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親ができなくなった事にストレスをためない考え方

夜9時。
廊下から母がやってくる足音が聞こえてくると、反射的にため息が出てしまう今日この頃。

母が何をしにやってくるのかはわかっているので、私はやれやれ、と思いながら椅子から立ち上がります。

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テレビの点け方がわからなくなった母

「テレビ点かないんだって!ちょっと見て」
予想を裏切ることのない母の訴え。
毎日繰り返されるこのシチュエーションは、かれこれ10日になるでしょうか。

そのうえ、寝室のテレビだけではなく、数日前からはリビングのテレビも点かなくなったと、朝7時にやってくるようになったので、私のため息も深くなる一方です。

テレビが壊れたわけではありません。
母は、テレビ本体の主電源を切ってしまい、次にテレビを点ける時にわけがわからなくなってしまうのです。

昔から、テレビ本体に灯る赤い待機ランプが「もったいない」と気になり、主電源を切ることが当たり前だった母。

自分で主電源のスイッチを切ったのですから、点けるときも主電源を入れればいいだけの話なのですが、それがわからなくなってしまった母は、また少し認知機能が後退したのでしょう。

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認知症の母に説明しても無駄なこと

何度も母に「主電源は切るな」「リモコン操作だけでいい」「テレビ本体には触るな」と説明はしているのですが、理解できるわけもなく。

その場で何十回と説明する言葉は、まるで砂が指の間からサラサラと落ちるように、母にとってはなんの意味もないということを、私はとっくにわかっているというのに。

私はまだ母に期待をしているのかもしれません。

なにを?

母はまだ教えたらできるはずたという希望?
私を育ててくれた母が、こうであってほしいという願望?

私の失望感やうんざりする感情、めんどくさいなと思ってしまう気持ちは、次第に増幅していき、廊下から母の擦るような足音が聞こえてくると、心がザワザワしていました。

介護でストレスをためない考え方

しかし、ある日を堺にそれらが霧のようにぱぁーっと晴れていくのがわかりました。

私は、母がまたひとつ出来なくなったことを嘆き、この先もっと増えていくことを想像し、得体の知れない不安がインクのシミのように広がっていくことを恐れていました。

だけど、母は88歳になる認知症です。

母がこれまで生きてきた背景を知っているからこそ、希望、願望、切望も入り混じってフィルターがかかってしまいますが、「88歳、認知症」というキーワードだけで捉えたら、母の言動もそれが普通だと思うのです。

出来なくなったことを嘆くより、まだ出来ることを見出して行くほうが、明るい希望を持つことができます。

母はテレビの点け方はわからなくなったけど、困ったときに私を呼びに来ることはできるじゃないですか。
それすらもできなくなって、点かないテレビの前で呆けたように座っているわけではないのだから、母の思考回路もまだまだ捨てたもんではありません。

母がまだ自分でできることはたくさんあります。

できないことには目をつぶり、母が出来ることには誇らしく思おう。

子育ては、毎日出来ることが増えていき成長の喜びを実感できるけれど、親の介護は、それの逆パターンなのです。

まだこんなに出来る!と思いながら見守り、たとえ出来なくなったことが増えてきたとしても、致し方ありません。

そう思うしかないのです。

成長も退化も、それが人間の自然の姿ならば、私に出来ることは見守って時に手を差し伸べること。

3人の子育てで十分に学んできたことではないですか。

そんな風に考え方を切り替えたら、私のどんよりとした灰色の空にも青空が覗いてきた、そんな今日この頃なのです。

 

コメント

  1. 福岡の わっこ より:

    こんにちは。

    「できなくなったことを嘆くより、まだこんなに出来ることがあると、できることに目を向けよう」最近私も感じていたことでした。
    それでもまだ私は、この先もっとできないことが増えていく不安との間で気持ちは行ったり来たりで不安定でいます。
    一人暮らしの母(83歳)に認知症?と気になり始めて1年半。初めは老化による物忘れかも・・・と思っていたけれど、日に日に判断や理解ができなくなってきていると実感するこの半年。
    物忘れ外来受診したほうが良いのかな?
    施設を探し始めた方が良いのかな?
    と悩みつつ、嫌がるであろう母のことを思うとなかなか前に進めずにいます。
    そらはなさんのお母さんのお話は、半年後1年後の母や私の姿のような気がして、いつもいつもありがたく読ませていただいています。
    これからもよろしくお願いします。
    PS.味噌の熟成具合はいかがですか?我が家もそろそろ作ろうかと思っています。

    • そらはな より:

      福岡の わっこさんへ♪
      頭の中で理解はしていても、感情はその通りにはならないというのが人間ですよね(^-^;
      お母さま、一人暮らしなのですね。
      本人が嫌がることを勧めるのもなかなか大変です。
      結局、何か大きな転機があってから物事は動いていくのかもしれませんが、可能な限りいろんなことを想定しておくのは良いことだと思います。

      我が家の手作り味噌・・・ものすごくよい香りがしてきたので、熟成が早いなぁ・・・と思っていたら、な、な、なんと、袋に小さな穴がいくつかあいていました(T_T)
      オカメインコのハナが足でフミフミしたついでに、くちばしでつついたのでしょう。
      どうりで外側まで味噌の香りがするはずです。
      カビも生えていませんから、このまま様子をみたいと思います。

      • 福岡の わっこ より:

        なんと可愛いいたずらっ子のハナちゃん(*^-^*)そんなこともあるのですね。
        手作り味噌は、毎回出来具合が違ってそれも一つの楽しみですよね。