藤井システム公式戦初採用、47手の軌跡

こんにちは。
今回の棋譜観戦は、「47手の革命!藤井システム初披露」と称して藤井九段が公式戦でシステムを初採用した、藤井システム公式戦初披露の棋譜を再現します。

 

解説も交えて棋譜の概要を説明して参ります。

 

始めに、藤井システムを開発したのは藤井猛九段です。

 

藤井九段といえば、振り飛車の大家、又序盤研究、構築の大家としても有名ですね。

 

本対局は1995年の順位戦B級2組、対戦相手は井上慶太六段(現・九段)でした。

 

当時から居飛車穴熊に対し相性の悪かった四間飛車、その中で井上六段(当時)の居飛車穴熊は当時天下一品と評されていました。

 

加えてこの年の井上六段の順位戦成績は9勝1敗で昇級(しかも一期抜け)。

 

順位戦B級2組で井上六段に唯一の黒星を付けたのがシステムを初採用した藤井六段(当時)でした。

 

井上六段の当時天下一品とされた居飛車穴熊が「藤井システム」の前にわずか47手で投了に追い込まれた棋譜をご覧ください。

AbemaTV

何はともかく四間飛車へ

▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛

先手藤井六段3手目 6八飛

この対局は藤井六段の先手。
初手は▲7六歩、後手井上六段△8四歩、そして3手目▲6八飛。何はともかくまずは飛車を四間に。

後手は角道を開け、着々と穴熊構築体制に、先手は▲4六歩で攻撃の土台作り

△3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲3八銀 △4二玉 ▲4六歩

先手藤井六段9手目 4六歩

後手は角道を開け、先手に▲6六歩とさせてから、穴熊囲いを構築します。

 

穴熊に囲ってしまえば、振り飛車の美濃や銀冠と同等かそれ以上の硬さと遠さ、駒を捌かれても怖くはありません。しかし今回振り飛車は美濃も銀冠にも組んできません。

 

藤井システムは玉が一回も動かないのですから。

 

先手振り飛車側は早くも▲4六歩と突きます、この着手の意味は将来後手の△4四歩に対する▲4五歩の準備と、7九の左銀の進出の際の土台作りとの両面の狙いが込められています。

△3三角にシステムの第一波となる▲1六歩付き

△3二玉▲3六歩 △3三角 ▲1六歩

先手藤井六段13手目 1六歩

後手の△3二玉に対して▲3六歩と付き、△3三角に▲1六歩と突きます。

角と右桂が藤井システムの主役とすれば、この1、4、6筋の歩が藤井システムの準主役。藤井システムはこの筋の歩のいずれかが必ず働きます。いずれかの3歩で居飛穴が凍り付きます。

振り飛車左銀の進出、右へ右へ

△8五歩 ▲7七角 △2二玉 ▲7八銀 △5四歩 ▲6七銀

先手藤井六段19手目 6七銀

先手の振り飛車は居玉のまま、左銀を▲7八、▲6七と繰り出します。目標は3四の歩。藤井システムは居飛車が穴熊に潜る前に王様の首を取ってしまう作戦、盤面の制圧などは眼中にありません。

右桂の暗躍

△5二金右▲3七桂

先手藤井六段21手目 3七桂

後手の居飛車は△5二金右と一度中央を厚くします。そして振り飛車はさりげなく△3七桂と跳ねます。藤井システム序盤の主役、右桂発動。

 

居飛車の△1二香が攻撃開始の合図

△1二香 ▲5六銀 △5五歩 ▲4五銀

先手藤井六段25手目 4五銀

居飛車の△1二香が藤井システムの攻撃開始の合図、まずは▲5六、▲4五と銀を突進させます。

 

△8四飛に▲3五歩

△8四飛 ▲3五歩

先手藤井六段27手目 3五歩

居飛車は、3四の歩を守る為には△8四飛と上がるしかありません。対して振り飛車は▲3五歩、次の▲3四歩や▲3四銀が厳しい。後手は△同歩と取るしかありませんが・・。

 

振り飛車ここで2五へ桂跳ね!

△同 歩 ▲2五桂!

