームズがデートしている事を聞き出した。どうしようもなく気になるが他人の仲だ。

 

 アガサは8月の後半、南仏でバカンスを過ごした。

 

 9月に入り、フィルと「グリーン・マン」に戻った。70代のフィルは、戦闘的なアガサと真逆で、人受けが良く情報を引き出す名人である。

 村人に話を聞いた。彼らは落ち着いていた。一様に、2件の殺人は外から来た殺人鬼の仕業だろうと言う。もう、犯人が戻ってくることはないだろうと。

 雰囲気を察して、ジェリーと話すと彼は事件は解決しているわけではないので調査を進めてくれと言う。投げ出す事の嫌いなアガサは奮い立った。

 

 グロリア宅では、娘のトレーシーが来てコテッジを売却する準備をしていた。グロリアは娘トレーシー、その兄ウェインと疎遠だった。父の遺産を独り占めし、手癖の悪い母を兄妹は見限っていた。遠くに住む二人にはアリバイがあり犯人ではありえなかった。

 コテッジを見せてもらったアガサは、数点不釣り合いなアンティーク家具がある事に気付いた。家具の売却は待ってもらうよう頼んだ。

 

 老婆トリップが自宅で倒れているのを訪れたクラリスが発見した。病院に搬送され、警察が調べたが、下剤を飲んでおり、重傷だが生命の危険はなかった。警察の情報はパトリックが元同僚から聞き出して教えてくれる。

 

 トニには父親よりも年上の男に魅かれる傾向があった。先日も女性への暴力傾向のある中年男とデートしているのをチャールズが発見し、トニは目覚めて別れたばかりだった。

 探偵事務所にアガサの親戚格で出入りしているジェイムズが相談にのっていた。ジェイムズにはデート相手のマリーがいたし、仲のいい伯父と姪のような雰囲気だった。サイモンは「グリーン・イン」にいるアガサにメールで告げ口していた。おじ様に弱いトニの特性を知っているアガサは気をもんだが何もしなかった。トニの相手に口出しして大間違いを犯した前科があった。アガサ不在の事務所はトニが仕切っている。大切な人材でもあった。

 

 事務所が多忙になったのでフィルを返した。入れ替わりのようにロイ・シルバーが訪ねて来た。ロイはアガサがPR会社を経営していた当時の部下で、唯ひとり、売却先の会社で幹部になっていた。調子のいい、要領だけで生き残ってきた男の子である。アガサがマスコミで話題の事件を手掛けていると知って、アガサに関わればマスコミに登場できると踏んで出かけて来たのだ。アガサには、ロイの魂胆はミエミエである。

 

 カースリーに寄ったロイはジェイムズがマリーを振ったという情報を持ってきた。プロポーズしようとしたジェイムズは、マリーのあまりの平凡さにアガサの影がちらついて、結婚を言い出せなかったのだった。マリーも察し、二人は疎遠になった。

 

 ロイと牧師ガイを訪ねた。彼は神に犯人を教えてくれるよう祈っていると云う。アガサは狂人だと決めつけた。老婆トリップは戻って来ていた。来訪者は多く、犯人の見当はつかないと言う。ロイは老婆に逃げ腰だった。

 

 トニから休暇と取りたいと言って来た。彼女の権利である。アガサは事務所に戻る事にした。アガサには明かさなかったが、トニは、旅行案内を書くためスペインに行くジェイムズに誘われて、一緒に行ったのだった。

 

 ロイは村に残る事にした。事件を解決すればマスコミの脚光を独り占めできる。村人の一人に犯人が分かったと話した。牧師ガイだと。噂はすぐに全員に伝わった。村人はロイに出て行けと迫った。

 車に駆け込んだが動かない。魔女狩りだ。村人を恐れて宿に戻れず車内に退避していた。時間を持て余してグローブボックスに入れていたブランデーを口にした。ロイは昏倒し、見つけた村人ピーターがガラスを割って引き出し病院に搬送した。

 

 ビル刑事がアガサにロイの受難を知らせてきた。アガサは、事務所に来ていたチャールズと病院に走った。絶対安静棟でロイは新聞記者に携帯で興奮して話していた。懲りない男である。

 

 アガサはチャールズとピディルベリーに調査に行った。チャールズはブライアンが怪しいと言う。教師の彼は、長期休暇で農家のアダ宅に滞在している。不在なので、彼が行っているかも知れない森の空き地に探しに行った。彼はいなかったが、空き地にある演台のような岩には血の痕が残されていた。悪魔崇拝儀式が行われたように見えた。

 ジェリーに村の伝説、噂を聞きに行った。悪魔崇拝が行われていたのは数百年昔の話だと。ジェリーは、村は落ち着いたので調査はやめてくれと言った。

 村人は相手にしてくれない。雑貨店は何も売ってくれず、「グリーン・マン」からは追い出された。戻るしかない。

 

 数週間後、弁護士から連絡があり、ジェリーの遺言を告げられた。2週間前に心臓発作で亡くなっていた。警察が調べたが不審な点はなかったという。

 養子だった彼は、独身で通したため縁者はおらず、遺産は動物愛護団体と教会に残したが、捜査を続けてくれと相当額をアガサに残していた。彼は、脅されて調査を中止したのだとアガサは思った。だとすれば、村人も誰かに脅されてアガサの調査を妨害しているのだと。

 

 村には出入り禁止のアガサは、トニを連れて隣村アンダー・プレアサンスに泊まった。トニは、ジェイムズとスペインに行ったが親子としか思われず互いに気まずくなって戻って来たのだと話した。ジェームズがポロポーズをやめたマリーは、すぐに農家のトムと婚約していた。

