映画館上映 パリ・オペラ座バレエ「眠れる森の美女」(2013年) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ルドルフ・ヌレエフ 

ミリアム・ウルド=ブラーム/マチアス・エイマン/ヴァランティーヌ・コラサント/フランソワ・アリュ

 

 2013年の公演の収録映像です。これは7年前に映画館上映された時にも観ましたが、今回改めて観ると、現在活躍しているダンサーたちがチラホラ目に入ってあの時はこんな感じだったんだーと新鮮に感じたり、あの人は今……?💦という人もいてしみじみしたりと、メイン以外のダンサーにも目が行ってしまった。たとえば1幕の宮廷人の中にジェルマンがいたり(後方でチラチラ動いていた😬)、2幕の王子の取り巻き貴族の中にユーゴがいたり、レオノールローラ・エケが妖精や森の精を踊っていたり。ちょっと昔の映像を見るときって、そういう発見をする楽しみもありますね。

 

 ミリアム(オーロラ姫)とマチアス(デジレ王子)は極上でした🎊  弾むようなステップで登場したミリアムは一瞬で16歳の少女になっていた。溌剌とした中にも気品があり、ローズアダージオはオーロラの気持ちに寄り添いながら見入りました(実はこのとき映像と音楽が少しずれていることに気付いたんだけど、ちょっとひどいな💥)。2幕で幻影として踊るミリアムは表情を殺した透明感のある踊り。3幕GPDDは大きく華やかで、大人に成長した女性を感じました。技巧的なテクニックも「張り切る」のではなく、あくまでも王女としての品位を保った繊細な踊りだった。

 マチアスは憂いをたたえた2幕と、愛の対象と巡り会えた幸福を噛みしめる3幕との心理的違いがダンスからもはっきり分かる(と思いながら観ました)。それにしてもなんと軽やかなジャンプ、浮き上がるようなステップ✨ 全く力みがなくて足に羽が付いているみたい。とてもややこしい足さばきだけど、これを鬼振付に見せずにエレガントに踊り切るところが素晴らしいです。GPDDは、サポートでは自分を殺し、ソロでは優雅に輝くという、理想的な王子でした。

 ブルーバードのアリュが素晴らしくて大大喝采を浴びていましたねー。私も、観ながら心の中でウッワー😳  と何度も声をあげましたよ。アリュを早くエトワールに‼️

 

 舞台セットは重厚。建物はネオクラシックなデザインだけど、遠景はロココ調の絵画を連想させました。でも(ここから以下ネガティヴ→)プロローグと1幕の宮廷人の衣装がゴテゴテなのは、ロココだからと思えば目を瞑れるけど、100年経ってもそれが洗練されていなくてゴテゴテのままだったな😞  3幕の冒頭でバロック風の音楽とダンスを入れたのは、眠りから覚めた宮廷人はまだその当時の意識でいるからだそうで、衣装もそういうことなの?(もちろん個人の好みです🙇‍♂️  華やかで豪華な衣装と見る人もいます)。振付は、やはり足さばきが忙しすぎて、それが群舞のダンスではバタバタして見えてしまう。フィナーレは長〜くひっぱるんだけど、テンポが早くなるにつれてステップが忙しくなり、何かあまり優雅じゃないなと思ってしまった🌀

 

 でもっていちばん気になるのは(些細なことだけど)エグい演出なんですよね。それが個人的にヌレエフ版「眠れる森の美女」が好きになれない理由。1幕で編み物をしていた村人に死刑宣告をするシーンで、首と手に枷を嵌めるのはやりすぎ😔  品のない過剰表現だといつも思う。また、カラボスを倒そうと向かった王子たちが死ぬのも(カラボスの魔法で相討ち?)余計な演出で😖  悪趣味な残酷さです。ヌレエフの他の振付作品にも見られる、こうした、不必要と思えるほどのえげつない、ちょっと毒っぽいシーンが好きになれないな。ちなみに「眠れる森の美女」で好きなのはマリシア・ハイデ版(きっぱり‼️)。

 余談ですが、4人の王子のうち、アフリカの王子(ジュリアン・メザンティ?)が肌をブラウンに塗っていて(彼の本来の肌の色ではないと思う)、2013年当時でもそうだったのかとびっくりしました。奇しくも今、パリ・オペラ座ネーフ総裁が人種ステレオタイプに関する提言をしましたね。

 

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