教皇庁†禁書目録「ジャンヌ・ダルク伝」

2020/06/05

小説「教皇庁・禁書目録ジャンヌ・ダルク伝」 百年戦争と15世紀フランス

t f B! P L


15世紀前半、英仏・百年戦争で劣勢のフランスを勝利へ導いたとされる、乙女(ラ・ピュセル)ジャンヌ・ダルク。

ジャンヌを題材にした話は数え切れないほどある。

中でも、ノーベル文学賞作家アナトール・フランスの伝記「Vie de Jeanne d'Arc」はもっとも誠実に書かれていると高く評価された一方で、カトリックの聖職者から批判を受け、ローマ教皇庁の「禁書目録」に登録された。





ノーベル文学賞作家の伝記小説と、禁書目録になったジャンヌ・ダルク伝


 1921年にノーベル文学賞を受賞した作家アナトール・フランスは、1908年に伝記「ジャンヌ・ダルクの生涯(Vie de Jeanne d'Arc)」を発表した。

 15世紀当時から現在にかけて、ジャンヌ・ダルクを題材にしたエピソードは数え切れないほどある。研究者とクリエイターのインスピレーションを刺激し続けている。

 中でも、アナトール・フランスの著書は「もっとも誠実に書かれている」と高く評価された。

 その一方で、刊行翌年にフランスで80人もの司教と大司教が批判キャンペーンを展開し、1922年になるとローマ教皇庁から「禁書目録」に登録された。

 異端狩りが激しかった時代と違い、焚書・処刑される事態にはならなかったが、カトリックの最高権威から「不道徳な有害図書」と名指しされれば、流通に制限がかかるのは想像に難くない。
 信仰が生活に根付いている社会で、ごく普通のまじめな一般人はこういった本を手に取ろうとは思わないだろう。

 いまや、世界中の誰もが知っているジャンヌ・ダルクの物語。

 現代にほど近い20世紀初頭という近代末期に、なぜ、禁書になったのか。
 カトリックの聖職者たちは何を恐れたのだろうか。

 このページでは、アナトール・フランス著「Vie de Jeanne d'Arc」を現代日本語で完訳することを目指している。自動翻訳をベースにして細部を調整しただけの、つたない訳文だがご承知おき願いたい。

 参考資料(底本)として、ウィニフレッド・ステファン(Winifred Stephens)による英訳版「THE LIFE OF JOAN OF ARC(1909)」と、吉江孤雁による邦訳版「ジャンヌ・ダルクの生涯(大正6年)」を参照している(敬称略)。

 原著の著者、英語版の翻訳者、日本語版の翻訳者。
 いずれも、著作権保護期間である「死去から70年」以上経過していることを付記する。

 なお、1966年6月14日、ローマ教皇庁教理省宣言において禁書目録の制度は廃止になった。
 とはいえ、カトリック教義を脅かす恐れがある禁書(だった本)を推奨することはできないという立場を表明している。

 2020年5月、C・クラルテ。




序文・英語版の発行に寄せて(PREFACE -TO THE ENGLISH EDITION-)


(※1908年にフランスで初版発行。翌年にイギリスで英語版を発行するときに、作者アナトール・フランスが寄せた序文です

 この本を読んでくれた多くの学生たちは、とても親切にこの本を扱ってくれた。
 彼らの優しさに感動した。特にMMには感謝している。ガブリエル・モノド、ソロモン・ライナッハ、ジェルマン・ルフェーヴル=ポンタリスには格別に感謝している。

 イギリスの批評家たちは、私への感謝の意を特別に主張している。
 ジャンヌ・ダルクの記憶に、彼らはほとんど懺悔と崇拝に近い敬虔な熱意を捧げている。アンドリュー・ラング氏の賞賛すべき配慮のおかげで、私はいくつかの箇所を修正し、いくつかの箇所を追加した。

 |聖人伝《ハギョグラフ》の著者・研究者だけが公然と敵対している。
 彼らは、私の説明の仕方ではなく、事実をまったく説明していないと言って非難している。私の説明が明確で、自然で、合理的で、もっとも信用できる情報源から導き出されたものであればあるほど、彼らは不愉快になるようだ。

 彼らにとって、ジャンヌ・ダルクは神秘的な歴史でなければならず、完璧な超自然現象のままであることを望むのだろう。

 私は「乙女」を生き返らせて人間性を取り戻した——それが私の罪なのだ。

 熱心な異端審問官たちはこの本を非難しようとしたが、重大な誤りや露骨な不正確さを見つけられなかった。厳格な異端審問官たちは、いくつかの誤字脱字と、いくつかの印刷ミスを指摘するだけで満足せざるを得なかったのだ。

「私の高慢な弱い心を、満足させてくれるお世辞があるかな?」

 1909年1月、パリにて。



「私の高慢な弱い心を、満足させてくれるお世辞があるかな?」
こんなにかっこいい「俺を褒めろ」があるだろうか!



翻訳した小説本編は、下記リンク先で公開しています。

2020年6月、アルファポリスの歴史・時代小説大賞に「7番目のシャルル」とともにエントリーしています。ご一読と投票、ありがとうございます。







関連Web小説(外部サイト)『7番目のシャルル ~狂った王国にうまれて~』掲載先リンク集
[あらすじ]
15世紀フランス、英仏・百年戦争。火刑の乙女は聖人となり、目立たない王は歴史の闇に葬られた。
一般的には「恩人を見捨てた非情な王」と嫌われ、歴史家は「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と秩序をもたらした名君」と評価しているが、500年後にめざめた王は数奇な人生について語り始めた。
「あの子は聖女ではないよ。私はジャンヌを聖女とは認めない。絶対に」
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。

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