能率技師のメモ帳 中小企業診断士&社会保険労務士のワクワク広島ライフ

マネジメント理論を世のため人のために役立てるために・・・経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

九鬼周造にハマる・・・西洋哲学と東洋美学をクロスオーバーさせた哲学者 「いきの構造」と「時間論」

2020年06月04日 | 本と雑誌

日経新聞で音楽家の坂本龍一さんが、九鬼周造の「時間論」を読んでいるということを知り、書斎の奥から岩波文庫を引っ張り出してきました。
十年以上前に買って「積ん読」になっていた難解な哲学書です。

九鬼周造・・・大学時代、哲学の先生から勧められて読んだのが「いきの構造」。


キルケゴール、ハイデカーなどの実存主義を中心とした西洋哲学の流れを学びながら、
その深さとコンセプトに共感しつつあった若き日、一般教養の哲学の教授は、ウィトゲンシュタインの「論理哲学論」と九鬼周造の「いきの構造」を薦めてくれました。

ウィトゲンシュタインはすぐに投げ出しました(超難解!)が、九鬼周造の「いきの構造」には、はまりました。

本当に、粋な、意気な一冊。

江戸の遊郭で生まれたとされる「いき」を哲学的に論考していく、とても哲学書とは思えない本でした。

「媚態」「意気地」「諦め」から構成される「いき」。

「意気地」とは、やせがまんと心の張り。

「媚態」とは、男女間の可能的関係、湯上り姿、抜き衣紋、つぶし島田、縦縞模様。

「諦め」とは、はかなさ。

図が出てくる哲学書は、はじめて見ました。

さらに、驚いたのが、九鬼周造の生涯・・・。
こちらも、粋で、意気な一生。
米国全権大使などを務めた男爵・九鬼隆一の四男として東京芝に生まれ、東京帝大大学院で哲学を専攻。
ドイツ、フランスに留学。帰国後は、西田幾多郎などのいた京都帝大で教鞭をとります。

略歴だけを見ると、スーパーエリートですが、欧州留学時代はカフェや飲み屋で女遊び、帰国後は、妻と離れて京都に単身赴任、離婚後は京都の芸者と結婚、祇園から大学に通勤していたとの噂もあります。

九鬼周造の母親も京都の芸者・波津。
父隆一の付き人だった岡倉天心とともに米国に渡ったものの妊娠のため、天心と帰国。
この帰りの船の中で、波津と天心は関係を深めていきます。
結局、この恋は、離婚というかたちで終結。
岡倉天心は手塩にかけた東京美術学校(東京芸大)を追われます。

明治、大正、昭和の男たちは、九鬼や白洲次郎のようなダンディーでグローバルなサムライがいたんですね。

時間論・・・今読んでも、やっぱり難解です(笑)。


時間論
九鬼周造著  小浜善信編  岩波文庫刊  1020円+税

時間論は、「時間の観念と東洋における時間の反復」「日本芸術における無限の表現」「ベルクソンとハイデッカーの時間の問題」「文学の形而上学」から構成されています。

原文はフランス語。
400ページを超える大作ですが、その半分は小浜善信の解説。とても丁寧に分かりやすく書かれています。

九鬼が提唱した「偶然性の問題」の切り口から入っていくと、何となく理解が進みます。
九鬼周造をウヰスキーを舐めながら親しむ初夏の夜。
お薦めの一冊です。


この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京、北九州が、ちょっと心... | トップ | 徒歩で通勤・・・広島城あた... »
最新の画像もっと見る