森田竹華の書と空海

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森田竹華は、20世紀はじめの女流かな書家である。あまり知られていない書家ではあるが、近代の書家の中では、三本の指に入るかな書家であると断言できる。

その書の特徴は、女流書家らしくない、力強いものであるが、ただ単に強いだけでなく、その深さは底知れないものである。

王羲之書法、即ち手島右卿の言う古法というものがある。この王羲之書法を最も忠実に取得した書家が空海である。その空海を徹底的に研究した手島氏が認めた書家、それが森田竹華である。

森田氏は「左手線」というものを駆使している。手島氏はこの左手線を、陰陽思想に絡め、右手線では出にくい線であると説明している。それはそうかもしれないが、なんとも観念的でわかりにくい。結局はゆっくりと書くことで、筆の行き先を自然に任せる用筆であると私は解釈している。これは空海が、自然の書を追求するということに一貫していたということで説明できる。側筆で書くということも、自然を追求した結果である。空海は大宇宙(大日如来)を自己(小宇宙)と一体化させる、梵我一如的行動の一つに、書を取り入れていた。森田氏が知らず知らずの内に、これらを実践していた。驚くべきことである。枯れた線、筆の遅さ、また終筆が異常なほど丁寧であるということは、空海に通じ、また空海を通して、王羲之が見えてくる。

そのルーツを探ると、高野切第一種が見えてくる。第一種が空海書法に近いということは、臨書していて感じるのだが、森田氏は第一種を相当学んだに違いない。暗さの中の暖かさ、この独特な美が、森田氏の作品にある。

これらの点から、森田氏は、他のかな書家とは、そもそも同じ土俵で評価されるべきではない。太刀打ちできるのは、小山やす子氏くらいだろうか。

是非この素晴らしい書家、森田竹華を、頭の片隅にでも置いておいていただきたい。



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