日本国有鉄道 労働運動史(別館)

国鉄で行われた生産性運動、通称マル生運動に関する関連資料をアップしていくブログです

生産性運動導入から、中止まで 第一三話 盛上がる生産性運動

生産性運動は確実に国鉄の職場で定着しつつあったが

国鉄当局の生産性運動は、順調に進み、生産性運動を受けた職員が職場に帰り、自ら実践し、そして周りの人を巻き込んでいくようになったとしています。

その辺は、昭和45年度の国鉄監査報告書に下記のとおり書かれています。

特に日本生産性本部が推進している生産性運動に関する教育が全社的に行なわれたこともあって、 職員の間に国鉄の現状についての理解が深まり、再建意欲は急速に向上しつつある。 これらの諸施策の実施にあたっては、 今後さらにその趣旨の徹底をはかり着実に推進する必要がある。

昭和45年度監査報告書 から引用

として、生産性運動が国鉄としても一定の成果を上げつつあったことがうかがえます。

こうして軌道に乗ってきた生産性運動教育は一定の成果を見せ始め、「国鉄を売った官僚たち」のP178には、生産性運動の様子について下記のように書かれていますので、少し引用してみたいと思います。

また、深草勝己・監査委員は生産性運動についてこう述べている。

「学園で教育を受けた人が、また職場へ行っていろいろと働きかけておるというようなことで、私はこれは一種の国鉄の”精神革命”だと思う。機関車乗務員、操車場の人と二手に分かれて、学園で教育を受けていたが、朝の4時頃まで討論していた。この運動は非常に人間性に根ざしているということで、単に職場管理という立場ではなくて、一般常識人というか、そういう意味から私は受けたのだと思う。」

 と書いているように、生産性運動の研修に参加した、若手の職員は非常に熱心に生産性運動に真摯に取り組んでいたと言えます。

しかし、このように職場の中でその存在感を増していくと、当初は傍観していた国労動労も対策を考えていくのですが。

中々決定打と言えるものはありませんでした。

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国労動労の反転攻勢

動労は、マル生運動に対して

  1. 労働運動に支配介入するがごとき教育をやっている
  2. 使用者に都合の良い労働者づくりの洗脳教育でであり、労働者の団結権に支配介入するものである
  3. 教育は技術教育に限定すべきである

といった主張を行い、国労も、拠点職場を狙い撃ちした、思想・教育攻撃であると、抗議交渉を行うのですが、生産性教育を洗脳であるとか、技術教育以外は当局は行ってはいけないというのは、かなり無理がある話と言えるわけです。

国労は、当局のマル生教育に対する対抗手段として下記のような方針を打ち出しました。

再び「国鉄を売った官僚たち」P183から引用したいと思います。

9月13日付の国労機関誌「国鉄新聞」は、

「本質的に生産性運動とその本部の社会、世界観が特定の思想を背景としたものであることは、誰しも否定できない。これは国労動労への組織攻撃に他ならない。このような教育は"再建"に名を借りた労働組合への背信行為である、その一方で、再建を目的とした『合理化』に協力して欲しいと言われても、絶対に協力できない」として、ただちに中央段階の「合理化」交渉をストップしたと報じている

しかし、国労動労が、いくら組織に対する攻撃であるとか、思想攻撃であるとしても、裏を返せば、国労動労も、階級闘争を前面に打ち出し、当局は資本家階級であり、プロレタリアートにすれば打破すべき階級であるという教育をしているわけですから、自己矛盾と言われても仕方が無いわけで。

組合とすれば、階級闘争という根本が崩れるとして、そこは譲れないという背景があったと言えましょう。

しかし、本来の生産性運動が、成果の再配分を謳っているように、労働生産性を高めることでその利潤は労働者に配分させることを求めていくのが本来の筋だと思いますし、民間労組は80年代にはそうした方向に大きく舵を切り、特に私鉄総連などは国鉄ストライキをすることで、私鉄が儲かる、儲かった分を手当として配分することを要求する代わりにストライキを行わないとして、実質的な賃金獲得に成功しているわけですから、国鉄当局も、そして国労動労も本来気づくべき時点で気づかなかった、もしくは敢えて気づかないふりをしたのか・・・その辺は今後更に自ら研究する必要もあろうかと思いますが。多少なりとも疑問は残るところではあります。

こうして着々と進められる生産性教育に対して、なすすべもないというのがでした。

続く

 

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