企業分析アナトールの株式投資

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【3901】マークラインズ~有価証券報告書の読み方~

結論

投資家への還元意識の高いストイックな印象。個人的にはもう少し社員というステークホルダーに資源を配分をしても良いのではないかと感じた。

 

目次

 

事業概要

まずはマークラインズの事業についてです。

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マークラインズの事業は自動車産業に特化したオンライン情報サービスの提供です。

具体的な事業としては以下の5セグメントに分けられます。

(1)情報プラットフォーム事業

(2)コンサルティング事業

(3)人材紹介事業

(4)LMC Automotive Ltd. 製品(市場予測情報)販売事業

(5)その他

結構細かく説明しているため、長めの印象です。ただ、決して読み難くないです。いくつも事業が枝分かれしているように見えますが、事業領域を自動車産業の情報提供に限定していて、情報提供する方法を細かく分類しているだけなのかな、と。

これは良い傾向かと思います。自社の事業領域に留まりつつ、提供の方法を色々考えるのがビジネスの展開としては最も手堅い手法です。

事業領域がきちんと定義され、その中にとどまっており、内容が整理されているのは、会社の質としては悪くないと思います。

後は業界の先行き次第かな、と。自動車産業ヘンリー・フォードが爆発的市場開拓をして以降、工業系最大規模の産業の一つではありますが、現在EV(電気自動車)への構造改革や、自動運転車の開発、モノからモビリティへのビジネスモデルの転換など、自動車業界は多くの変化に直面しています。業界の中では当然淘汰される事業も出てくるでしょうし、逆に一気に成長するビジネスもあると思います。変化に対してマークラインズという会社がどういった方針でアプローチするのかが鍵になってくるかと思います。

 

セグメントの状況

マークラインズはセグメントを先ほどの5つに分けています。

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情報プラットフォーム事業:17.5億円(73.4%、利益率54.9%)

コンサルティング事業:2.0億円(8.6%、利益率27.8%)

人材紹介事業:1.2億円(5.0%、利益率30.7%)

LMC Automotive Ltd. 製品(市場予測情報)販売事業1.3億円(5.4%、利益率24.0%)

その他事業:1.8億円(7.6%、利益率30.1%)

いずれのビジネスも利益率が高いです。

特に中核となる情報プラットフォーム事業は54.9%と高く、全社費用である2.6億円を差し引いても39.8%と、非常に付加価値率の高いビジネスになっています。

 

あと、地味な点ではあるんですけど、 セグメント情報でこういう記載があるあたり、きちんと取締役会が資源配分の意思決定という重要な仕事をしているんだろう、というのが伺えます。

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同社のようにきちんと自社の事業領域を確立している場合、自動車業界情報提供サービスの単一セグメントと説明する事もできなくはない気がします。それをきちんとサービスごとに分けて説明しているのは、管理ができている証ではないかと。

こういう記載があると統制という意味で安心できます。

 

 

 

業績推移

経常利益率の推移は34.4%⇒35.6%⇒37.9%⇒36.3%⇒37.2% 

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かなり立派な利益率です。

売上成長しても利益率が悪化するどころか、良化しているのは会社としてのコスト管理の能力とも取れますが、IT企業系ならではの追加投資不要で売上が増えていく、性質上の強みもあるのではないかと。

 

 

 

経営方針

マークラインズは利益成長率20%、ROE30%、配当性向40%を経営指標に置いています。これは凄い・・・。

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いずれも本質的に的を射た指標、それも株主への還元にコミットした指標だと思います。数値目標を具体化している所も良いですが、何故その指標を採用しているのかを明確にしている点も素晴らしいと思います。

ここまでの記載ができる会社はあまりありません。株主はステークホルダーの中でもっとも後回しにされる事が多いので、こういう会社の存在は非常にありがたいです。

投資家からすれば、理想的とも言って良い指標設定だと思います。経営者の質の高さが伺えます。

 

 

 

キャッシュフロー

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営業活動によるキャッシュフローは売上の伸びと共に順調に伸びています。

しかし、投資活動によるキャッシュフローは大分荒れてますので内容を見てみます。

2018年度-2019年度

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2016年度-2017年度

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2014年度-2015年度

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気になるのはまず「有価証券」の売却と「投資有価証券」の取得です。

投資有価証券の買い替えはまああるにしても、一般的でないのは「有価証券」を売却して「投資有価証券」を取得している点です。

有価証券と投資有価証券は何となく似ている感じですが明確に分けられてます。

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参照:投資有価証券は保有目的で仕訳が変わる?