先手藤井六段27手目 2五桂

後手居飛車の△同歩に、先手振り飛車はこの局面で▲2五桂!と跳ねて角の進路を問います。
居飛車ピンチに見えますが、飛車の横利きもあり、まだまだ大丈夫そう。先手の2五の桂は歩の餌食になってしまうのでしょうか。

居飛車△2四歩で桂の捕獲へ

△4四角▲6五歩 △2四歩

後手井上六段32手目 2四歩

居飛車は角を△4四へ。先手の4五の銀の前に逃げました、銀桂との2枚換えに成功すれば十分な戦果です。振り飛車は取れる角を取らずに、四間飛車の切り札▲6五歩。飛車角の利きを一遍に通し、駒の効率を重視。対して後手居飛車△2四歩、2枚換が現実的になりそうです。

 

振り飛車▲6四歩が生きてるうちに銀桂を捌く

▲6四歩 △2五歩 ▲4四銀 △同 歩 ▲5五角

先手藤井六段37手目 5五角

振り飛車は△2四歩の桂取りに構わず▲6四歩と8四の飛車の横利きを止めます。対して後手△2五歩、急所の桂馬を外せました。先手▲4四銀(角取り)、△同歩に、▲5五角!と藤井システムの軸、角が好位置に出る事が出来ました。

 

ここまでの駒割は先手は角、後手は銀桂で後手居飛車の駒得ですが、居飛車は銀と桂を払った代償に玉の上部がすかすかです。

 

振り飛車は居玉ながら布陣は低い陣形、大駒の働きも先手振り飛車の方がかなり良さそうです。

 

居飛車取った桂を受けに使う

△3二桂 ▲3三歩 △同 玉▲4五角

先手藤井六段41手目 4五角

居飛車はこの局面で4四の地点を受けたいのですが、5二の金を使ってしまうと▲6三歩成から殺到されて崩壊してしまう為、使えません。

 

仕方なく先程取った桂で守ります。
▲3三歩に、△同玉、そして▲4五角!と振り飛車おしゃれな手が出ました。もちろん同歩と取る事はできません。1二の香取りと、6三からの突破の両面の狙い。

居飛車、飛車を見捨てざるを得ない程敗勢に

△5四歩 ▲6六角 △2二玉

後手井上六段44手目 2二玉

前局面から、居飛車は△5四歩と突きました。▲同角なら△5三銀打あたりで弾くのでしょうか。しかし振り飛車は慌てず▲6六角と引き、8四の飛車に当てます。
飛車は△9四や△7四に逃げることは出来ますが・・。後手居飛車は飛車を見捨てて△2二玉!と玉を△2二に引きました。
飛車を捨てるのは厳しいですが、1二に角を成られるのを嫌ったのと、一応未だ4五の角取りも残っています。

角を取り返すも大勢決す、居飛車投了

▲8四角 △4五歩 ▲6三歩成 △投了 まで47手で先手勝ち。

先手藤井六段47手目 6三歩成 (投了図)

前局面図以降、振り飛車は▲8四角とまずは飛車を取ります、それならばと居飛車も△4五歩と角を取り返しますが、そこで振り飛車は切り札の▲6三歩成を決行し、後手居飛車投了。

 

投了図以降、△同金は▲6四歩~▲6一飛、△同銀は単に▲6一飛が厳しくてどちらも桂香が取られてしまいますし、以前先手の大駒の働きも抜群に働いていますので、居飛車は投了もやむなしといったところでしょうか。

 

藤井システムの公式戦デビューの棋譜はいかがでしたでしょうか。ちなみに藤井九段はこの藤井システム初採用から3年後、この藤井システムを引っ提げ、谷川竜王を4-0のストレ-トで破り竜王位を獲得し、当時としては初の3連覇も達成しました。あの谷川先生を番勝負ストレートで破ってしまうとはいかに藤井システムが充実した作戦なのかが分かります。

 

ところでに本局の対戦相手、井上九段(当時六段)ですが、この年(1995年)B級2組を1期抜けした後、翌年のB級1組も連続1期抜し、瞬く間にA級八段に駆け上がってしまった凄い先生なんです。

 

更には、来季からA級に参加する菅井八段や、名人挑戦の実績を持つ稲葉八段を育て上げた名伯楽としても有名ですね。解説は快活で面白く、とてもわかりやすいので、好きな先生の一人です。

 

今回は少し(でもないか)古い棋譜でしたが、私が衝撃を受けた棋譜の一つでもあるのでいつかは紹介したいと思っていました。(数多紹介されてますけどね笑)

 

藤井システムの破壊力が少しでも伝わってくれたら幸いです。

 

また更新します。

 

 

豊島竜王・名人が、序盤から先手の俊英本田五段の鋭い攻めに早くも王が逃げ出す羽目に。しかし先手の一瞬緩んだ隙を見逃さず必殺の△9四角!を着手。
この一発で先手の攻めも流れも一気に止まり、そのまま後手竜王・名人が先手を投了まで追い詰めてしまいました。豊島竜王・名人のこれぞ名人!という棋譜を紹介しています。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。

AbemaTV

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ  このエントリーをはてなブックマークに追加 
トップへ戻る