 夜になり、森の空き地に行った。ブライアンが鶏の首を切ろうとしていた。アガサが止めようとするとブライアンは癲癇を発症して昏倒した。セルスターの病院に運び、駆け付けたアダは鶏やガチョウが頻繁に盗られていたと言う。癲癇を病んでいたブライアンに民間療法を記した古い本が送られてきて、思い悩んでいた彼は試していたのだった。魔女の療法である。

 

 病院で牧師の妻クラリスや貴族サマンサに会えたが、アガサの疑念に反し、脅されるような事はないと言った。

 

 アガサはロンドンに行き、サマンサが女優時代に出ていたTVドラマのプロジューサーに会った。貴族の家庭問題を描く昼メロでメイドの役だったが、ロケ地のブロードウェイ、クレイトン家で当主を誘惑し、夫人が怒って追い出された事があるという。老婆トリップが25年前コックをしていた館である。

 

 アガサはブロードウェイに行った。相続人のいなかった館は売却されていたが元使用人から話を聞けた。事件の後、当主は死に、その1年後夫人も心臓麻痺で死んでいた。老齢で退職を迫られていたトリップは遺産を受け取り、夫人が約束していたと言い張って家具を貰って実家に戻っていた。トリップは老獪で嫌われていた。サマンサと当主をとりもっていたのはトリップだと言う。薬草、民間療法に詳しかった。

 夫人の死に際に臨席したのは牧師ガイだった。ガイはパブのウェイトレス、クラリスを妊娠させ。トリップから入手した堕胎薬を使ったと噂され結婚後ブロードウェイの教区を離任していた。

 

 昔の新聞記事を調べるとトリップは仲間と魔女集会を開き、薬物使用で捕まった過去があった。魔女につかれた過去があったのだ。今でも魔女だと信じているのかもしれない。

 

 脅迫しているのは老婆トリップ以外、考えられない。だが、アガサは村には行けない。海外から戻ってきたジェイムズに頼む事にした。マリーやトニの件で、アガサに気まずいジェイムズは喜んで引き受けた。パブ「グリーン・マン」に宿をとった。秋も深まっていた。

 

 パブにいるだけで大半の村人とは知り合える。ひときわ目立つハンサムなジェイムズの出現は村人を呼び寄せた。サマンサはマナーハウスに誘い、アガサが疑っている老婆トリップも現れた。老婆にはグロリアを殺せそうもないし、理由が分からない。

 グロリア宅にはアンティーク家具が残されており、トリップはとレイトン家から家具を頂いていた。家具をグロリア宅に運んだとすれば便利屋ヘンリーである。翌日、話を聞く事にした。

 

 教会の日曜礼拝で、牧師ガイは「神が犯人を告げた」と言った。村はどよめいた。

 ジェイムズはヘンリーに会い、巧妙にトリップに頼まれてグロリア宅に家具を運んだことを聞き出した。サマンサから安物家具ばかりと揶揄されたグロリアが口八丁でトリップから借りたのだと。アンティーク家具は、ひと財産である。

 

 夕方、ジェイムズは通りで後ろから4輪スクーターにぶつけられ転倒した。トリップだった。治療をするからと云われ彼女の家について行った。家は停電で、台所のブレーカーを上げてくれと云われ、近づくとフロアマットの下の穴に落ちた。古井戸だった。水がないのは幸いだったが、へンリーが蓋が被せたので出ることは出来ない。携帯は通じなかった。叫んだが声がかれるばかりだった。

 

 アガサはジェイムズが電話に出ず心配した。ブレクスビーにパブの主モーゼ・グリーンに聞いてもらうとジェイムズは宿に戻っていないと云われた。刑事ビルに電話して警察に捜索を依頼し、制限速度を無視して走った。

 

 トリップ宅に行き、彼女と対峙した。大音声のTVを消すと台所からジェイムズの声がした。バレたと知ってトリップはヘンリーにアガサを捕まえて井戸に投げ込むように命令した。アガサは抵抗したが、後ろからトリップが杖で頭を打ち据えた。

 外の様子を感じたジェームズは井戸を這い上がった。彼は山岳隊員だったこともある。ヘンリーがアガサを投げ入れようと井戸蓋を開けると同時にジェイムズが飛び出し、ヘンリーの足を払った。だが、力尽きた。

 ビルが警官隊を引き連れて来た。ジェイムズは二人を逮捕するよう頼んだ。

 

 トリップは頑固に否定したが、ヘンリーはカナリヤのように喋った。グロリアのワインに毒草を入れ、壜とグラスを持ち帰ったのはトリップから指示されたヘンリーだった。トリップは薬草から抽出したものを自宅に各種持っていた。薬だが毒でもある。

 クラリスとサマンサはヘンリーと関係しておりトリップに脅されていた。ジェリーはホモで、町で男と関係しているのをヘンリーに見られ脅されていたのだった。ブライアンの仕業に見せかけようと魔女伝説を流したのもトリップだった。

 

 トリップは一連の殺人で逮捕されたが、トレイトン夫人やジェリーなどの心臓麻痺は立証できなかった。

 

 拘置所に、カナダでの孫娘との同居生活から戻ってきたロージィ・ブラックスミスが訪れた。占いに長けた老女である。魔女仲間のトリップの話を聞いて、アガサの暗殺を請け負った。クスリは元動物医で老人センターにいる仲間のサラに訳をいって用意させた。

 

 あやうく逃れたアガサがロージィ宅に行くと彼女は薬を飲んで死んだ。話を聞いたらしいトリップはボタンを飲んで死んだ。魔女の第5ボタンには毒薬が仕込んでいる。急ぎ、老人センターに行くとサラも死んでいた。

 

 ピディルベリーの魔女は絶滅したのだった。