「有価証券」と呼ばれるのは売買目的有価証券か、満期保有目的債券のうち満期が1年以内に到来するもののみです。

「投資有価証券」は満期保有目的債券のうち満期が1年以上のもの、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券(短期売買とかではなく、業務提携や持ち合い、長期運用目的で保有する場合)です。

短期ディールをするような金融部門でも抱えてない限り、普通の企業企業で「有価証券」はあまり見かけません。短期の有価証券を売り、長期の投資有価証券に買い替えるという処理も珍しいな~と思い、B/Sの流動資産をチラッと見てみます。

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(。´・ω・)ん?無い?なんで?

注記の金融資産の内訳を見てみます。

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やはり投資有価証券しかない・・・?

あと考えられるとすれば、期末時点では満期1年以上先なのでその他有価証券になっているけど、期中に満期1年以内に入ったタイミングで満期保有目的債券だけ狙って売却しているのでは!?(誰得の処理?)

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ん~株式しか無くて債券はもってない。。

有価証券を売却した以上は何かしらP/Lにもハネる筈なので見てみると。

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投資有価証券売却益・・・やっぱり投資有価証券の売却なのでは・・・?

そして経営者による分析。

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やっぱり投資有価証券ですよね。。

なんでC/F上は「有価証券の売却」になってるんですかね。。

無駄に迷走しました。。

何か理由があるのかもしれませんから、とりあえずこの記載については保留、スルーにしときます。誰か理由を知っている人か、IRに問い合わせる勇気のある人が見てコメントくれたら追記する事にします。

 

投資有価証券の買い替えだったとしても随分頻繁に買い替えているな、という印象です。これだけ頻繁に買い替えていると少し運用方針が気になります。

運用方針を確認しますが・・・イマイチはっきり分かりません。

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この記述だけではいち事業会社が何のために毎期のように投資有価証券を売買しているのか分かりません。本当に運用するだけのリターンを得られるものなのか疑問ですし、仮にリターンが得られていたとしても、それは企業としての本質的な利益ではないので、それに味をしめてそっちに傾倒されるのも望ましくないです。

アベノミクス以降、ほとんどの銘柄の株価は右肩上がりですから、ほとんどの人が「買えば儲かる」状況でした。なので、それぞれの言い分はあるにせよ、ここ10年のリターンを元に運用方法の是非は決められないと思います。

ここ10年の相場環境ならば、猿が目隠しして選ぶという投資方法であっても100人いれば1人や2人は凄いリターンを叩き出す人が出るでしょうが、リターンが高いからという理由でその投資方法を肯定すべきか、と聞かれれば、肯定すべきではないと思います。

まして本業のある事業会社ならば猶更です。かつてのリーマンショックの時のように、「買えば損をする」相場でもそれなりの成果を挙げられる投資法(例えば満期保有目的債券を満期まで保有するとか)でなければ、事業会社の余剰資金の安定運用方法としては不適切だと思います。

おそらく次の暴落時に、浮彫になるのではないかと。その時にマークラインズの投資方針は果たして生き残っているのかはちょっと見えないです。これはちょっと不安要素かな、と思います。

 

あと投資キャッシュフローで目立つのが、2019年の敷金の差入です。

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事務所を移転しているそうです。

主要な設備を見てみます。

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確かに本社事務所並びに名古屋支社事務所を賃借しているとのことなので、このいずれかの事務所を借りる際に敷金として拠出したのかな、と。

これについては、売上も従業員数も伸びている会社なので、それほど違和感はないかと思います。

 

 

 

B/S(貸借対照表

資産の確認です。

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現金及び預金28.8億円(82.7%)はかなり多いです。

極めてローリスクな資産リストです。確かに運用したくなる気持ちは分かる。

実際運用しているであろう額の投資有価証券は2.3億円(6.6%)でしかありません。

多少ハイリスクな運用をしても、レバレッジさえかけなければ大勢に影響は無さそうです。

ただ、先に色々書きましたが、投資運用方針は金額の問題ではありません。経営者の堅実さが試される部分です。経営者が堅実さを欠く場合、今後、投資の成果次第では投資額が拡大される可能性も考えられるため、注意が必要です。

