2020年2月14日金曜日

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』-顔、むきだし-

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2020)

ライアン・ジョンソン監督の『ナイブズ・アウト』見てまいりました。

ライアン・ジョンソンは、最近ではスターウォーズのエピソード8を撮ってのけた70年代生まれの監督です(思いのほか若め)。
エピソード8・最後のジェダイには様々な賛否、、、やや否が多め、、、といった評判でしたが、私はわりと好きでした。主演の2人が空間を超えて対峙する場面とか、空飛ぶキャリー・フィッシャー(レイア姫)とか。

その巨大な映画シリーズの仕事を終えた監督が次に撮ったのが本作で、今回も脚本を兼ねています。
イギリス的な冷えびえとしたトーンで、お屋敷を舞台に富豪親父の死探偵、疑惑の近親者たちの大集合という定番の設定を、ユーモラスに描いていました。あまりピリピリしません。

今はこうした雰囲気の要は名探偵ポアロっぽいものをやりたかったんだねと、労いの気持ちで見ていましたが、手堅い作りと少しヘンな要素も盛り込みつつの楽しめる一本に仕上がっていました。実際、かなりのヒットを飛ばしたようで早くも続編が企画されているそう。さすが。

ナイブズアウトとはナイフがアウトした状態、こう刃がむき出しになっている状態のことでしょうか。
前半、警察が家族たち一人一人に居間で事情聴取を行う場面で、背景にナイフのオブジェが飾ってありました。
何本ものむき出しの刃が中央に向かって、直径3メートルほどのドーナツ状になり、ギラギラと輝いている様子は印象的です。
ここで、あ、ナイブズがアウトしてる、と思って見るのが正解だろうと思います。

ギラギラしたナイフに上乗せして、この映画では登場人物たちの顔面が強調されます。
個性豊か・・・と言う以前に顔面のパフォーマンスが優れた俳優が多数出演しており、たとえばジェイミー・リー・カーチティスとトニ・コレットの顔が同一画面上にある騒がしさは、それだけで嬉しいものがありました。

登場人物の全員が容疑者なので、皆を並列に描かねばならず、一度見ただけですぐに人物配置を理解できるよう顔パワーが必要だったのかもしれません。

007のダニエル・クレイグが少し間抜けな様子を見せたり、キャプテンアメリカのクリス・エヴァンスがジェームズ・ディーン的な放蕩息子ぶりを見せたり、俳優の持つ従来のイメージを少し動かして、それでいて説得力のあるものにしていました。

そいやダニエル・クレイグってとぼけた感じあるよなとか、クリス・エヴァンスはアウトローな風味があるよなとか、いつの間にかそう見えていました。
ただ、ドン・ジョンソン軽薄な婿を演じてて、そこだけそのまんまでとても良かった。

普段、人は鞘におさめている刃をどんなときにむき出しにするのか、あるいは俳優にとってむき出しの部分が露呈する役柄とはどんなものなのか、そんなことを思いながら鑑賞しました。

探偵ものなので、内容にはまったく触れずに書いて参りましたが、ともかくも、小気味よい語り口で気楽に鑑賞させる映画。こういったものは毎月見たいくらいです。

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