音楽小説?ミステリー?スポ根?【さよならドビュッシー】中山七里

小説
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2020年、32冊目の読書感想です。


さよならドビュッシー (宝島社文庫) [ 中山七里 ]

ピアニストからも絶賛!ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生するー。第8回『このミス』大賞受賞作品。

内容紹介(「Book」データベースより)

中山七里(なかやましちり)さん、初読みの作家さんです。

少し前に、ブクログ通信で特集されていて。

面白そうだな~と思っていたので、図書館(コロナ騒動でずっと閉まってました・・・)が再開したタイミングで借りて読んでみました。

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ピアノのスポ根ストーリー

内容紹介にもあるように、ピアニストを目指す女子高生が主人公の音楽ミステリ―です。

両親、祖父、そして両親を亡くした従姉妹と暮らす遥は、火事で祖父と従姉妹を失い、自身も大火傷を負う。皮膚の移植で指を動かすことも困難になってしまった中、必死のリハビリでピアニストになるという夢に挑むが、不可解な事件が次々と起きて・・・。

ってなストーリーです。
あれ、内容紹介のまんまですね。

冒頭の火事のシーンこそ強烈なんですが、その後はミステリーというよりも、困難を乗り越えてピアノに挑むスポ根ストーリーという感じ(スポーツじゃないけどノリはそれ系)。
起こる事件もそこまでインパクトのある感じでもありません。

なので、「フーン」という感じで淡々と読んでいると・・・。

終盤、とある人物の一言で、それまで読んできたストーリーがぜーんぶひっくり返るんですね~。

あれ?オセロの白だと思ってたものが黒だった?

と一瞬ポカーンとなってしまいました。
このどんでん返しが本書の醍醐味ですね。

ひとつ前に読んだ「十角館の殺人」と同じように。

いわゆる叙述トリックものと言えましょうか。

なので、面白かった・・・。

そう、面白かったと言えば、面白かった・・・。

ミステリーとしては・・・。

音楽的描写が鼻につくの

でも、何と言いますか、ミステリ―としての面白さ以前に、音楽に関する描写が冗長で鼻につく感じがあり、私はあんまり入り込めませんでした。

たとえばね、タイトルにもあるドビュッシーの曲を主人公が聴いたときの描写。

砂漠に静寂が訪れ、冷ややかな風が吹く中を旅人が歩いている。闇の中に蠢く獣も息を潜めて月を見上げている。音はまるでさらさらと流れる絹のようだ。その絹が幾重にも幾重にも重なって優美な色を作っていくように、音もまた絡み合いながら複雑な音色を醸し出していく。三連符を多用した流れるようなアルペジオ。次から次へと音が重なる様に魂が身体から遊離していく。

えっ・・・。

砂漠に旅人・・・?闇に蠢く獣・・・?
なんでなんで?

ピアノコンクールでライバルの演奏を聴いたときの描写。

曲は左手から始まり、低い音域から音階的に進行し変ロ長調に変わる。冒頭の荒々しい和音は何度も形を変えて現れ、その度に興奮の度合いが増していく。怒りは沈静することを知らず激昂し続ける。旋律を背景に戦火に斃れていく民衆と崩落していく建物が見える。銃声、破壊音、そして阿鼻叫喚―観客は皆、固唾を呑んでいる。

ほ、ほぅ・・・。民衆が見えるのか・・・。

・・・。

ど、どうでしょう??

これ、クライマックスのワンシーンだけとかじゃないですよ。何度も何度も音楽を聴いてはこういう描写が繰り返されるの。

この音楽描写の本格的なところも多分本書が評価されてる要素のひとつだとは思うんですが、私は目が滑って目が滑って・・・。
ほとんど流し読みになってしまいました。

ま、私に音楽的素養がないからってのもあるかもしれませんけど・・・。
子供の頃にいやいやピアノを習わされていたクチです。

クラシックに嗜みのある方は音楽聞くとこうやって情景が浮かぶものなのかもしれないですが、それ以前に「ミステリー」として読んだときに、これらの音楽的描写の必要性が良く分からなかったんですよね。
そしてピアノにまつわるスポ根的シーン(同級生からのイビリやライバルからの罵倒)の必然性なんかもあまり感じられなくて、なんだか音楽・スポ根・ミステリーと盛り込みすぎてどれも中途半端な1冊だったな・・・。

というのが正直な感想でした。
いろんなシーンが最後のどんでん返しにつながる伏線になっているとか、バラバラに思えたエピソードが一気につながるとかいう感じでもないしね。

叙述トリックものって、真相が判明した後に読み返して「あーこのシーンはこういうことだったのか~!!」なんて振り返るのも楽しいのですが、音楽描写が多すぎてそういう気持ちにもなれず。

と、なかなかに「面白かった~!!」と手放しで絶賛できる読後感ではなかったのですが、「このミステリーがすごい!」大賞受賞時には審査員に絶賛されていたそうですねぇ。
一方でamazonのレビューでは、すっごく高評価と「うーん?」という評価(私が抱いた感想に近いもの)に分かれている・・・。
好みの分かれる作品なんでしょうね。

でも第二段、第三段やスピンアウトなどシリーズ化されているので、「好き」派の方が多数派ってことですかね。

でも、このブックデザインはかわいくてとっても好み♪買って並べて置きたい~。

作風は幅広い?

ということで、今回はちょっと辛口評価となりましたが、中山七里さんはいろんなテイストの作品がありそうなので。

他の作品も読んでみたいな~とは思います。
1冊じゃ分からないよね。

以上、【さよならドビュッシー】読書感想でした!

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