終わりのない話

昨日のわたしと明日のきみが出会う話

サッカーが止まらない

「サッカーってさ、なんであんなに転んでばかりなのよ」

「そりゃあほら、ディフェンダーが手を入れてきたり引っ張ったり」

「地面からモグラが顔を出していたり?」

「足をかけられたり肩が入ってきたり」

土偶が出てきたり?」

「出ないよね。遺跡かよって話になるよね」

「でもさ、ほとんどわざと転んでいるわけでしょう」

「そりゃあ耐えてドリブルし続けることもできるけど、そもそも引っ張ったりするのはファウルだからさ」

「転んでも転ばなくてもファウルなんでしょう?」

「まあ、そうだね」

「そしたら転ぶほうが怪我のリスク高くならない?」

「無理してボールキープするのも危険だよ」

「東京都心に雪降った以上に転ぶよね」

「そうかもだけど」

「ペンギンの群れくらい転ぶよね」

「そうかもだけどさ」

「でも、ダルマさんが転んだ! って掛け声はわけわかんないよね」

「そうだよね。なんでそこで動きを止めるのかってね」

「ウイルス漏れちゃいました! ならわかるのにね」

「遊びの範疇超えちゃってるけどね」

「あとサッカーってさ、なんで変な方向にシュートするわけ?」

「わざとじゃないよ」

「ゴールあんなに広いのにさ、枠にすら飛ばないじゃん」

「トップスピードでシュート打つのは相当難しいよ」

「あれラーメン屋だったら激しく湯切りして丼それて床にべちゃんな状況だからね?」

「まあサッカーとラーメンは違うからね」

「ロケットだったら月に打ち上げるはずが日本海に打ち込んじゃう感じだからね」

「それは意図的なやつだ」

「なーんかサッカーってすぐに途切れるし中途半端なんだよなー」

「あれだけ激しいスポーツなんだから無理もないよ」

「でも世界で最も人気のあるスポーツなんでしょう?」

「そうだね。競技人口も視聴人口もダントツでトップだね」

「世界中にサッカーやっている人いるんだからさ、なんで足? ってなるじゃん」

「はい?」

「みんながやっているスポーツなのに、なんで足使っちゃう? って」

「いやーごめんわからないや。その感性」

「ヒトって高等な動物なのにさ、なのにあえて手を使わない感が前に出るじゃん。わざとらしい感じで」

「うがった見方だなあ」

「本当はバナナ剥くのも手を使えば簡単なのにあえて足で的な」

「そういうことじゃないんだが」

「でも足も頭も胸も使っていいわけでしょう?」

「まあね」

「でも手を使うと、ちょっと触れてもギャーギャー。満員電車の痴漢かよって」

「それとは違う」

「逆に考えればよ? 手が人間の器官で一番優れているって認めているようなものじゃん」

「はい?」

「そしたらその手を駆使して行う最も複雑なスポーツこそ世界で一番人気が出るべきじゃん」

「なんの話なのさ」

「例えば寿司」

「握るのな」

「ワサビをあと乗せしたらオフサイド

「無理にサッカーに寄せなくていいけどね」

「もちろん足を使ったらダメ」

「衛生的にもアウトだよね」

「アウトじゃなくてファウルな」

「そこどっちでもいい」

「基本二貫だけど攻撃的にいくなら三貫盛りとかさ」

フォワードの枚数的な話してる?」

「まさかのマグロ部位五種盛りだー」

「えらくディフェンス固めてきたなって」

「十枚食べればフリーキック

「びっくらぽんじゃん」

「期待の選手は南米チリから加入のこの人。サーモン! みたいな」

「ネタじゃん」

カンテラから昇格しましたハマチ。今日から登録名はブリで登場です みたいな」

出世魚の話だよね」

「にしてもキーパーって運動量少なすぎないか?」

「急にサッカーに戻るんだね」

「相手が弱かったらタバコ吸っててもいいわけでしょう?」

「よくはない」

電子タバコなら?」

「同じなんだよ。問題は煙の量じゃないんだよ」

「せめて折り畳み式のアウトドアチェアを持ち込んで座るくらいなら?」

「ダメなんだよ。選手は試合中に座りたくなんかならないんだよ」

「すげーなあ。あんな奇麗な芝生にターフまで張ってあるのに座らないかあ」

「ターフじゃないんだよ。ゴールネットなんだよ。それにな、欧州では一番運動のできる子がキーパーやるんだよ」

「まじかよ。ボタンエビをあえてエビフライに」

「寿司はいいんだよ。人気が高いポジションなんだよ」

「なんかサッカーって奥が深いよね。また聞かせてよ」

「もちろんだよ」

「ファミレスで」

「そこスシローにしとこうよ」