少しブランクをつくってしまいましたが、「将来の予想と合理的期待仮説~補講1~」編の記事です。今回も時事的な話を交えてです。

 

現在世界中の国々が中国で発生したコロナウィルス蔓延で激しい供給・需要ショックに見舞われています。旅行やイベントなどの自粛や中国等から部品や原材料の調達を行ってきた製造業等の供給停止によって経済活動が沈滞してしまう事態を招いてしまいました。当然のことながら多くの事業者は突如急激な減収・減益という被害を被り、賃金や借入金の返済、光熱費、賃料、税金などの固定費支払いに苦慮することになります。キャッシュフローが詰まる状態で経営破綻や廃業の危機に晒される事業者が急増しているのです。もちろん会社の従業員は非正規雇用者を中心に休業で所得が激減したり、倒産・廃業で失職の危険性が高まっています。

 

そうした中で政府や各政党、経済学者等から多くの経済対策案が出されます。世界的にいま多くの国で打ち出されているのは緊急の(量的)金融緩和政策や企業の資金繰り対策だけではなく各種減税やかなり思い切った給付金の交付まで行われています。日本でもこうした案の他に昨年2019年10月に税率を10%に増税した消費税を8%ないしは5%、あと0%や消費税廃止を主張する人たちが大勢現れました。私も消費税税率0%や廃止という案は賛同しかねますが、8%~5%への税率引き下げはすべきだと考えています。その理由ですが、「新・暮らしの経済」~時評編~」の「”内需総崩れ”状態の経済に対するダメージコントロールができない政界」という記事に書きましたとおり、コロナショックが起きる前の2019年10~12月で既に日本のGDP(総需要)のうち、消費はもちろんのこと民間投資まで大きく落ち込んでいます。どう考えても消費税の増税によるものでしょう。

 

国会で安倍総理らに消費税増税の悪影響について質問する馬淵澄夫議員

動画

https://www.youtube.com/watch?v=hbPNqtNtdws&feature=emb_logo

 

しかしながら現在麻生太郎財務大臣や岸田文雄自民政調会長の他に、財務省色が強い経済学者などの口から「いま消費税を減税しても駆け込み減が起きてしまって、コロナショックで打撃を受けた事業者がまた痛めつけられてしまう」などといった屁理屈が出てきています。こんなことを言っていたら減税が永久にできなくなってしまいます。(逆をいえば増税も簡単にできなくなるんですけどね。)

 

自分は消費税減税が決まった後の買い控え発生について、あまり気に留めていませんでした。仮にそれがあったとしても、増税と異なって後で需要増加という予想や期待を抱けます。業者が一時的に売り上げ減があったとしても、後で巻き返しができるわけです。現在資金繰り悪化で苦しんでいる業者はかなりの数に及んでいるかと思われますが、先の見通しが明るければ短期の苦境なら耐えるということができます。相当切羽つまった事業者についてはつなぎ融資制度や税の支払い免除・延期などで支援すればいいでしょう。

 

上の話と重なりますが、現在資金繰り悪化に陥って廃業を考えている事業者はコロナショックの打撃だけが理由なのでしょうか?私はそれより前からはじまっていた景気減速の動きや消費税増税後のさらなる消費冷え込みも加わっている可能性が高いと見ています。しかもそれは単独でも深刻です。もし仮にコロナショックがなかったら、消費税の悪影響についての議論が今より白熱化していたかも知れません。

 

日本の場合、忘れてはならないのはいま起きている劇症的なコロナショックだけではなく、中~長期不況も同時に進んでいるということです。そこが他国の状況と大きく異なります。数か月後にコロナショックが収束したとしても、急減した需要がなかなか回復せず後の経済活動に重い後遺症を遺してしまうといったことが考えられます。

 

日本経済はいまのコロナショックだけではなく、消費税増税による消費冷え込みという障害物を抱えています。これをいち早く取り除かないといけません。一部でいまのコロナショックへの対応を最優先させるべきで消費税減税は収束後にすればいいという人がいますが、私はそう思いません。消費税減税も同時進行で議論しないとコロナショックからの立ち直りも難しくなるのではないでしょうか。

 

資金繰り悪化に苦しむ民間企業への支援は助成金やつなぎ融資などの対策だけではなく、コロナショックが収束すれば需要が元に戻るという予想や期待をつくることもしないといけません。中~長期的に安定的な経済成長が続くという見込みがないと、投資ならびに事業縮小や廃業という選択をしてしまう事業者が続出し、雇用悪化を招きます。

 

消費税の減税はアベノミクスが行われている中でも伸び悩み気味だった消費の回復につながり、今後の安定的な経済成長へとつながることが期待できます。そのメリットは一時的な駆け込み減というデメリットを超えるものでしょう。もしどうしても駆け込み減を防ぎたいのであれば消費税減税が行われる前日が有効期限のクーポンを発行して需要を維持することが可能です。

 

消費税減税をすると需要の駆け込み減が起きるという屁理屈は消費税の増税を推し進めてきた財務省が国会議員や御用学者に吹き込んだ入れ知恵に過ぎません。

 

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