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テーマ:小説(1360)
カテゴリ:石の民
ファンタジー・SF小説ランキング IT石の民「君は星星の船」■(1989年作品)石の民は、この機会神の統治する世界をいかにかえるのか? また石の民は何者なのか? この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1873gf/7/ 石の民「君は星星の船」第7回 ■宗教の街ジュリ。その石の壁に刻まれた「石の男」の心が、ジュリに住む祭司のアルク。その娘ミニヨンの心の底に入り、操ろうとしていた。 石の民「君は星星の船」第7回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 『私は石の男だ』 驚きがミニヨンの心に走った。 「えっ、石の男ですって、信じられない」 『事実、君に話し掛けているだろう。君はなんという名前なのだ』 「私はミニヨンよ」ミニヨンは思わず自分の名前を答えていた。なぜなんだろう。この気 持ちは。 『そうか、ミニヨンよ、私の心底にこい』 心底ですって、ばかなことはいわないで、何故、あなたの心底に。大体、石の男に心底な んてあるのかしら。 ここ樹里の人々は訓練すれば、他人の心底にいく事ができる。もぐりこんだ本人の心は 「分心」となり、その場所、「心底」にいる。その場所で、分心は本人と同じようにものを 見、言葉を発するのだ。しかし、その分心が、他人の心底にいっている間、分心の本体は 何も見えず。考えずその場所にいる。この体は幽体と呼ばれる。 『君はアルナににているな』 「アルナって」 『私の古い知り合いだ。君が私の心底にくるのがいやなら、私からいこう』 「何ですって」 宗教の中心地樹里には、この「石の壁」「石の男」を管理する祭司委員会が存在する。祭 司は代々世襲され、祭司職はこの樹里の里ではハイクラスを意味する。 樹里の町中からも、巡礼たちの騒ぎを聞き付けて、多くの人々が走り出てきて、石の男 を見あげていた。 「たいへんなことになったなあ、アルク」 知り合いの、ガントが汗をふきふき話しかけてきた。ガントはあせっかきだ、 たぶん、店のほうから、騒ぎを聞き付けて駆けてきたのだろう。 ガントの姿をみれば、心配性のようにはみえない。 この里の者には珍しくまるまる太っている。 アルクと同じくらいの身長だ が、体重は2倍はあるだろう。ほおひげとあごひげが、チュニックとよくマッチしていた。 「しかし、ガント。この事件で、樹里にくる人々が増えるとすれば、お前の店の収入があ がるではないか」 アルクはいやみをいった。ガントは妻のモリに巡礼向けのスーベニアショップをやらせ ている。 この店の売上が、たいした金額になると、アルクはきいていた。ガントのチュニックは 特別じたてといううわさだ。その生地は遠くの商工業都市ヌーンからとりよせているとも いわれていた。 「我々では手がでない。マニさまに報告しょう」アルクが言った。 「そうだ。マニさまがどうするか決めてくださるだろう」ガントが言う。 「さあ帰るぞ。ミニヨン」 が、ミニヨンは答えない。ミニヨンの様子がおかしい。彼女の目は「石の男」に向けら れている。瞬きひとつしない。 「ミニヨン、どうした」ガントものぞきこむ。 さっきから、ミニヨンの心に言葉がみちあふれていた。 ミニヨンの分心は石の男の心底に呼び寄せられていた。こんな体験はミニ ヨンにとって初めてだった。どうしていいのかわからない。 『助けて、おとうさん』ミニヨンは心の中でさけんでいた。石の男の分心がミニヨンの心 底に侵入していた。 『さてミニヨン。私の話しを聞け。私はずーっと昔から、涙をながしていたのだ。私は世 界を憂えている。私の話をきけば、君も涙を流すはずだ。なにしろ、君はアルナに似てい るのだからな』 アルクはミニヨンが、涙を流しはじめているのにきずく。 「ミニヨン、どうしたんだ」アルクの声はミニヨンの心まではとどかない。 ミニヨンの目は石の男に釘ずけになっている。アルクはまさかとおもう。まさか、石の男がめざめたのか、そんなことはありえない。が、涙が流れているとすれば、石の男の感情が蘇ったのか もしれない。 「いかん、もしかしたら、石の男がミニヨンをとらえたのかもしれない」アルクは叫んで いた。 「そ、そんなバカな」ガントが汗をふきだしていた。 アルクの分心は、ミニヨンの心の中に沈みこむ。ミニヨンの心理バリアーが働いていな い。人の分心が入り込む時のあの痛みに似た感覚がないのだ。アルクの分心はずぼっとミ ニヨンの心に入っていった。心の中はどんよりしていた。 アルクは、ミニヨンが子供のころ、心理バリアーの教育、練習のため、ミニヨンの心に はいったことがあるのだが、空色だった。その空色がこんな色に。いったいなにが。ミニ ヨンの中に、だれかの分心がいた。 「なんということだ。私の娘だぞ」アルクは、叫んだ。 石の民第7回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.07.06 20:16:33
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