そして、毎年のように買い替えを行っているあたり、投資方法に経営者の堅実さに一抹の不安が残ります。

 

負債、純資産を見てみます。

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有利子負債はゼロ、無借金です。

前受金が結構ありますが、おそらく事業の性質上先に受け取ることのできる負債があるものと思われます。これは負債といっても性質としてはプール金になるので、資金繰り上有利になる負債です。資産リストでキャッシュの割合が高かったのはプール金という意味もあったものと思われます。

株主資本は25.6億円(73.6%)と盤石です。負債の方もほとんどリスクなさそうなので、B/Sはかなり健全であると言っていいと思います。

しかしやはり気になるのはその他有価証券評価差額金。

これはその他有価証券の含み損益が純資産から間接控除される形で載せているものなんですが、2.8億ほどの投資に対して0.5億円もの含み損が発生している事になります。

今の相場環境でこれって運用方針としてどうなんだろう・・・とやはり思ってしまいます。

 

 

 

従業員の状況、役員報酬

性質からしてなかなか良い印象なので、従業員の報酬なども良いのでは、と思ったのですが、見てみると・・・

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平均年齢45.6歳が結構高いな、というのと、平均勤続年数が3.2年というのはやたら短いです。そして平均年間給与も5.8百万円というのは年齢を考慮すると決して高くありません。

短絡的に考えるなら、これは経営者が従業員の給与を絞っているために離職率が高いのかな、と。正直キャッシュの潤沢さや経営方針とかから伺える質の高さからするともっと給与は高くても良いのかな、という気がします。

基本的に企業は「人」次第という面が強いので、社員の給与が少なかったり離職率が高い会社はどれだけ業績が良くても不安です。

また、もしこれで役員報酬だけ高かったりすると、役員の倫理観が心配になります。

見てみると・・・

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取締役の報酬、人数で割ったら800万円いかないのですが。。これは低いです。。

社員から搾取するタイプの経営者かと思いきや、「欲しがりません勝つまでは」的なストイックな方なんでしょうか。。

経営方針としては投資家にとって理想的な方針を掲げており、投資家ファーストな姿勢は好感が持てますが、これだと投資家重視に偏り過ぎている気がします。。

立派な業績ではありますし方針も良いのですが、企業にとっては「社員」もまたステークホルダーの一つである事は忘れてはならないと思います。

いずれのステークホルダーを軽視しても企業は長期的な繁栄は望めません。どこかで必ず躓くか、行き詰ると思います。

全てのステークホルダーに対してバランスよく資源を配分するのが優れた経営者と言えますが、ちょっとこの部分は不安です。

 

ちなみに、ソロモン・ブラザーズ救済の時に会長に就任したウォーレンバフェットが自身の報酬を1ドルにしたり、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが自分の報酬をかなり低く抑えていたように、偉人で自身の報酬をストイックに抑えている人は多いです。

ただ、それは社員に求めるべきではなく、待遇があまり良くない、勤続年数が短い、というのは現場が荒れている証ではないかと。企業は人、という観点からすれば、改善すべき課題があるのではないかな、と思います。

 

 

 

まとめ

事業の内容や経営方針からするとかなり良いな、という印象なのですが、細かい部分を見ているとチラホラと不安な部分があります。

運用方針については、結構な現金を確保した上での10分の1程度の資金運用ですから、その方針云々についてゴチャゴチャ言うのは、自分でも重箱の隅をつついている感があります。

ただ、従業員の勤続年数と年齢の割にあまり高くない年収などを見ていると、大丈夫なのかな、という。みんな待遇が不満で、ドンドン辞めていった結果、あまり引き継ぎがされてなくて有価証券と投資有価証券をごっちゃにしているのではないか・・・などと勝手な邪推をしてしまいます。

経営方針や業績には目を見張る部分が多々あるので、全てのステークホルダーに資源配分を最適化し、マークラインズには偉大な企業への道を進んでもらいたいな、と切に願います。

 

本記事は有価証券報告書を元にした筆者の私的見解であり、特定の意思決定を推奨するものではありません。また、内容に対して適切と思われる指摘があれば、迅速に加筆修正致します。

 

 

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